前のGDP速報値の記事でギリシャを取り上げ、「破たんの先延ばしではないか」と述べばしたが、EUの緊縮策受入れの是非をめぐる国民投票後の状況なども含めてお知らせします。


 緊縮策受入れ後の現在の状況はこちら (日経新聞8/15)をご覧ください。

 

 日本でも(見当違いの方向で)あれだけ大騒ぎしたギリシャの国民投票でEUの支援策(その代わりに緊縮策を受入れ義務あり)が否決されたにも関わらず、現チプラス政権は結局は支援策を受入れ、今月14日に3年間で最大860億ユーロ(約11兆9千億円)の金融支援(過去3回目)が決定した。

 しかし、それには日経新聞曰く「3つの課題」があるとしています。

 第1の課題は巨額に膨らんだ債務をギリシャが本当に返済できるか。

 IMFは過去2回の支援に加わってきたが、今回は参加を留保した。

  第2の課題は、ギリシャが支援の条件となる改革を約束通り実行できるか。

 EUは15年のギリシャの国内総生産(GDP)が前年比2.3%減、16年も1.3%減とマイナス成長を予測する。景気冷え込みが長引けば、増税や歳出カットなど財政緊縮策を計画通りに進めるのが難しくなる。


 第3の課題は改革の断行に必要な内政の安定だ。支援の正式合意を控え、追加の財政改革法案を可決した14日のギリシャ議会では、チプラス首相率いる与党・急進左派連合(SYRIZA)から40人超と過去最多の造反者が出た。「自殺の代わりに生き延びる選択をした」。「反緊縮」を掲げてきた首相は採決前の討論で、緊縮受け入れへ転換した理由をこう説明。なお緊縮策への反対姿勢を崩さない造反組を非難した。


 という事のようです。

 私はギリシャは当面の危機を回避しただけで、根本的な問題の解決には至っていないのではないかと考えています。なぜなら、ギリシャに緊縮財政を求めているためです。


 そもそものギリシャの経済破綻についての責任は、前にも書きましたが、ギリシャ自身だけでなく、2年に1度破たんするギリシャをユーロに入れた側にも責任があると思います。

 通貨統合というのは同じ程度経済規模の国同士で行えば互いにメリットがありますが、規模が違いすぎる場合、経済力の強い国と弱い国の格差が拡大する傾向にあります。

  

 経済力の弱い国にとっては、金融政策が自国で決められず、為替・関税といった障壁が無い一方で、今まで弱かった通貨が強くなり、借金がしやすくなります

 

 ギリシャはユーロ導入で今までより通貨が高くなり、また外国からお金が借りやすくなった事でドイツなどから輸入を増やし、国内産業は衰退し、気づけば借金が膨らんでいった。


 ドイツはユーロ導入で今までより通貨が弱くなった事で、まずはユーロ圏で輸出を増やし、ギリシャ危機からはユーロ全体の通貨安によってユーロ圏外での輸出を過去最高に増やして繁栄を謳歌しています。

 ノーベル賞経済学者のスティグリッツが「ドイツがユーロを離脱すべき」と言っている理由はここにあります。

 よく日本とドイツを比較して、ドイツは借金を発行しない素晴らしい国というおかしな意見がありますが、ドイツと日本ではドイツに金融政策の自由が無いという点で比較できません。


 ドイツとギリシャを正しく比較するなら、日本の東京がドイツで、夕張がギリシャという事になります、(夕張市は一時的な危機状態にあった時のたとえであり、現在夕張では堅実に財政再建中です)


 ドイツとギリシャが関税や為替の障壁が無く、単純に競争すれば、ドイツが勝つのは当たり前の話です。

 しかし、日本の場合は、「地方交付税」というものがあり、経済力の大きい中央から、経済力の小さい地方への財政移転もあり、地方にもある程度の財政の余裕が与えられます。

 しかし、ユーロにはそのような仕組みはありません。



 ドイツとギリシャは地方交付税の無い東京と夕張の関係だと言えるでしょう。


 現在ユーロ圏にあるのは、ユーロ加盟国の中で財政不安が出ないように、これ以上借金を増やしたらいけないという財政緊縮の取り決めだけです。

 

 以前、神戸新聞はユーロ圏が財政政策がバラバラなのが問題だと社説で書き、それに対して私は批判しました。

 神戸新聞がユーロ圏内の地方交付税制度の創設を言っているなら私の考えと同じため、訂正して謝罪します。

 しかし彼らはたぶん、もっと厳格な一律の緊縮財政の事を言っていると思います。それなら大間違いだ、とまた指摘しておきたいと思います


 ギリシャは過去5年間緊縮財政を続けてきました。現在の失業率は25%超と4人に1人以上となっています。

 緊縮した5年の成長率は2009年-4.4%、2010年-5.45%、2011年8.86%、2012年-6.57%、2013年 -3.90と常にマイナス成長です。


 これ以上、緊縮財政を続けてギリシャ経済が復活するとは私は全く思えません

 支援をするなら、経済成長が軌道に乗るまで支援しなければ、破たんの先送りで無意味になるのではないかと私は考えます。

 再び危機が表面化すれば次はイタリア、スペインに広がり、ユーロの崩壊につながりかねない。


 日本の東京と夕張と違って、ドイツとギリシャは違う国ですので支援が難しいというのが現状ではないかと思います。


 ドイツ人にとってはギリシャがダメなのは国民がさぼっているからだ等の感情的な意見が多数を占めているからです。ちなみに、ギリシャはドイツよりも労働時間の長い、先進国の中で2番目の国です。