※この物語は、生まれながらに不安障害を持った男が、2018年頃から現在に至るまでに辿った『実話』である。

 

 

 なおプライバシーの関係上、全ての人物は偽名とする。

 

 〈前回のお話〉




 

《第22話 よっしゃー!》

 

(やった……やった!)

 

 ホテルから駅まで歩く最中、俺は物凄い高揚感を感じていた。

 

 スキップしてしまいたくなるほど嬉しかった。

 

 かたちはどうあれ、時間はどうあれ……。

 

 人生で初のバイトを終えたという達成感のお陰で。

 

(よし、よし、よし……)

 

 今まで下から見ていたものを、上から見ているような感覚がした。

 

 すれ違う人も、建物も、いつもより小さく見える。

 

(あ、そうだ)

 

 俺はスマホを出して、母にメールした。

 

『バイト決まりました。今日、初日を終えました』

 

 すぐに返事が返ってきた。

 

『おめでとう! その調子で自立していきましょうね』

 

 読んで、笑みが零れてしまったのが分かった。

 

 もういろんな人に言いたかった。

 

『人生初のバイト初日を終えました』の号外をその辺にバラまきたい気持ちだった。

 

 様々な障害を越えて、無敵になった気分。

 

 同じようなパターンを、なにかの漫画で見たな……。

 

 なんだっけ……。

 

 あ、そうそう。

 

 ドラゴンボールだ。

 

 悟空とベジータが合体して天下無敵の戦士になった時、こう言ってたな。

 

(よっしゃー!)

 

              【第23話に続く】