皆さんこんにちは。

 「J-AC TOP40」2024年3月23日付けチャートの初登場曲、圏外曲を振り返ります。

 

 

  初登場曲

 

 

 今週の初登場曲は3曲、リエントリーが1曲でした。

 なお、登場予想が的中した曲は4曲中2曲でした。

 

 

No.37

 

 

 

 

「たまものまえ」水曜日のカンパネラ

■3/13リリースの配信シングル

■ドラマ「僕の愛しい妖怪ガールフレンド」主題歌

■「幽霊と作家」から2か月連続、今年2曲目、通算5曲目のエントリー

 

 

 「気を取り直して」「仕切り直し」ということばはこういう時のためにあるのでしょう。先月エントリーした楽曲「幽霊と作家」が初登場17位からのまさかの即落ち5週に終わってしまった水曜日のカンパネラ。悪夢のような推移で最悪の印象を残してしまった水カンですが、その印象を払拭すべく、「幽霊と作家」が消えたタイミングで早くも新曲が入ってきました。気を取り直して、仕切り直しのエントリーです。

 

 3月13日にリリースされた配信シングルで、ドラマ「僕の愛しい妖怪ガールフレンド」主題歌です。佐野勇斗さん主演のドラマで、日本独自の文化である「妖怪」と「オタク」カルチャーをオリジナル脚本で描いた作品となっています。「妖怪」と「オタク」...非常に水カンと親和性の高い分野だと思いますね。標題の「たまものまえ」とは、平安時代の末期に日本にいたとされる伝説の妖怪です。漢字では「玉藻前」と書き、女官の正体をしていますがその正体は九尾のキツネです。だから、曲の中で「コンココン」とキツネの鳴き声を模しているんですね。「たまものまえ」というフレーズも何かそれ自体がキャッチーですし、相変わらず目の付け所が面白く、見事な味付けをしてくるなと思いますね。もし、妖怪「たまものまえ」が実在していたら、この曲を聴いて「これ、あたしの曲!?」と驚くことでしょう笑

 

 早くも今年2曲目のエントリーで、昨年初エントリーしてから1年足らずで5曲とノリに乗っています。前作は初登場17位と高すぎたため撃沈しましたが、今作は30位台後半からの(ある意味身の丈に合った)スタートとなりました。ここから息長く頑張っていけるでしょうか。

 

No.29

 

 

 

「SWEET NONFICTION」NiziU

■3/14リリースの配信シングル

■映画「恋わずらいのエリー」主題歌

■「Memories」から2か月連続、今年2曲目、通算10曲目のエントリー

 

 2か月連続の配信リリースとなるNiziUの新曲です。「ユニ春」テーマソングの「Memories」に続き、こちらも春めく雰囲気のある楽曲ですね。3月14日にリリースされた「SWEET NONFICTION」で、映画「恋わずらいのエリー」主題歌です。

 

 映画「恋わずらいのエリー」は、妄想大好き女子とウラオモテ王子のノンストップミラクルラブストーリーということです。学校一のさわやか王子を眺めて妄想している主人公ですが、その妄想が彼にバレてしまう...!(はずかしーオエー)そして、そんな王子も実は「裏の顔」があって...というストーリーになっています。

 

 NiziUが手がける主題歌は、映画の世界観を反映したキュートでスイートなものになっています。NiziUは、「"これは恋なのかな?" "この気持ちは好きなのかな?"と悩んだ時に聴いていただくと、元気をもらえる曲になっているんじゃないかなと思います」とコメント。NiziUの得意とする、ポップで楽しい気持ちになれる楽曲ですね。

 

 今作もリクエストが好調で、これで「Memories」とはダブルエントリー。2か月連続リリースということで食い合いが心配されましたが、「Memories」はすでに先週までトップ10に4週入っており、十分成功していますから、少なくとも共倒れという展開はありません。そういう意味では、非常に上手いこといきましたね。後は、この曲がここから連続ヒットを決められるかに注目です。

 

No.23

 

 

 

「Biri Biri」YOASOBI

3/13リリースのCDシングル

■「ポケットモンスタースカーレット・バイオレット」インスパイアソング

2月3日以来、7週ぶりのリエントリー

 

 いやあ、これは痺れた!

 曲の出だしが流れた瞬間、思考が固まりました。23位に入ってきたのはYOASOBIの「Biri Biri」。昨年から今年の初めにかけてエントリーしていたナンバーで、トップ10にも入っていましたから皆さんおなじみでしょう。「ポケットモンスタースカーレットバイオレット」のインスパイアソングです。

 

 40位で圏外となった2月3日以来、実に7週ぶりのリエントリーということになりました。要因はキヨピーさんも述べておられましたが、CDシングルのリリース(フィジカルリリース)です。3月13日に完全生産限定盤でこの曲のCDシングルがリリース。これが初週1.2万枚を売り上げ、初登場4位のセールスを記録しました。CDシングルがリリースされ、見事チャートへのカムバックを果たしたというわけです。

 

