福島県田村郡三春町(旧庚申坂遊郭)③ | お散歩日記

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路地裏、バラック、長屋、昭和の香りがする飲食街、遊郭赤線跡地、廃墟、古い町並み、山奥・・・・そんな場所を訪れては下手糞な写真を撮っております。

旧庚申坂遊郭(庚申坂新地)を題材にした物語遊郭怪異話が面白かったので、現地で撮影した写真と共に引用します。




















むかしむかし、旧庚申坂遊郭の近くに空き家がありました。

「空き家のままでは、もったいない」

遊郭の大家さんが、貸し家(かしや)のふだをはると、すぐに借りる人がみつかりました。

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ところが二、三日すると、大家さんにあいさつもなく、借りた人がでていってしまいました。

また、空き家です。

大家さんがあらためて、貸し家のふだをはると、今度もすぐに、かりる人がみつかりました。

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ところがまた、二、三日もすると、借りた人が、黙ってでていってしまいました。こうしたことが、何度もくりかえされるので、


「いったい、どうしたわけだろう?」
 

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大家さんがくびをひねっていると、

「なんだ。大家さんのくせに、しらないのかい。毎晩、女郎の幽霊がでるってうわさだよ」
 
通りがかりの人が、教えてくれました。

うわさは、町中にひろがりました。

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こうなると、かりる人もいません。
 
大家さんがこまっていると、町で一番度胸のいい男がやってきて、

「おれが、女郎の幽霊をみとどけてやろう」

と、空家にとまることにしました。
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男がざしきのものかげにかくれて、女郎の幽霊があらわれるのをまっていると、家のおくのほうからミシッ、ミシッ。
 
あやしげなもの音がしたかとおもうと、長い髪をみだした女郎の幽霊があらわれて、いろりのふちにすわりました。

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女郎の幽霊は、いろりの灰をかきまぜながら、

♪かきまぜる灰は
♪はまべのいろににて

と、いって、なきだしました。

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それを、何度もくりかえすので、ものかげの男は、

(これはきっと、歌の後ろ半分ができないために、毎晩でてくるのだろう)

と、かんがえました。
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そこで、幽霊がまた、

♪かきまぜる灰は
♪はまべのいろににて

と、いったときに、すかさず・・・・

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♪ゆるりが海か 
♪おきのみゆるに 
 歌の後ろ半分を、いってやりました。

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すると、幽霊は、安心したらしく、

「いいうたができて、これでもう、心残りはありません。どうもありがとうございました」

お礼をいってきえ、二度とあらわれなかったそうです。

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