この物語はツルの祭典1:
http://ameblo.jp/izumiutamaro/entry-11711678210.html
の続きです。

 

 


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太陽が向こうの峰から顔を出した時、
西の風と南の雲がやってきました。

 

 

 

 

 
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彼らはツルを見下ろしました。
ツルは濡れた瞳で見上げました。
 
 
 


冬の精霊が支配する大気に、
お日様の光が砕けたような、
氷のかけらが舞っています。





「おはよう!」西の風と南の雲が上機嫌に言いました。
 
 
 


「おはようですって? 
私はこんなにふさいでいるのに」

ツルは不機嫌につぶやきました。




「あなたの望みを知っている」
西の風が陽気に言いました。




「それにしてもあなたのダンスはおもしろい」
南の雲が歌うように言いました。
 
 


「それで、我々はあなたと共に旅をしようとやって来た」
風と雲が口をそろえて言いました。




「それはどういうことなのかしら?」
ツルは不思議そうに訊きました。




「ツルの祭典へ行こうと誘っている。あの谷へ!」
風と雲が力強く言いました。
 
 
 

ツルは再び泣きました。
今度は感謝の涙でした。
 
 
 
 
 
 
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風のない冷気を舞っていた氷の破片は消え、
その奥で、青い青い空が笑っていました。




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ツルの祭典が開かれる特別な谷は、
世界で一番高い山の、
その中腹にありました。
 
 
 

高い峰を越え、雪嵐を通過し、
孤独な旅を何日も何日もする遠い場所です。
 
 
 


ツルはそんなことは知りません。
彼女にとって初めての長旅でした。
 
 
 
 

「あたしもうダメ、飛べないわ」
すぐに弱気で泣き出しました。



吹雪の中を飛んでいました。
 
 
 


すると西の風が言いました。
「そうだね、あの谷には銀色に凍りついた草むらがある」
 
 


「銀色に凍りついた草むら? 
あたしそれが見てみたい」
ツルは再び上昇しました。
 
 
 


また何日か飛びましたが、
ツルは涙声で言いました。
 
 
 

「あたし・・・やっぱり無理みたい。
だってだって遠すぎるもの・・・」
 
ツルは凍えた上に空腹でした。





すると南の雲が言いました。
 
 
 

「あの谷の川は半分が流れているが、半分は凍っているんだ。
その凍った半分が白銀に光った舞台だよ」





「白銀の舞台?」
ツルの心は惹かれました。
「あたし、そこで踊ってみたい」





「そうこなくちゃ!」
西の風が言いました。
 
 
 


「あと7日はかかるけどね」
南の雲がこっそり言いました。
 
 
 
 

けれどもそれは幸か不幸か、ツルには聞こえませんでした。
 
 
 
 
 
 
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***
 
 


西の風は正しい方角を指し示し、
南の雲は疲れたツルをそっと支えて、
とうとう神聖な谷にやって来ました。
 
 
 


最後の峰を越えた時、たくさんのツルが集まる、
白い白い谷が見えてきました。
 
 
 
 
 
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物語は次に続きます。
ツルの祭典3