横山秀夫 「第三の時効」 集英社文庫 | 無節操ニンゲンのきまま生活

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2015年2月よりイギリス・オックスフォードの近くで生活しています

横山 秀夫
第三の時効

大好きな作家・横山秀夫さんの短編集です。

最近ゾクゾクと単行本が出版されてるので、嬉しいです^-^



収められている作品は、


沈黙のアリバイ

第三の時効

囚人のジレンマ

密室の抜け穴

ペルソナの微笑

モノクロームの反転


↑あら、全部「○○の△△」という形のタイトルだ。

今気づいた~



全体的にはすべてがF県警で起きた事件。

所々に出てくる朽木という刑事は、冷静沈着で頭も切れ、ともすると冷徹にも見られる刑事で、

確かこの本じゃない作品にも登場してたはず。

作品によって朽木の部下、同僚、上司が警察内部での上下関係や人間関係を露わにしながら

「犯人を許せない」という1つの思いのために事件解決に全力を尽くすのだ。


私が一番気に入ったのは、「ペルソナの微笑」。

強行犯係の最年少刑事・矢代は、刑事には珍しいお調子者タイプ。

でも上司・朽木の信頼を得ている、将来有望株だ。

その矢代が、子供を使って青酸カリ服毒殺人を起こした疑いの強い、

証拠不十分の容疑者を取調べで落とす、という任務を負い・・・という話。


矢代にも後ろ暗い過去があり、

今回の事件は自分のトラウマとかぶるところがある。

矢代は子供時代、大人の口車によってある事件に関わった過去があり、

今回対峙する容疑者は、まさしくその時の大人と同じやり口で殺人を実行した。

そしてこの容疑者も、矢代と同じような体験をしているのだ。


そんな自分のトラウマを偽の笑顔で取り繕ってきた刑事・矢代と、

自分の犯罪を偽の笑顔で取り繕う容疑者との対決が実におもしろい!

特に真実を暴く場面では、矢代の笑顔と容疑者の笑顔が激しくぶつかり合う。


この二人の笑みを映しあっている鏡と見立ててタイトルがついたんだろうね。

真実を暴くことによって、この鏡が粉々に砕け散る場面が見所です^-^


横山さんの小説を読んでいると、

警察ってかっこいい!と思ってしまう。

最近の不祥事なんてごく一部の人物が起こしているに過ぎないのに、

あんなことで警察の権威が失墜するのは、いたたまれないです・・・