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キラキラこぼれる朝光の森の雪道を、
狩人は急ぎ歩いておりました。
彼には周りの清々しい空気も、
滴る美しい雫も目にとまりません。
ただ一つだけを見ているのです。
それはあの鹿のことでした。
彼はつぶやきながら考えました。
「村の連中がやって来る前に
オレがなんとしても捕まえるんだ。
待てよ、
捕まえてオレはどうするつもりなんだ?
そうだ!
見世物にして金をとるのがいいかもしれねぇ。
そうか!
そうすればあいつを殺したりしなくてもすむ。
なんだかんだいって、あの鹿はオレの命の恩人だ。
…そうは言っても生きものなんざ、いつか死ぬ。
そしたらあの皮を剥いで売ろう。
あの真っ白な角も売るんだ。
そりゃあ法外な値がつくはずだ。
オレが世話して、オレが主人で、オレが金をとる!」
狩人はほくそえみました。
チリン。。。チリーン。。。
どこかで銀貨が鳴りました。
チャリン。。。チャリーン。。。
どこかで金貨が鳴りました。
けれども時間はあまり残っていません。
村の方からラッパの音が近づいてきます。
犬たちの血気盛んな吠え声が聞こえてきます。
けれども時間はあまり残っていません。
村の方からラッパの音が近づいてきます。
犬たちの血気盛んな吠え声が聞こえてきます。
*
太陽と風が通り抜け、
彼は息をのんで立ちすくみました。
あの白銀の鹿がいたのです。
狩人はうれしくなって、思わずニタリ、笑いました。
鹿は凛と立ち、真っ直ぐ狩人を見つめています。
罠にかかった動物は、激しくもがき、唸り、
血だらけになってあえぐものです。
それなのに白銀の鹿は、静寂そのものでありました。
あの白銀の鹿がいたのです。
狩人はうれしくなって、思わずニタリ、笑いました。
鹿は凛と立ち、真っ直ぐ狩人を見つめています。
罠にかかった動物は、激しくもがき、唸り、
血だらけになってあえぐものです。
それなのに白銀の鹿は、静寂そのものでありました。
犬たちの吠える声が近づいています。
「いい子だからよ、おとなしくしているんだぞ…」
「いい子だからよ、おとなしくしているんだぞ…」
彼は小さくつぶやくと、ポケットから荒いロープを取り出して、
鹿のそばに寄ろうとします。
すると鹿は声なき言葉で言いました。
「それはあなたの何なのですか?」
「なんだって?!」
狩人は歩みを止め、焦りながらも、
どうにかセリフを考えました。
「おまえ・・・。
「おまえ・・・。
これはオレの愛なんだよ。お前を守ってやるからよ」
彼はつくり笑いをし、
心の中には金貨がたくさん貯まっていきます。
チャリンチャリーン・・・チリンチリーン・・・。
心地よい音が響きます。
そうこうしている間に犬の吠え声はかなり近くにやってきました。
ターン・タターン!
何か獲物に発砲するのも聞こえてきました。
狩人は急いで鹿の目の前に立ちました。
すると…。
「あなたの思う愛はよくわかりました」
鹿は無言で伝えてきました。
狩人はロープを広げ、
鹿の首に巻きつけようとしゃがみました。
ところがどういうことでしょう。
白銀の鹿は罠のすぐ脇に立っているだけで、無傷なのです。
狩人の額に汗がにじみます。
ウーーーー!
ワワワワワン!!
犬たちの息遣いさえ聞こえてきました。
「オーイ!あっちに何かいるらしいぞー!」
男たちの呼び合う声が響きます。
狩人は、鹿を力づくで捕まえるしかないと、思いました。
彼の手は汗ばみ、呼吸は浅くなり、
身震いすると、いきなり鹿に抱きつきました。
―――ヒラリ。
「オーイ!あっちに何かいるらしいぞー!」
男たちの呼び合う声が響きます。
狩人は、鹿を力づくで捕まえるしかないと、思いました。
彼の手は汗ばみ、呼吸は浅くなり、
身震いすると、いきなり鹿に抱きつきました。
―――ヒラリ。
鹿は狩人を飛び越えました。
そして数歩離れた場所で、振り返って彼を見ました。
思わず彼は怒鳴りました。
「お前、オレのことを愛しているって言ったじゃないか!」
かなり近くの銃声です。
でもまだ見つかってはいないようです。
それでも鹿はおびえることなく、
狩人に伝えてきたのです。
「私の愛がどういうものか、もう一度あなたに教えてあげます」
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