前回の記事はクルーグマン教授の公開した議事録から、クルーグマン教授部分は全文引用しました。とても全文読む時間は無いと思いますので、エッセンスを抽出してお知らせします。


 朝日新聞などの自称リベラルメディア(実際は経済右翼)は生活必需品でも無いくせに自分達新聞だけは増税の対象から外してもらったくせに、社説で将来のために消費増税の先送りはけしからんと言っているようであります。

 クルーグマンの意見にきっちりと反論してみて欲しいものです。無理に決まっていますが。



<クルーグマン教授の主張>

 第1は、「我々はいま、経済的な弱さの蔓延した世界の中にいる」ということです。多くの面で、我々はみな日本になってしまったのです。

 例えば、ユーロ圏はマネーをじゃぶじゃぶに流しても弱さが続いている。

 アメリカはましに思われるが、雇用は伸びたが、生産はたいした事がない。依然としてインフレは目標値以下だ。

何よりも、新興国経済が危ない。特に隣の中国だ。中国の投資主導型の経済モデルは爆発寸前で、今後経済を支える事は難しい。


 第2に、「主要経済大国どうしの結びつきが強まっている」ということです。

 主要経済大国のそれぞれは、GDPのほんの数%を他国へと輸出しているにすぎないのです。ですが、投資家たちの認識が「弱さがこれからも続きそうだ」という方へ傾くならば、そこからの影響はずっと大きなものとなるのです

 どの国であれ、その経済が比較的に強いとみなされたならば、その国は大量の資本の流入の受け手となりがちなのであり、それによって通貨は押し上げられる事になる。

 黒田氏があらゆる手(泉注:マイナス金利など)を尽くされているにもかかわらず、日本円が上昇したことは他の主要経済大国の弱さによって引き起こされたことなのです。


 第3は、「非常に大胆かつ非伝統的な金融政策(泉注:異次元緩和)を通じてさえ、目標を達成することが難しく思われるようになった」ということです。

 アベノミクスの「3本の矢〔金融政策、財政政策、成長戦略〕」のうち圧倒的に最大のものは、これまでのところは金融政策でした。黒田氏はこの重責の大部分を遂行なさいました。

 我々が目の当たりにしつつあるのは、金融政策の限界です。

 マイナス金利について、これは正しい動きであったと考えますが、しかし、マイナス金利の影響は限定的なものであることが明らかになりつつあり、これをさらに推し進めてゆくことは非常に難しいのです。


 第4は、「金融政策は財政政策の助けを必要とし、できればその他の諸政策の助けも必要とする。しかし、間違いなく財政面で必要とするのであり、反対方向へと動いている財政政策と格闘する必要はまったくない」ということです。

 過去7年間、財政政策は有効であり続けました。

 財政による支援よりも、長期的な予算問題(財政問題)を優先すべし、という考えは、今は極めて見当違いなものと私には思われます。私が申し上げておりますのは、言うまでもなく、消費税のことであります

 私が構造改革について何も申し上げなかったことにお気づきかと存じます。私が構造改革に反対であるからというわけではありません。そうではないのですが、需要を押し上げるという最重要課題からはだいぶ的を外れたものと考えられるからなのです。

 構造改革の話は、ときに、第一に差し迫った問題に対処しないための口実になることがあるということです。第一に差し迫った問題とは、十分な需要、デフレや低インフレとの戦い、不十分なインフレとの戦いといった、金融政策にかかわるものなのです。


 最後に、リスクは非対称であり、私が悲観的すぎて、実際は良くなる可能性もあるがより悪くなる可能性もあるのです。

 もし間違うならば、財政拡大的すぎたという方へ間違うことが非常に大事だということです。

アベノミクスの最初からの諸目標が今でも最重要なのです。デフレのサイクルから脱出することが「最重要目標」なのです。他の全て(泉注:消費増税など)はそれを待たねばなりません。

 

<討論部分>

(マイナス金利下での財政出動をすべきか?)

まさにそのとおり。第1に、財政による刺激策は、デフレ脱却の金融政策への一助として非常に重要であり、金融一本では難しい

第2に、金利が非常に低く、非常に低い借入コストと、実物への投資の機会に直面したならば、「これはまさに支出の好機である」

第3に、債務については安定した先進国が自国通貨で借入をしたならば、財政危機に至るまでは非常に長い道のりがあるということです。いまは財政バランスを心配すべきときではないのです。


(先進国が協調的に財政拡大する事はできるか?)

ドイツの場合、彼らはまったく別の知的宇宙に住んでいるのですから、それについて話をするのは非常に難しい。

米国の場合、オバマ大統領はインフラ支出の増大を好んでいるが、狂った議会のせいで難儀しています。私自身の国〔米国〕について言えば、大統領選が迫っており、なにか本当にひどいことが起こりかねません。


(資源価格の低下の経済への影響について)

資源価格の下落は、地政学的な展開を理解するという視点からは大ごとであり、世界の多数の人々にとって非常に重要なことであるのですが、我々が直面している先進諸国の問題としては、そこまで大きなものではない先進国で問題となっているのは需要の問題だからです


(EUの経済政策、通貨統合について)

フランスが自国通貨を持っていたら問題はありませんでした。まさにこの点については、あなた方〔日本〕はずっと強い立場にあります。

ヨーロッパの問題は、ユーロの問題を超えたところに行ってしまいました。いまやヨーロッパでは、難民危機が、経済問題を背景へ追いやってしまったのです。
G7のメンバーのうち、誰が本当に有効に動くことができて、かつ頭脳明晰であるように思われるかを言うとするならば、現在のところ、それは日本とカナダである、と私は考えます。