その有名な寺院では5年に1度、
修行僧の見直しがありました。
そこで成績の悪いごく一部の者は、
修業からはずされ、寺院を去ることになっていました。
***
ここに、自他ともに認める優秀な若い僧がおりました。
誰よりも勤勉で師の教えに忠実であり、
身を粉にして日々の仕事もこなしていました。
謙虚で、敬虔で、静かなたたずまいの者でした。
***
その秋の初め、
修業からはずされる者の通達がありました。
ところが驚いたことに、
あの優秀な修業僧もそれに入っていたのです。
彼は驚きとりみだし、師のもとに駆けつけました。
そしてひざまずくと涙ながらに言いました。
「なぜですか?
私は師を心から敬愛し、信頼し、そして・・・」
あまりの動揺に弟子は言葉に詰まります。
師はまっすぐに弟子に向かって言いました。
師はまっすぐに弟子に向かって言いました。
「そして・・・?」
弟子はぐちゃぐちゃな感情にあおられて、
その続きを話せません。
「もちろんしていますとも!」
弟子はボタボタ泣きながら答えます。
「そなたはわしが命令したらなんでもするじゃろう」
師は静かに、そして確信をもって言いました。
「もちろんですとも!」
弟子は懇願するように答えます。
すると師は悲しそうに首をふり、
弟子はボタボタ泣きながら答えます。
「そなたはわしが命令したらなんでもするじゃろう」
師は静かに、そして確信をもって言いました。
「もちろんですとも!」
弟子は懇願するように答えます。
すると師は悲しそうに首をふり、
ため息をついて続けました。
「だからじゃ。
だからこそ、わしはそなたを失格と決めたのじゃ。
尊敬してもかまわん。
尊敬してもかまわん。
じゃが、崇拝してはいかんな」
「なぜですか?!」
弟子は納得できず叫びました。
「崇拝は盲信となるじゃろう。
そなたは自らの目を閉じ、
「なぜですか?!」
弟子は納得できず叫びました。
「崇拝は盲信となるじゃろう。
そなたは自らの目を閉じ、
自ら考えず、
弟子は師の衣に触れようとしましたが、
その指先は震えるだけでした。
師はなぐさめるように言いました。
「それが悪いんじゃよ。
そなた自身が自分の道を選び、
弟子は悲愴な顔で師を仰ぎ見ます。
けれど何も言えません。
師は弟子を愛おしそうに見つめ、
最後の言葉を投げかけました。
「これ以上わしに言わせんでくれ。
そなたを失格とすることは、
呆然と師の後ろ姿を見送りました。
落ち葉が降り始めた、
落ち葉が降り始めた、
秋の初めのことでした。