最近の研究生活から―子どもの参加はどこまで進むのか― | Beyond―愚直に、ひたむきに生きるー

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独立研究者として子ども・若者参画について論文を執筆しています。ちなみに発達障がい当事者でもありますo(≧∀≦)o。よろしくお願いします。

 先日、日本教育学会主催の「講演会&トークセッション『小玉会長に聞く! 教育学における若手研究者の現在と未来』」にオンラインで参加しました。この中では、日本教育学会会長の小玉重夫さんの基調講演があり、学会を取り巻く環境や学会誌の改革についてお話がありました。私は、小玉さんの著書や論文は読んだことがあるのですが、こうしてお話を伺うのは、初めてだったので、それだけでも満足でした。印象に残ったのは、学会への高校生参加を推進すべきとのお話です。小玉さん曰く、理系の学会においては、既に学会への高校生参加は、若手育成の観点からなされているらしく、教育学会でもこうした取り組みを進めてはどうかとのことでした。個人的には、単に高校生参加は、教育学研究における若手育成の観点からではなく、高校生の実体験としての生の学校生活を通じて感じたこと、考えたことが学会運営や教育学研究にインパクトをもたらす点も含め、検討されるべきなのかなとも感じました。とはいえ、学会への高校生参加は、その可否も含め、学会内では意見が分かれているようです。個人的には、高校生参加がこれまで社会運動的な要素が強かった日本教育学会の研究にどのような影響をもたらすのかも興味があります。学問の自由は、大学院生や大学教員だけでなく、広く社会に開かれたものになってほしいと思います。

 もう一つ、最近、日本政治学会の『年報政治学 2021-Ⅱ』(筑摩書房、2021年)に掲載された山口晃人さんの論文「子どもの参政権の政治哲学的検討」という論文を読みました。この論文は、選挙権年齢を0歳まで引き下げることについて政治哲学的なアプローチから検討しているものです。本の中で、山口さんは智者政と民主政について政治哲学的に比較・検討したうえで、民主政を擁護するのであれば、子どもに対しても選挙権は付与されるべきであると説明しています。日本の教育学・教育法学においては、長く選挙権年齢の18歳への引き下げや子どもの学校参加の拡大などが検討されていましたが、これは未成熟な子どもの声をいかにして教育や政治に反映させていくかということにウェートを置いており、その意味では、子どもの政治参加をめぐる議論であるのは確かです。しかし、今回の山口さんの議論は、子どもにも大人並みの政治参加の権利を保障すべきという議論であり、ある意味、これまでの教育学における子ども参加研究では想定していなかった議論と言えます。私自身、この論文を読んで山口さんの子ども観、権利観に目から鱗が落ちる感覚でした。今後、問われるのは、こうした問題提起に対し、教育学や教育法学がどのような応答をするか、です。子どもを単に未成熟な存在、わがままな存在と捉えるのではなく、また教育を受ける客体と捉えるのでもなく、教育それ自体を創り出す主体として捉えていくことが求められていると言えそうです。

 以上の2つの出来事から、子ども参加は、実は、新たな段階に入ったともいえると思いますが、いかがでしょうか。