潰れそうで潰れない共同売店 | 竹富島の民宿 泉屋

潰れそうで潰れない共同売店

日経新聞に、沖縄のやんばるにある共同売店のことが載っていたので、ここで紹介します。
ウルグアイのムヒカ大統領が言っていたことってこういうことなんだよなと思いました。

 急速な過疎化が進む沖縄。中でも名護市以北のヤンバル地区は、コンビニエンスストアさえまばらな地域だ。その最北端、那覇市内から車を2時間ほど走らせた場所にある国頭村の集落「奥」に、その店はある。



 そんな共同店が存続する上で何よりネックとなるのは、大半が過疎地にあるが故、客足が極端に少ないことだ。奥共同店の1日100人はまだ多い方で、伊部共同店(国頭村)に至っては「1日5人の時もある」(店主の名嘉山スエ子さん)という。
 それでも店が存続できるのは、販売価格を高く設定しているからだ。
 奥共同店の場合、例えばカビ取り剤「カビキラー」が525円(税込み)、風呂用掃除剤「バスマジックリン」が360円(同)と、とある東京のドラッグストアの価格(約330円、約250円)に比べ4~6割高い商品もある。この価格差が、少ない客足をカバーする原資となる。



 もちろん、約180世帯ある奥共同店の常連客は、最も近い都市部である名護に行けば、もっと安く買い物ができることを知っている。だが、現実には行かない。
 共同店の利用者の中心である高齢客はほぼ、車を持っていないからだ。名護へ行くには唯一の公共交通機関であるバスを利用せざるを得ず、往復で3時間はかかる。その手間を考えれば多少高くても共同店で買い物した方がはるかに楽なのだ。

■“おばあ”のために若者も買う
 それに共同店で買い物すれば、掛けで支払いができる。ルール上は月末締めだが、最大12カ月の猶予が可能。現金収入が少ない高齢者には使い勝手が良く、2カ月に1度の年金支給日に払う人もいれば、年末年始に帰省した子供が一括で払うケースもあるという。
 注目すべきは、奥に暮らす若者たちまでも共同店を利用するケースが多いことだ。若者はクルマを持っており、その気になれば名護へ毎日でも買い物に行くことができる。「だがそれをしてしまうと、“おじい”や“おばあ”が買い物難民になってしまうことを、彼らは十分理解している」と、共同店の歴史に詳しいやんばる・地域活性サポートセンターの比嘉明男理事長は説明する。
 確かに、住民は多少割高な買い物をせねばならず、納入業者は遠路はるばる物資を運搬する必要があり、店は大きなもうけは望めない。しかしその分、全国屈指の過疎地でありながら誰一人、買い物難民にならず、納入業者は経営が安定し、共同店は永続し雇用を維持できる。
 「みんなが少しずつ我慢することで、みんなで生きていくシステム」。沖縄の地域創生に携わるコンサルティング会社、カルティベイトの開梨香社長は、共同店のあり方をこう表現する。そんな助け合いの精神を沖縄では「ゆいまーる」と呼ぶ。



 みんなが経済合理性を追求したからといって、社会全体が合理的になると限らない。むしろ発想を転換し、それぞれが利益を過剰に追求せず助け合えば、社会の生産性はかえって高まり、成熟社会でも企業の存続や生活レベルの維持が可能になる──。そんな教訓が、沖縄の共同店の事例からは学び取れる。