住友生命いずみホールのブログ

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ホールでの出来事や主催公演の詳細&裏話、インタビューや解説など幅広い情報を発信します。

こんにちは 企画担当です黒猫あたま

 

8月17日(月)~19日(水)に住友生命いずみホールでは「室内楽マスタークラス」を開催。プロの演奏家を目指す若者が住友生命いずみホールに集まります。

講師に、世界中で活躍するピアノ三重奏団、葵トリオを迎えます。

葵トリオによる室内楽マスタークラスは、前回2023年に実施。今回で2回目の開催です。

 

マスタークラスでは、葵トリオと共に演奏しながら室内楽を学ぶ「Inside AOIコース」と、

既存のアンサンブルが葵トリオの指導を受けることができる「Lesson by AOIコース」の2つのコースを開催。

3日間のリハーサルを通じて、曲を創り上げていきます。

 

2023年の成果発表会の様子 🄫樋川智昭

 

マスタークラスの受講生は募集を終了していますが、レッスンの聴講生と最終日の成果発表会の参加者を募集しています。

葵トリオによる室内楽演奏を創り上げていく現場を見ることができるまたとない機会です。

第1日目(8月17日)と第2日目(8月18日)の聴講は定員に達しましたが、3日目(8月19日)、リハーサルの聴講生をただいま募集しています。

 

レッスンの聴講は有料、成果発表会は無料で、事前にお申込みが必要です。

申込方法はホームページよりご確認ください。

 

葵トリオ室内楽マスタークラス リハーサル

葵トリオ室内楽マスタークラス 成果発表会

 

是非みなさまお越しくださいパー

 

 

住友生命いずみホールへお越しになられたことのある方は、このメロディに聴き覚えがあるのではないでしょうか。

 

 

私達のホールは、開館以来ずっとこのパイプオルガンの音色で開演5分前をお知らせしています。

この1ベル音の演奏、実は、オルガニストの鈴木雅明さんの即興演奏なのです。

開館前、パイプオルガンの整音をお助けくださるために来館された鈴木雅明さんが即興で演奏したものを使用させていただいています。先日のJupiterインタビューの際にも当時のエピソードを鈴木さんは懐かしそうにお話くださっていました。

1ベルをパイプオルガン演奏でお知らせしているホールは珍しいのではないでしょうか。住友生命いずみホールにお越しの際には、是非1ベルにも耳を澄まして聴いてみてくださいベルベル

 

そして、1ベル音だけではなく、鈴木雅明さんの演奏をたっぷりとお聴きいただけるパイプオルガン・リサイタルを

9月4日(金)の14:00に開催いたします。

 

©Marco Borggreve

 

平日の午後に、本格的な演奏をお届けする「午後の特等席」の第10回公演に満を持して登場します。

バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)を率いて、幾度となく住友生命いずみホールには出演していますが、パイプオルガン・リサイタルを開催するのは、なんと21年振り!!

J.S.バッハのクラヴィーア練習曲集第3部を披露します。

〈プレリュードとフーガ〉BWV552と、4つデュエットに加えて、10曲のコラールを演奏。

10曲のコラールは、基になった原曲コラールの歌唱(ソプラノ+オルガンによる演奏)とオルガン独奏を交互にお贈りする予定です。ソプラノ歌唱は、BCJのメンバーであり、鈴木雅明さんが信頼を寄せる松井亜希さんが担当します。

 

公演チケットの残席が少なくなって参りました。

お求めの方がお早めにウインク

 

◆午後の特等席Vol.10 鈴木雅明 パイプオルガン・リサイタル

 【日時】2026年9月4日(金)14:00開演

 【出演】鈴木雅明(パイプオルガン)/松井亜希(ソプラノ)

 【曲目】《クラヴィーア練習曲集 第3部》ペダル付きコラール全曲

 【料金】一般=¥5,000 U-30=¥2,000

 ※公演の詳細は、こちら。

 

 

 

こんにちは。《ウェルテル》担当です🐧

 

8月3日、8月8日(土)の本公演に向けて、《ウェルテル》トークイベントを開催しました。ご来場いただきました皆様、ありがとうございました。

 

お話しは、本公演の指揮・プロデュースを務める佐藤正浩さん。《ウェルテル》という作品を、さまざまな角度からひもといていただきました。

 

