循環型の世界を凝縮したような構造で、この宇宙貨物船は成り立っている。

汚水でさえろ過され、再利用される完全自給の船だ。

 

定期航路を航行していたある日、人が住んでいないはずの星からSOS信号を受信した。

放っておくわけにもいかず、予定外の寄港を決めた。乗組員は私と愛犬ポチだけ。決断は早い。

 

信号を追って着陸すると、大破した船のそばで宇宙服姿の美女が倒れていた。

酸素が尽きかけていたが、船に運び込むとすぐに蘇生し、開口一番こう言った。

 

「お腹が空いて死にそう。何か食べさせて」

 

礼のひとつもない。だが、この船にはバイオテクノロジーの粋を集めた培養肉製造機がある。

二人分の肉ならすぐに作れる。

私は出来立ての生肉を少しだけ“次の培養用”に残し、残りを二等分してステーキにした。

焼き加減はミディアムレア。宇宙で新鮮な牛肉が食べられるとは、いい時代になったものだ。

 

彼女は自分の分を瞬く間に平らげると、私の皿をじっと見つめてきた。

その視線は「当然、くれるわよね?」と言わんばかりだ。

 

まあ、また培養すればいい。

「半分食べる?」

そう言って差し出すと、彼女は当然のように受け取った。

「助かったわ」と言うかと思ったが、そんな気配は一切なかった。

 

その夜、一室しかないプライベートルームを彼女に明け渡し、私は通路で寝袋生活に突入した。

彼女は当然のように部屋へ入り、当然のようにドアを閉めた。

 

翌日。

船内に漂う、妙に香ばしい匂い。

 

嫌な予感しかしない。

 

厨房へ行くと、彼女が電子オーブンの前で腕を組んでいた。

冷蔵庫に残しておいた“培養の元”の生肉を、全部ベリー・ウェルダンにしていた。

 

「ちょっと!勝手に触るなって言ったよね!」

 

私が怒ると、彼女は眉ひとつ動かさず言った。

 

「だって、お腹すいたんだもの。培養できるんでしょ? 何が悪いの?」

 

悪いに決まっている。

元となる生肉がなければ、もう増やすことはできないのだ。

 

そのことを説明すると、彼女は逆ギレした。

 

「そんな大事なこと、最初に言わなかったあなたが悪いわよ。

私は毎日肉が食べたいの。わかるでしょ?」

 

わからない。

だが、美人は自信満々で間違えるから厄介だ。

 

その日から私はベジタリアン生活を強制され、彼女の機嫌は日ごとに悪化していった。

「肉がないとイライラする」と言いながら、私の食事にまで文句をつけてくる。

 

そして今日。

犬嫌いと言っていたはずの彼女が、なぜかポチにドッグフードを与えていた。

妙に優しい声で、妙に近い距離で。

 

ポチは尻尾を振っている。

彼女は、じっとその様子を見つめていた。