※この物語は、生まれながらに不安障害を持った男が、2018年頃から現在に至るまでに辿った『実話』である。

 

 なおプライバシーの関係上、全ての人物は偽名とする。

 

〈前回のお話〉





 

《第7話 バンジージャンプの今どこ?》

 

「清掃、清掃が良い……」

 

 帰宅後、俺はタウンワークのアプリで近くのバイト先を探していた。

 

「ケッコーあるけど、うーん、でもなあ……」

 

 なかなか踏み出せない。でも、

 

「渋谷駅前で歌うのなんてもっと嫌だっての……」

 

 特に考えず、俺は検索トップにあった清掃のバイトをタップ。

 

「Cホテルの清掃……。行くぞ……」

 

 スクロールして下のほうにある『応募』のボタンに辿りつく。

 

「くっそー、押せねえ……」

 

 どうしても押せない……。

 

 バイト中に倒れたらどうしよう。

 

 ワイパックス、ホントに大丈夫?

 

 そもそも面接で倒れたら?

 

 倒れてまた前のように辛辣なこと言われたらどうする?

 

「押せない……」

 

 どうしても『応募』のボタンを押せない……。

 

「あー、もうどうすりゃ良いんだよ~」

 

 と、ここでモンストから通知が来た。

 

 その通知を消すため画面をスワイプしようとした時だった。

 

「あっ!」

 

 ここ数年で一番デカい声を出したと思う。スワイプしようとした親指の根元が『応募』のボタンを押してしまったのだった。

 

「ああああああああー!」

 

 スマホの画面は『応募ありがとうございました。二、三日以内に応募先から連絡が来なかった場合、お問い合わせください』を表示。

 

 間もなくメールが来た。

 

《応募ありがとうございます。採用担当の山田です。近日中に担当から連絡させていただきます。よろしくお願いいたします》

 

「やっちまった……」

 

 俺は今、空中に居る。

 

 

             【第8話に続く】