体の手足には関節がありますが、

交通事故のために、

治療を行っても十分に関節が可動しなくなることがあります。

可動域制限の後遺障害のことです。


健康な側(健側)と患部側(患側)を比較して、

4分の3以下に制限されていれば12級、

2分の1以下に制限されていれば10級と認定されます。

左右とも患部側の場合は、

一般的な参考可動域と比較します。


この可動域は、

医師が診断の上、

後遺障害診断書に記載します。

この後遺障害診断書の数値を見れば、

単純に計算すればよいだけですから、

素人でも後遺障害該当性が一目で分かります。


ただ、注意が必要なのは、

他動と自動のどちらを見るか、

という点です。


自動とは、自分で動かせる範囲という意味です(いわば自己申告です)。

他動とは、第三者が動かして動かせる範囲という意味です。


後遺障害の認定においては、

原則として他動をとります。


自己申告である自動をとれば、

賠償目的の詐病が横行するとでも思っているのか、

客観性がないというのが理由でしょう。


例外として、筋肉の弛緩性麻痺のときのように、

医学的に見て他動を取るのが不相当な場合には、

自動を採用します。


私も、数多くの後遺障害診断書を拝見していますが、

残念ながら、

医師でも、可動域測定に熟練されていない方が散見されます。


その中で多いのは、

①参考可動域を知らない医師

②可動域測定の軸を知らない医師

③測定器を使わずに目分量で測定する医師

④無理くりに動かして他動域を測定する医師

です。


①や②は基礎知識不足というだけで、

計れていれば問題ありません。

ときに、参考可動域を知らないために、

健側の可動域がおかしいなどという場合があります。


③の場合、患者に有利に目測してくれていれば、

被害者側としては文句を言ういわれはないのですが、

逆の場合は泣くに泣けません。

いずれにしても、客観性がなく問題です。


④の場合、上述のとおり、

実務上、原則として他動域をとられますから、

悲惨です。


他動域測定は無理くりにして動く範囲という意味ではありません。

基本的に他動=自動です。


私の執務経験上、

なんどか、

他動>自動の後遺障害診断書を見てきました


私は、そのような診断書を診ると、

なぜ、他動と自動で差が出るのか、

医師に見解を求めることがあります。


しかし、有意な医学的意見が聞けることはほとんどありません。

この場合、自己申告(自動)に偽りがあるといわんがばかりに
常に他動をとられてしまい、残念な結果になります。


可動域は体調にもよって変わってきますから、

一回の測定によらず、

経時的な変遷を見るべきであると思いますが、

自賠責の認定では、

ほとんど、後遺障害診断書の記載がすべてです。

そうなってくると、

たまたまよく動くときに計ってもらうと、

被害者が割を食うことになりかねません。


いろいろつらつらとかきましたが、

後遺障害診断のための測定が、

いかに重要かということを述べたかった、

というわけです。