 

トークは、原作の小説をオペラという舞台作品へ「ドラマ化」するうえで、大きな役割を果たした台本作家たちの仕事から始まりました。

続いて、マスネの「魔術的な手法」について。ワーグナーの「ライトモティーフ」を応用し、「役柄」「特定の記憶」「特定の感情」を描くことで登場人物の「本音」を代弁するという、心理描写の役割を果たす巧みなオーケストレーションについてです。

聴きどころや、ウェルテル、シャルロット、アルベールの人物像を解説しながら、物語をたどっていきます。

前奏曲や間奏曲に現れるモティーフ、アリアの一節をピアノで示していただくと、マスネが音楽に託した人物像や、その場面での心の動きが、いっそう鮮明に感じられました。

「誰も悪くない。みんな、自分の信じる正しさに忠実に生きている。ところが、歯車がかみ合わなくなると、全員が傷つき、破滅へと向かってしまう。それが《ウェルテル》という悲劇です」(佐藤さん)

 

常に死の影がつきまとう《ウェルテル》のなかで、「光」の役割を担うのが、石橋栄実さん演じるソフィー。シャルロットの妹です。

「重厚な作品のなかで、ソフィーは明るい役なので、登場すると、お聴きになる皆さんにはほっと一息ついていただけると思います。その一方で、こうした明るい部分があることで、物語の悲劇性がいっそうくっきりするのかもしれませんね」(石橋さん)

イベントの最後には、第2幕のアリアを披露していただきました。

(ピアノ伴奏:森脇涼さん)

 

最後に佐藤さんは、客席へこう問いかけました。

「一見すると《ウェルテル》は悲劇です。けれど、マスネが作品に込めた本質は、人間がもつコントロールできない情熱の美しさと、それを抑え込もうとする理性の痛切な戦いです。

私たちは日常生活のなかで、社会のルールに従い、理性を保って生きています。けれど心の奥底には、もし許されるなら、すべてを投げ出してでも一つの情熱に命を燃やし尽くしたいという、危険な憧れが眠っているのではないでしょうか」

そして、

「マスネは、ウェルテルの狂気を美化するのでもななく、シャルロットの頑なさを責めるのでもなく、その両方の苦しみを、深い慈愛に満ちた美しい旋律で包み込んでいます。

だからこそ《ウェルテル》に触れると、私たちは人を愛することの尊さに心を動かされ、深い余韻を感じるのだと思います」

と締めくくりました。

公演は8月8日(土)14時開演です。
チケットは引き続き発売中です。

 

 

 

 

 

こんにちは。《ウェルテル》担当です🐧

毎日、暑い日が続いています。7月から、ソリストの音楽稽古が行われていて、いよいよ大詰めです。

 

稽古の合間に、出演者の皆さんに作品や役柄について感じていることを伺いました。

皆さんからまず出てきたのは、

テキストだけを読んでいると、会話がかみ合っていないように感じることがある。

というお話でした。

 

じつは、楽譜の冒頭にある「登場人物」の欄には、それぞれの年齢が明記されています。

 

・ウェルテル 23歳
・シャルロット 20歳
・アルベール 25歳
・ソフィー 15歳
・大法官 50歳

 

恋する若者たちは、「自分の世界、自分の思いが最優先」なのかもしれません。それゆえ、互いの距離感がどこかおかしく感じられることもあるのだとか。

 

前回の記事でご紹介した、「現代の価値観では測りきれない」部分ともつながりそうです。

 

 

そして楽譜を見ると、歌い出しには、表情やニュアンスについての細かな指示が書き込まれています。

 

もしかすると、マスネのなかには確固とした“ウェルテル像”“シャルロット像”があり、そのイメージに沿って歌い演じてほしいという思いがあったのかもしれない

 

そんな話も出ました。

 

稽古中も、役の人物はいま何を感じているのか。言葉は相手に向けられているのか、それとも心のなかの独白なのか。

一つひとつの場面を確かめながら、表現が磨かれていきます。

音楽稽古を見ていて、佐藤正浩さんが紡ぐテンポとフレーズの流れに乗りながら、それぞれのキャラクターを深めていく作業なのだと感じました。

テキストだけでは今ひとつ腑に落ちなかったところも、音楽が加わると、人物の感情として立ち上がってくる。

これこそ「オペラの魔法」。そして、「オペラの神髄は音楽」ということなのかもしれません。

今回の公演で目指している、音楽からドラマが立ち上がる「演奏会形式ならではのオペラ」にも通じますね。

ー・-・-・-・-

稽古場でのスナップをご紹介します。

 