 キヨピーさんが指摘したように、最近はフィジカルリリースによるリエントリーが増えています。しかし、この曲は極めて異質です。フィジカルリリースでリエントリーしてくる楽曲というのは、配信の時は成績が伸びなかったものがほとんどです。ほとんどの楽曲は、30位台に数週程度で消えており、たとえば先日リエントリーしたRADWIMPSの「正解」も配信の時は最高35位の3週でした。対してこの曲はどうでしょうか。なんと、すでに11週もエントリーし、トップ10も3週記録しています。すでにヒットした楽曲が再び戻ってきたというのは極めて異例で、恐らく近年では初めて。また、この曲のあとには「HEART BEAT」がエントリーしており、別の曲を挟んでリエントリーしてきたというのも極めて異例です。私は、この曲のCDリリースは知っていましたが、「まさか戻ってくることはないだろうな」と早々に候補から切っていました。CDセールスが好調だったから戻ってこれたのでしょうが、それにしてもYOASOBIはとんでもない記録を打ち立てましたね。チャートマニアとしては興奮する展開です。いやあ、いいものをみせてもらいました。

 

 YOASOBIといえば、昨年のヒット曲「勇者」もCDリリースでトップ10にカムバックしていましたよね。つまり、2作連続でCDで息を吹き返してきたということです。YOASOBIといえば、現代に主流の配信中心のアーティストで、CDシングルはあまりリリースしないことが特徴でした。配信でも安定してトップ10入りできる強さがありますが、そこにCDシングルのセールスが加わるわけですからまさに「鬼に金棒」ですよね。最近は積極的にCDをリリースするようになり、それがチャートに良い効果を及ぼしています。前回は最高6位まで行ったこの曲。まさかまさか、2度目のトップ10入りはあるのでしょうか。

 

 

No.14

 

 

 

 

「満ちてゆく」藤井風

■3/14リリースの配信シングル

■映画「四月になれば彼女は」主題歌

■「花」以来5か月ぶり、今年2曲目、通算11曲目のエントリー

 

 

 今週の初登場最上位は順当にこの曲。映画「四月になれば彼女は」の主題歌に起用されている藤井風さんの「満ちてゆく」です。3月15日に配信されると、Spotifyでは10日弱で300万回超えという破格の再生回数を稼いでいます。α-stationでのオンエアも好調で、今週は5回もオンエア。これらのポイントが反映され、14位という好順位から初登場を決めてきました。先週のセカオワ「タイムマシン」を1つ上回る今年最高位です。10位台からの初登場は「Workin’ Hard」「花」に続き3作連続。最近は、高い人気に裏打ちされ上位から入ってくるのが定番になっています。なお、先週まで22週にわたってエントリーしていた「花」とは1週のかぶりもない、美しい入れ替わりとなりました。  映画「四月になれば彼女は」は、昨日公開になりました。ウユニ、プラハ、アイスランド、東京。 ラブストーリー史上最高峰のスケールで紡がれる純愛映画と謳われており、キャストには佐藤健さん、長澤まさみさん、森七菜さんと本格派と呼べる顔ぶれが並びます。そんな映画の主題歌に起用されたのが藤井風さん。意外なことに、自身初の映画主題歌であり、自身初の「ラブソング」ということにもなるそうです。 藤井風さんは、愛は与えれば与えるほど「満ちてゆく」ものであると述べます。たしかにそうだと思いますね。私は深い愛を語れるような人生を歩んではいませんが、好きな人のことを考えたり、好きな人のために何かをしている瞬間は「満たされている」という感覚があります。人を愛することでしか満たされないものというのはあると思いますね。映画をみて、壮大で荘厳な雰囲気を感じたという藤井風さん。主題歌は家で書けないと思い、教会の中でこの曲を書き下ろしたそうです。そのエピソードを聞いて納得するというか、荘厳で神聖な響きがありますよね。愛することで「満ちてゆく」感覚。その感覚を、藤井風さんが私たちリスナーに伝えてくれています。私たちもまた、「満ちてゆく」感覚になれますよね。名曲です。MVは、映画と同じく山田智和監督が手がけており、藤井風さんが渾身の演技を披露しています。冒頭では藤井風さんが老人に扮しており、その佇まいが話題になっています。MVの方もぜひご覧になってください。  今のところ配信限定ですが、話題の映画主題歌で見事な出来栄えということもあり、ここから大きく伸ばしていくでしょう。2作連続の1位獲得となるかに注目です。


 

 

 

 圏外曲

 

 

先週40位「Use Your Body」DA PUMP

IN【3】TOP10【0】HIGH【32】19P

 

 

 DA PUMPが2月21日にリリースしたCDシングル。CDシングルは、初週1.4万枚超えを売り上げ初登場8位と絶好調でした。これを受け、3月2日のチャートで32位に初登場。しかし、翌週は32位と変わらず、3週目だった先週は急落。トータルは3週に沈みました。DA PUMPは2021年に2曲が入って以来のエントリーでした。38位1週に終わった「紡」は上回ったものの、最高21位、6週だった「Dream on the street」は下回りました。3年ぶりのエントリーで、今一つ精彩を欠いてしまったようです。CDセールス以外のポイントに乏しかったことが急落の原因と思われます。今後は、配信面の強化が課題といえるでしょう。

