東野圭吾 「容疑者Xの献身」 文藝春秋 | 無節操ニンゲンのきまま生活

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2015年2月よりイギリス・オックスフォードの近くで生活しています

東野 圭吾
容疑者Xの献身

東野作品、順調に読み進んでいます♪

傑作をどんどん読んでいきたいんだけど、

傑作だけ全部読みきってしまうのももったいない気がしてしまうので

軽めのと人気ものを交互に読んでる、貧乏性の私です^-^;;

これは、人気モノに入るかな?

今年の直木賞受賞作品です。


数学に関しては天才と認められているが

外見にコンプレックスをもち女性に対しても奥手の高校教師・石神。

彼はアパートの隣に住む母子の母親の方・靖子に好意をもっているが、

その母子が誤って前の夫を殺してしまう。

石神は彼女の手伝いをすることを決め、完全犯罪をもくろむ・・・というお話。



名探偵役は、「探偵ガリレオ」でおなじみ、物理学者の湯川と、同級生の刑事・草薙です。

湯川と草薙は大学時代サークルで同じ、

湯川と石神は大学時代学部が同じという関係で、

女性の殺人への関与を疑う草薙のサポート役を買ってはでるものの、

石神との友情の間で湯川は揺れ動く。

湯川は独自の推理で、石神にたどりつくのですが・・・。



まず石神という男は、無表情で数学にしか興味がなくて、

靖子への好意も単なる憧れなのか、粘着的な愛なのかまったく描かれない。

だから犯罪隠蔽を申し出る動機や、

靖子が他の男と仲良さそうにしてるのを目撃したときの気持ちも

こっちが想像するしかないのです。


私が想像した石神の人物像は、ラストで一気に裏切られたよ~ ̄□ ̄;;

ごめんなさい、石神さん^-^;;



この話の軸は2つ。

1つはミステリー的な部分、つまり

天才・石神がどんなトリックを使って完全犯罪を成し遂げようとしたのか

これについてはですねえ・・・。

私の予想をはるかに上回るスケールのでかいトリックでした!

なんで日付がずれてるのか、そこを考えなかった私も浅はかなんだけど、

さすが東野さん、そしてさすが天才・石神!

しかもこのトリックを実行した石神の気持ちを考えると

なんとも胸が痛くなるのです。



もう1つの軸は、石神と靖子の恋の行方

石神という男は無表情で暗い感じのする男で、

犯罪隠蔽を買って出てくれた理由が「私に好意を持ってるのかしら・・・」だけでは、

靖子にとっては実に疑わしいのです。

そりゃそうだわね。好きなだけで犯罪を隠してくれるなんて。

でも石神本人の本心がイマイチわからないので、

石神を頼るしかないという気持ちの中にも猜疑心や不気味さを感じてしまう。

たとえ気味悪さを感じても石神から逃れることはできない、というジレンマを

だんだん靖子は抱えていきます。



ラストはトリックと石神の本心が明らかになる。

さっきも謝りましたが、

私、もっと石神が卑劣な手段に出るのかと思ってました。

ああ、浅はかな私・・・。本当にごめんなさい石神さん。

彼の思いと、苦渋の決断でその思いを暴いた「探偵ガリレオ」湯川の思いに思わず涙しました。



終わり方は、石神の望んでいた姿じゃなかったのかな?

読み終わった直後は、石神には大事なものを守れなかった失望感しかないと思ってたけど、

後から考えると、誰にとってもこういう終わり方でよかったと思える。

結局犯罪を隠蔽できたとしても、

自分の犯した罪まで消えてくれることはないのだから。

それを一番わかっていたのは、娘だったのね。


ミステリーが上質な人間ドラマに早変わりしちゃう、東野さんの才能には脱帽です。

あ、そういえば、タイトルの「X」が数式で使われる字体になっている理由に

記事を書いてる最中に初めて気がつきました^-^;;

だって数学教師だもんね~、石神さん。