シャルロット役の池田香織さんと、ウェルテル役の宮里直樹さん。


ソフィー役の石橋栄実さんと、アルベール役の甲斐栄次郎さん。


大法官役の妻屋秀和さん(右。後ろ姿で失礼します!)、

ジョアン役の内山建人さん、シュミット役の岡村武琉さん。


指揮・プロデュースの佐藤正浩さん。

 

SNSでは以前お知らせしていますが、2023年の「フランス・オペラに恋して」から、ウェルテルとシャルロットによる第3幕の二重唱をご紹介します。全幕のハイライトともいえる場面です。

 

【収録】2023年8月6日(日)「フランス・オペラに恋して」

 

この時のお二人の歌唱にも圧倒されましたが、今回の稽古では、二人の距離や言葉の向かう先まで、さらに細やかに掘り下げられています。8月8日、ウェルテル、シャルロットの思いはどんな風に皆さんの心に届くでしょうか?

 

 

 

 

こんにちは。《ウェルテル》担当です🐧

前回は、ゲーテの小説がオペラ《ウェルテル》となり、ウィーンで世界初演を迎えるまでの道のりをご紹介しました。

 

今回は、物語の中心となる三人――ウェルテル、シャルロット、アルベールに注目します。

あらすじは、チラシや公演ページにも掲載していますので、そちらをご覧いただくとして……。ここでは少し違う角度から。三人がどのような人物として描かれ、なぜその思いがすれ違ってしまったのかを見ていきましょう。

 

 

感情に生きるウェルテル

ウェルテルは、自然や詩を愛し、自分のなかに湧き上がる感情を何よりも大切にする青年です。

シャルロットに婚約者がいると知りながらも、思いを止めることができません。現代の感覚では、その行動はかなり危うく見えます。

けれども、原作が生まれた18世紀後半は、社会の秩序や理性に対して、個人の感情や内面が大きく注目され始めた時代でした。

ウェルテルは、抑えきれない情熱に身を任せる人物であると同時に、既存の秩序に収まりきらない「個人」の姿でもあるのでしょう。

愛している。それでも約束を守るシャルロット

シャルロットは、亡き母との約束を守り、弟妹を支え、アルベールと結婚することを決めています。

家族への責任、母との約束、社会のなかで果たすべき役割。それらを、恋のために簡単に投げ出すことはできません。

ここで興味深いのが、ゲーテの原作との違いです。

原作のロッテ(シャルロッテ)もウェルテルに深い情愛を抱いていますが、それが恋愛なのか、友情や同情なのかは、はっきりとは示されません。物語の大部分がウェルテルの手紙で語られるため、読者が見るロッテも、彼の目を通した姿だからです。

一方、オペラではシャルロットにも自分自身の言葉と音楽が与えられました。

第3幕、ウェルテルの手紙を読み返す場面では、彼女もまたウェルテルを愛していたことが明らかになります。

愛している。それでも、約束を守る。

その選択が、シャルロットを苦しめます。

悪役ではないアルベール

シャルロットの夫アルベールも、恋する二人を邪魔するだけの悪役ではありません。

婚約を守り、シャルロットとその家族を大切にしようとする、誠実で社会の秩序を重んじる人物です。三人のなかで最も常識的で、最も「正しい」人物とも言えるでしょう。

それでも、妻の心が別の男性へ向かっていると気づけば、平静ではいられません。

 

ウェルテルの情熱。
シャルロットの責任。
アルベールの秩序。

 

三人には、それぞれの立場と正しさがあります。しかし、それらが同じ方向を向くことはありません。

誰か悪役がいるのではなく、三人の生き方がどうしてもかみ合わない。そのすれ違いを、マスネの音楽は、ときに激しく、ときに息をひそめるように描き出します。

 

誰の思いに心を寄せるのか。あるいは、誰にも寄せきれないのか。現代の物差しでは測り切れない、三人それぞれの声に耳を傾けてみてください。

ー・-・-・-・-

次回は、稽古場の様子をご紹介したいと思います。