《曲目解説①》2/10（土）いずみシンフォニエッタ大阪第51回定期演奏会

2024年2月10日（土）16時開演、いずみシンフォニエッタ大阪第51回定期演奏会「和洋感応 —愉悦の流域」が近づいてまいりました。

公演プログラムに掲載いたします楽曲解説を４回に分けてご紹介いたします。

初回①では川島素晴プログラム・アドバイザーによる序文と1曲目「シンプル・シンフォニー」の解説を掲載いたします。

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西村朗音楽監督により「和洋感応―愉悦の流域」と銘打たれた本日の公演。　
前半は、西洋クラシック音楽を代表してブリテンの初期の代表作と、日本の若手作曲家を代表して冷水乃栄流の委嘱新作を対峙させる。ブリテンの作品は1923年作曲の作品などを元にしており、ちょうど一世紀の時を経ている点も注目だ。
後半は、日本を代表する作曲家一柳慧が西洋現代音楽代表であるアンサンブル・アンテルコンタンポランの委嘱に応えた作品と、今や最も国際的に活躍する中堅作曲家となった藤倉大が三味線と西洋室内管弦楽を邂逅させた協奏曲を聴く。
かくして様々な観点で「和洋感応」を味わうこと、そしてその対比やヴァラエティに愉悦をおぼえ、各作品の時間が相互に浸透し合う流域を感じる。そのような意図だったのだろう。（「流域」は、一柳慧作品の題名「タイム・カレント（時の流れ）」が踏まえられているだろうし、ともすれば冷水氏の名前も意識したのかも？）
　西村本人も我々も全く意図していなかったこととして、冒頭に献奏する西村朗を含めて、関西出身の約20年ごと4世代の作曲家が並ぶこととなった。そして、そこにブリテンも加えるなら、ブリテン（1913-1976）、一柳慧（1933-2022）、西村朗（1953-2023）、藤倉大（1977- ）、冷水乃栄流（1997- ）と、1910年代から1990年代まで20年代刻みでの並びとなっている。ともすれば、自身より上の2世代、下の2世代への眼差しをもって、このような並びになっていたのかもしれない。その狭間に、「愉悦の流域」を感じ取っていたのかもしれない。
本日は、故・西村朗音楽監督になりかわり、その流域に身を委ねて頂きたい。

◆ベンジャミン・ブリテン：シンプル・シンフォニー op.4
ベンジャミン・ブリテン（Benjamin Britten, 1913-1976）は、20世紀のイギリスを代表する作曲家である。アメリカでは同世代にジョン・ケージ（John Cage, 1912-1992）がいることと対照的に、新古典主義的な作風を貫いたが、一方で透徹した和声語法や卓抜なセンスにはブリテンの独自性を強く感じさせ、個人様式を超えてイギリス的な音感を代表する存在となっている。
《シンプル・シンフォニー》は、1933年から翌年にかけて、最初期（1923年から1926年、つまり10歳から13歳！）に書かれた複数のピアノ曲を元に弦楽合奏（あるいは弦楽四重奏）に編曲したものであり、後年の独自性には至っていないものの、ウィットに富んだ楽想には既にその萌芽がみてとれる。楽曲の題名が「Simple Symphony」と頭文字が共通する2語によるネーミングになっているが、各楽章の題名も、頭文字が同じ語を並べた言葉遊びになっている。こうした点にも、ブリテンらしさの片鱗が現れている。
第１楽章「Boisterous Bourrée / 騒々しいブーレ」
第２楽章「Playful Pizzicato / おどけたピツィカート」
第３楽章「Sentimental Sarabande / 感傷的なサラバンド」
第４楽章「Frolicsome Finale / 愉快なフィナーレ」
　ソナタ形式、スケルツォ、緩徐楽章、フィナーレという定番フォーマットでその名の通りシンプルにまとめあげた佳品であり、弦楽合奏の重要なレパートリーとして定着している。