昨日の論文・時事基礎講義では「新聞の読み方」について2時間ほど解説しました。

きょうは火曜日です。火曜と土曜の朝刊はとくに重要な記事が掲載されているので熟読するようにと言いましたが、どうでしょうか。朝日新聞朝刊を見て下さい。


まず1面トップは「給油限定 新法案提出へ」という政治ネタです。これは今後の政局の動向に関わる重要ネタです。但し公務員試験にそのまま出るようなものではありません。


重要なニュースは①1面本記のほかに、②サイド(2面もしくは社会面)、③解説、④社説と連動すると説明しました。今回は③解説はありませんが、それ以外は揃っています。まず1面本記で概要を掴み、サイドで本音の部分や背景を立体的に把握する。解説・社説ではこのニュースをどう評価するか、新聞社の見解を読みます。解説と社説は論文の教材としても役立ちますから、どういう理論構成で何を主張しているのか、論理や筋はきちんとしているかまで分析して下さい。


1面本記は、テロ対策特措法が11月に期限切れとなるので、インド洋での海上自衛隊による補給活動を継続できるようにするため、政府・与党が新法案を今国会に提出する方針であるという事実を淡々と説明調で述べています。これだけでは無味乾燥ですし、このニュースの持つ背景や、ここに至る経緯、今後の政局において持つ意味などが分かりません。そこで必ずサイドへと読み進めてください。


サイドは関係者の証言でつなぎながらニュースの背景や本質に迫る欄です。表面には出てこない本音が垣間見え、生々しいエピソードも盛りだくさんなので、読み応えがあります。サイドを読めばニュースがより生き生きと立体的に見え、興味も倍増します。

2面のサイド「時時刻刻」のタイトルは「首相捨て身、政界度肝」。記者会見で海自の給油活動継続に向け「職を賭す」と自らの進退に触れたことにつき、周囲に全く告げていなかったことなどが明らかにされ、首相の真意を巡る様々な憶測が載せられています。また、参院第一党の民主党は態度を硬化させ、民主に責任をなすりつけようとする作戦と読んで警戒感を強めていることも示されます。


次に社説「首相の決意 理解に苦しむ論理だ」。国会冒頭の所信表明演説で「改革を止めてはならない」として続投を決意したと言っておきながら、改革とまったく無関係なテロ特措法に政権の死活をかけるというのはおかしいと批判しています。

これはあまり生産的な議論ではないので参考になりません。むしろテロ特措法の延長問題につきいかなる立場をとるべきか、正面から論じて欲しかったです。

この点、きょうの読売社説は「所信表明演説 海自活動継続は国際責任だ」として立場を明確に示しています。ただ、朝日社説にもあるように首脳会談で自分がブッシュ大統領に媚びを売ったことを「国際公約だ」と決めつけられても国民としては戸惑います。読売は一方的な決めつけ論調が多く、私はいただけません。

一方、毎日社説は「安倍首相 退陣含みの国会が始まった」として、この問題を側面からですが大局的に俯瞰し読みやすい。近時、朝日の社説が読みづらい(悪文が多い)のに対し、毎日の社説は文章も良くバランスもとれたのが多いと感じます。論文の勉強用なら毎日社説がお勧めです。


講義でも指摘しましたが、重要ニュースが出た際には三大紙の社説を読み比べて下さい。インターネット上で読めます。


政治面(4面)に行くと、関連記事として「海自給油新法 参院の再議決 現実味」という解説風の記事が載っています。その左側には「逆転国会開幕 政治的成熟への長い旅」という記者のコラム。どちらも政治学の知識やセンスを身につけるのに役立ちます。


さて、国会ネタに埋もれてしまいましたが、総合3面の「ポスト京都 船頭争い」というAPEC首脳会議の記事と、呼応する社説「APEC 脱温暖化へやっと」という記事は必読です。公務員試験にはむしろこちらのほうが重要なので、スクラップしておく価値があります。地球温暖化問題については常に目を光らせてください。


最後にひとつだけ。1面準トップ「学力テスト 足立区教委 試験前に配布」は本当にやりきれない気分になる記事です。朝日の抜きネタっぽいですが、学力テストの最中に校長が指さしで正答を指示する不正を行っていた問題で、実は区教委が校長会で示唆していた形跡があるという内容です。区教委がここまで倫理を喪失していたとすれば、教育現場が荒廃するのも当たり前です。司法試験でも似たようなのがありましたが、学校の評価を高めるためカンニングを指示する大人たちが子どもに何を教えれるのでしょうか?


以上、本日の朝刊の読み方のポイントを指摘しました。

ノウハウを体系的に知りたい方は時事・論文基礎講義を受けて下さい。

9月23日(日)から時事道場が始まるので、その足慣らしとして、また教材として適当な朝刊が出たときに第二弾をやります。