 

 

先週39位「幽霊と作家」水曜日のカンパネラ

IN【5】TOP10【0】HIGH【17】79P

 

 J-ACでは、たいていの曲は2週目に順位を上げてきます。2週目にいきなり順位を下げてしまう曲を私は「即落ち曲」と呼びますが、即落ち曲の数はそんなに多くないです。この曲は数少ない即落ち曲の一つですが、その中でも最悪の部類に挙げられるでしょう。「初登場17位からの即落ち5週」という信じられない推移になりました。 

 2月7日にリリースされた配信シングルで、ドラマ「婚活1000本ノック」主題歌。配信が好調だったようで、2月17日に17位で初登場。これは、前作「マーメイド」の最高18位を上回り、いきなり自己最高位というロケットスタートでした。しかし、これはさすがに順位が高すぎたということでしょう。2週目は19位に即落ちし、3週目はトップ20落ちして22位でした。「少し下げたものの、腐っても初登場17位だし、ここからは粘るのかな」と思いきやそんなことはありませんでした。なんと、4週目は29位、5週目は39位と加速度的に下げていき、トータル5週であっという間に圏外となりました。初登場10位台の曲というのは非常に強く、大抵の曲はそのままトップ10入りしていきます。トップ10入りできないのはおろか、即落ちからわずか5週で消えたのですから衝撃です。こんな曲他にないよ...と言いたいところですが、前例はあります。10位台からの即落ち5週はおそらく2020年のゆず「そのときには」以来だと思いますね(20→27→33→34→37位)。いずれにせよ、めったに見られない劣悪な即落ち曲でした。 

 悪い意味でチャートにインパクトを残してしまった水曜日のカンパネラですが、自己最高位の17位を記録しており、何も悪いことばかりではありません。それに、今週はさっそく次なる新曲が入ってきました。

 

先週36位「インソムニア」Eve

IN【2】TOP10【0】HIGH【36】7P

 

 Eveが3月1日にリリースした配信シングルで、映画「マイホームマイヒーロー」主題歌。1月の「逃避行」から短いスパンでのエントリーになったEveですが、最高36位止まりの2週に終わり、最高24位の6週だった「逃避行」からは大きく下げました。CDがリリースされておらず、配信も際立って強くはなかったため、このような結果になってしまったのだと思います。2023年の初頭に「ファイトソング」が自身初のトップ10入りを記録したEveですが、その後は5曲連続で大きなヒットがありません(うち3曲は6~7週入っているので極端に悪いわけではないです)。ここらでガツンとくる次なるヒット曲が欲しいところですね。

 

 

先週35位「花」藤井風

IN【22】TOP10【14】HIGH【1】???P(408+???)

 

 ドラマ「いちばんすきな花」の主題歌として大ヒットした藤井風さんの楽曲。ここJ-ACでも大ヒットし、昨年11月から12月にかけて堂々の4連覇を記録しました。これが通算3曲目の1位だった藤井風さんですが、前の2曲(「きらり」「燃えよ」)は一週天下でしたから、3曲目のこの曲で大きく記録を伸ばすことになりました。  初エントリーは昨年の10月21日。19位と高い位置の初登場でした。当時は「Workin’ Hard」が上位に入っていましたが、エントリー時から勢いは段違いでした。2週目は一気に7位まで上げてトップ10入りすると、3週目には早くも2位を記録。こうなるともう止まらず、4週目にして自身3曲目となる1位を獲得しました。そこからは、先にも触れたとおり堂々の4連覇を記録しています。12月9日にKing Gnuの「SPECIALZ」(返り咲き)に1位を譲りましたが、その後も推移は安定しており、さらに5週連続でトップ5を記録。年が変わっても安定してトップ10にとどまっており、トップ10内は14週でした。これは「きらり」「まつり」に次ぎ、「燃えよ」と並ぶ自己3位タイの記録です。藤井風さんはこの曲が10曲目のエントリーですが、そのうち4曲がトップ10に14週以上入っているわけですからとんでもない話です。抜群の強さを誇っていますね。 トップ10落ち後は緩やかにチャートを下っていき、10位台と20位台には3週ずつエントリー。新曲「満ちてゆく」が入ってきたことにより、先週35位から道を譲りました。新曲と1週もかぶることなく、邪魔をせずに入れ替わる。去り際まで完璧で美しかったと思います。トータルは22週で、やはり前述の3曲に次ぐ4番目の記録です。ちなみに、トータルポイントも同様に自身4位となっています。4連覇を記録し、抜群に強かったこの曲ですが、その上にさらに3曲もあるのですから恐るべき層の厚さです。「きらり」「燃えよ」「まつり」「花」は全部年間トップ10レベルですからね。この曲のヒットで、レジェンドアーティストとしての地位はますます揺るぎないものとなりました。来週以降は「満ちてゆく」がさらなるヒット街道を走っていくのか、注目したいと思います。