台風が近づいてきていますね。
私は、明日、明後日と出張のため、
事務所を不在にします。
法律相談もお受けできません。
ところで、ずいぶん前に、
人身傷害保険について、
書いたのですが、
その続きを予告したものの、
今日まで書きそびれていました。
人身傷害保険というのは、
お怪我の賠償を自分(や家族等)の自動車保険で見てもらえる、
というとてもよい保険です。
人身傷害保険から、
600万円を受領した後に、
加害者側保険会社に、
訴訟を起こし、
その結果、
裁判所が、
総損害1000万円、
加害者の過失6割と判断した場合、
認容額はいくらになるのか、
という議論がありました。
これについては、
平成24年2月20日に、
最高裁判所が判断を示しています。
交通事故に詳しい弁護士であれば、
上記の設問について、
即答できるでしょう。
答えは、400万円です。
結局、被害者は、裁判所が総損害と認定した、
1000万円を合計(人身傷害保険から600万円、加害者から400万円)
で取得できるので、
過失があっても、全賠償が受けられる、
というとてもよい結果になります。
この議論の前提には、
①人身傷害保険は、被害者の過失を問わない保険である。
②人身傷害保険は、約款に基づく賠償基準で支払われるので、
いわゆる弁護士基準より、相当低い額しか支払われない。
③なので、残額は加害者に請求する必要がある。
④人身傷害保険は、保険代位といって、
支払った保険会社は、加害者に求償権を有する。
⑤なので、被害者が加害者に残額を請求した場合には、
人身傷害保険から受け取ったお金は、
既払金となりえ、損益相殺の対象となる(差し引かれる)。
という基礎知識が必要となります。
そして、論点は、
「その損益相殺の範囲はどうなるのか」
という点なのです。
この点、最高裁は、
被害者の過失分から人身傷害保険は補填される、
と判断しました。
ですので、
上記の例で言えば、1000万円のうち、被害者の過失分の400万円を
人身傷害保険が補填し、
600-400=200を加害者に代わって人身傷害保険が、
支払ったということになります。
そして、加害者が支払うべき1000万円の6割の600万円のうち、
200万円は人身傷害保険からすでに支払い済みだから、
加害者は400万円を払えばいい、
という理屈になります。
この理屈は、非常にややこしいので、
私の力量では、
これ以上平易に説明できません。
あしからず、お許しください。