最初の頃、店を立ち上げて間もない店のストーリーを書いたときに、ときどき来られたお客さんからブログ読みましたよ、と言ってもらえることがありました。
うれしい反面、少しこそばゆいような。どんだけ突貫で店を作った無謀な奴らなんだ、一度顔を見てやろうという人も中にはいたと思います(笑)。
ゆるーくまったりと、身の丈にあった店を作って行こうと始めた音楽の店でしたが、しかし、店を続けていくとどうしても自分たちの思いと違う現実もでてくるようになりました。
そう、その一発目が多田さんとの出会いだったかもしれません。
今でも覚えています。2010年の正月開けに、ひょこりとサックスを持った中年の男性が現れました。
始めて間もない店ですので、たまたまいろいろな方がひょこっとお越しになります。
セッションの店では、演奏者が自分のパートのところに名前を書き、呼ばれると前に行って演奏するのですが、私はその名前を書くボードを彼のところに持っていきました。
その人は「多田誠司」と少し角ばった文字で、フルネームを堂々を書かれました。
普通は、名字だけ小さく書く人も多いのですが。で、私は、「多田誠司さんですね」と名前を確認したのを覚えています。
多分、そんな有名な国内ミュージシャンの名前も知らないアマチュアな店なんだとガッカリされたでしょうね。でも、そこは大人な多田さんです。そうですと一言、にこやかな笑顔で応えられました。
そして彼の順になったとき、ホストベーシストが多田さんにどれくらいのテンポで演奏しますかと(今思うとすごく怖い)聞いて、演奏が始まった途端、この人は何者っなんだと全員のけぞりました。
その当時、店にいたホストメンバーでは彼のことをいち早く、認識していたのがピアニストだったんですが、演奏で手が震えたと語っていました。当時の私たちのレベルから見たら、もう遥か雲の上の人ですから。
そうです。多田誠司さんといえば、ハハー控えおろうというくらい、恐れ多い存在なのですが、当時の私たちたちったら、本当に無知だったんですね。
しかし、それが縁となり、お住まいが近いということもあって、それから今日に至るまでライブやセッションホストとして多田さんには大変お世話になっております。
今思えば、本当にお客さんが一人も来ない日が続いたオープンの時から、そういう御縁に恵まれたことがあったのが本当に驚きでした。
当初の頃の店を作ったストーリーを読んでいただけるとわかると思いますが、店を作るのにアップアップで、オープンしてから、宣伝するのを忘れて、あわててサイトを作ることになりましたが、それもオープンして2カ月後のこと。
最初はお客さん、ひとりという日もありました。今思えば、本当に無謀すぎました。ここまでこれたのは、本当に見えない力が後押ししてくれたような、そんな感謝でいっぱいです。
ま、今日はここまで。