いよいよ今週末に開催する
いずみシンフォニエッタ大阪 藤倉大のこんな音楽、いかが?「クラウゼを聴こう!」公演。
当公演で演奏する5作品のうち、2作品は世界初演、2作品は日本初演となります。
世界初演となるジグムント・クラウゼ作曲〈ピアノと管弦楽のためのコンチェルティーノ〉のソロ演奏を担当するピアニストの北村朋幹からのメッセージは前回のブログ でお届けしました。
続いて、藤倉大作曲〈ファゴット協奏曲〉アンサンブル版のソロ演奏を担当するファゴット奏者の中川日出鷹 からも世界初演に向けて、作品についてや、初演に向けての熱い気持ちが綴られたメッセージが届きました!
藤倉 大『ファゴット協奏曲』アンサンブル版(世界初演)
ファゴット協奏曲は、無伴奏作品の《Calling》と姉妹作《Following 》が核となって展開する。この無伴奏作品のそれぞれの性質は、言うなれば、《Calling 》が「動」《Following》は「静」であろうか。ファゴット協奏曲では、それらの独奏の性質を受けて、大きな有機体が反応するかのように、響きや身振りが全体に伝播していく。
室内楽版ではその反応の一つひとつが鮮明になる。一人ひとりの奏者の音色や表情が多彩な連鎖を生み出すことで、それが対話となる。いずみシンフォニエッタ大阪の方々との間にどのような対話や音楽が生まれるのか楽しみのひとつである。
無伴奏を核とし、その響きや身振りをアンサンブルへと拡張していくこの作品の在り方から、ルチアーノ・ベリオの《Sequenza》と《Chemins》の関係を想起する。《Sequenza XII》はファゴットという楽器の歴史において重要な位置を占める作品である一方、独奏とアンサンブルのための《Chemins》は他の楽器を中心に展開されている。藤倉氏の作品では、無伴奏、室内楽、オーケストラという異なる編成を通して新たな響きを形づくる。
作品の中では太古の歌を仰ぐような空間が現れたり、リズムが少しずつ編み替えられていくうちに別のネットワークが現れたりする。時には雅楽のようなハーモニーが音と音との境界を曖昧にしたり、それぞれの響きが変化する様子は映像を見るようである。
2012年、パスカル・ガロワによる《Calling》のパリ初演をポンピドゥセンターで聴いた。この日の公演はアンテルコンタンポランのソリストによるファゴットの独奏が二曲も並んでいた。当時、学生で青春を現代音楽に捧げていた私にとって垂涎の公演であったことはもちろん、客席にはピエール・ブーレーズ氏の姿も見られ藤倉氏の新作初演は、やはり高い関心を集めていた。
初演独特の未知の音楽への期待とパリの音楽家達の知性の漂う空気を破るように、ファゴットの重音が一閃した。《Calling》という題名からの連想もあり、演奏からは電話のベルがけたたましく鳴るような機械的な音の印象を受けた。その鮮やかな音に惹かれながらも聴き進めるうちに、この楽譜の背景には、いま耳にしている音とは別の響きや意味も広がっているように感じた。そして、その一端を自らの手で演奏して掬ってみたいと思った。これがこの作品との初めての出会いであり、その後に何度も演奏重ねるうちに次第に身体に馴染み、新たなインスピレーションが広がり続けている。
《Calling》の初演から十数年を経て、藤倉氏のファゴットのための作品の数々は私にとってはもちろん、ファゴットという楽器にとって重要なレパートリーとなっている。今回のファゴット協奏曲室内楽版の世界初演は、私にとって学生時代からの憧れである、いずみシンフォニエッタ大阪の方々との共演という夢のような機会です。このような機会を頂き本当に感謝しております。
中川日出鷹
音楽監督・藤倉大の世界初演作品を、メンバーでもある中川日出鷹がソロを担当し、いずみシンフォニエッタ大阪とアンサンブルを創り上げる。まさに、楽団が総力を挙げてお届けします。
お聴き逃しなく!
◆いずみシンフォニエッタ大阪 藤倉大のこんな音楽、いかが?「クラウゼを聴こう!」
【日時】2026年10月3日(土)16時開演
【出演】松井慶太(指揮)/北村朋幹(ピアノ)/中川日出鷹(ファゴット)
いずみシンフォニエッタ大阪
※公演の詳細は、こちら。