前回の続きです。

今回は「不安をその都度絶つ」という心のコントロール手法について説明します。
不安の中でも、前回の分析手法があまり役に立たない不安もあります。
「どこにも受からずホームレスになったらどうしよう」
「筆記を突破できてもどうせ面接で落とされる気がする」
「受からなかったら自分の価値が否定され、二度と立ち直れない」

これらはどれも理性的に考えれば根拠のない妄想である事が分かります。
まず、勉強を続けさえすればどこにも受からないことはほぼあり得ません。
また、たとえ受からなかったとしても即ホームレスになることはないでしょう。
若いんだから就職先はいくらでもあります。
差し迫った現実の危機でもないのに、
ありもしない妄想にとりつかれて自分の首を絞めているのです。
まずはそのことにしっかりと気づかなければなりません。

しかし、頭では分かっていても繰り返し繰り返し浮かんでくる。
振り払おうとすればするほど浮かんでくる。
こんな場合はどうすれば良いのでしょうか。

不安はたいていの場合、心が「いま」に不在である隙をついてやって来ます。
「いま」に集中しているときには不安は起こりようがありません。
妄想に気づいたら「いま」に戻ることです。
勉強していたり、仕事をしていたり、家事をしていたり、入浴している、
その目下の活動に立ち戻って集中することです。

どこにも問題はないはずです。
ただ自分の思考で問題をつくり出しているだけです。


不安や妄想が現れたとき、無理に振り払おうとしてはいけません。
不安や妄想を否定するのではなく、
ただそこに「ある」と認識して、それ以上追わずに手放すのです。
脳には背内側前頭前野という場所があり、
自分の思いや思考に「気づく」働きをしているそうです。
自分の思考を客観的に観察するもう一人の自分が脳の中にいるんですね。
ここが正常に働いていれば、不安や妄想に飲み込まれることはありません。
頭を冷やして適切に対処していける能力をだれもが持っているのです。

ところが、不安や恐怖を抑圧すると背内側前頭前野の働きが鈍ってしまい、
増幅された不安や恐怖がふたたび現れたときに
パニックやうつを引き起こすもととなるそうです。

「抑圧する」と「手放す」の違いに注意してください。
「抑圧する」とは、「ダメだ」「嫌だ」と否定的な評価を下し、
力ずくで振り払おうとすることです。
抑圧すると意識下にある不安が無意識下に移って手に負えなくなってしまいます。
「手放す」とは自分の思いを認めた上でこだわらないことです。
具体的には、何か引っかかる思考やイメージが浮かんだら、
「いま、……と思った」と気づくだけにし、それ以上深追いしない。


それでもしつこくつきまとう不安や抑鬱感情を洗い流す方法として深呼吸があります。
深呼吸には雑念で汚れてしまった頭の中を掃除する効果があります。
いろいろなやり方がありますが、一番簡単な方法を紹介します。

まず背筋をピンと伸ばして座り、目を閉じて2,3度深呼吸する。
このとき両手をおなかに当てて腹式呼吸をしてください。
呼吸が深くなったら、自然な呼吸に移って、
吐く息に合わせて回数を「いーちー」「にーいー」と数えます。
無事に10まで数えられたら1に戻って繰り返します。
雑念がわいて数え損ねたときにはその都度1に戻ってやり直して下さい。
目は開いてても瞑っても良いです。

呼吸を数えるのは「いま」に意識を戻すためです。
過去や未来からやってくる妄想を払うためです
もちろん、やっている間にもたえず雑念がわき、油断すると数を数え損ないます。
それに気づいたらただ雑念をやり過ごして再び意識を呼吸に戻す。
これを何度か繰り返すことで、心が落ち着いて静かになっていきます。

気持ちが落ち着いたら勉強に戻ってください。
この瞑想に慣れると集中力が飛躍的に高まります。
試験本番や面接の直前にも落ち着くことができます。
鬱になるのを防止することもできます。
簡単だけれど驚くほど効果がありますよ。
スポーツ選手などもやっています。
ぜひ試してみて下さい。