本日、2泊3日の視察を終え、三木市に帰ってきました。

 

 今回の視察項目は以下のとおりです。


 1.熊本県山鹿市「認知症対策の取組」

 2.福岡県岡垣町「公共交通の再編」

 3.福岡県飯塚市「中心市街地活性化の取組」

  4.福岡県北九州市「リノベーションまちづくり事業」


 このうち、今日は北九州市の「リノベーションまちづくり事業」を取り上げます。他の項目については後日お知らせいたします。  


 北九州は民間主導のリノベーションによるまちづくりを行っている日本で最先端のまちです。   

 内閣府の地方創生で紹介されており私もそれを知って視察希望に上げました。  

 全国から視察に訪れており、今週は私達が3団体目だったそうです。  


 感想を先に言うと本当に勉強になりました!難しい課題はありますが、是非、三木市でも取り組みたいと感じました!  

 先月の本会議で私は民間主導で既存ストックを活かしたリノベーションのまちづくりを実施すべきだと質問し、当局から前向きな答弁を得ました。北九州で最先端の現場を見て学んだ事を活かせるようにこれから具体的に動いていきたいと思います。


 北九州市は鉱工業を中心に栄えたまちで、中心地の小倉地区には日本初の商店街があります。その商店街も高齢化や経済の衰退などで空き店舗が増え、地価も大きく下がった(10年で最大9分の1になったところもある)という課題がありました。


 それを逆転の発想で、「家賃が下がったら、若い世代が借りやすい店舗や、シェアハウス、ゲストハウスなどができる」という考えのもと、「民間主導で空き店舗をリノベーションして貸し出すという仕組み」が「リノベーションのまちづくり事業」です。


 その仕組みをもう少し詳しく説明します。  まず、行政が「小倉家守構想」という5か年計画を立ち上げました。  まずは3大学と連携し、全国的に有名なリノベーションの専門家の方と協議会を立ち上げました。 「家守」とは江戸時代における長屋の大家の事で、単なる家賃の収納だけでなく地区マネジャーのような仕事もしていた事から名づけられました。


 事業実施に関しては、まず、リノベーションに関して、まちづくりのプロデューサーを育てる「まちづくり編」と不動産オーナーを対象にした「不動産オーナー編」の2回のシンポジウムを行った他、不動産オーナーに対してヒアリングなどでリノベーション候補の抽出を行いました。


 その上で、リノベーションスクールという物を立ち上げました。


 リノベーションスクールとは、北九州の実際の空き物件を対象として、全国から集まった受講生が10人程度の「ユニット」というチームを組んで4日間でリノベーション事業プランを練ります。  そして最終日にそれを不動産オーナーに提案して、その提案を元に事業化を進めるというものです。  事業計画の策定を補佐するため、各「ユニット」には一人ずつ、リノベーションの専門家として「ユニットマスター」が付きます。


 今まで、リノベーションスクールは8回開催され(参加者500人超)、50を超えるの事業計画が作られ、そのうちなんと15案件もリノベーション事業が実現しています。これはもの凄い打率だと思います。

 民間の不動産オーナーの理解が得られて初めて事業化となる訳で、飛び込み営業で上手くいくものではありません。シンポジウムやヒアリングなどによるオーナーの掘り起しなど当局の苦労があったのだと思います。


 受講生の比率は建築家3割、学生2割、残りは行政関係(議員含む)という事です。


 その中で、行政の支出する経費としてはユニットマスターの委託料だけだと言う事です。


  しかも北九州市はリノベーションスクールを他市に教える立場(現在全国7自治体でリノベーションスクールが開設)として国の補助をもらっているので負担は実質ゼロになっているとの事でした。


 リノベーションを実際に行う主体はまちづくり会社である「北九州家守舎」(以下家守事業者)でこれは完全に民間事業者です。

 その事業スキームは次のようなものです。


 まず、空きテナントのオーナー(例:家賃16万円)に対して、家守事業者が安い賃料(例:5万円)で借りて、家守事業者の負担でリノベーション投資(例:350万円)を行います。

 リノベーションした物件にテナントを入れ、家守事業者が賃料(例:16万円)を得て、3年間で投資金額を回収するというものです。


 物件オーナーは投資金額を回収するまでの賃料は安いですが、ゼロ円だった物件に家賃が入るそして、自己負担なしで物件をリノベーションできるというメリットがあります。


 借りる側にとっては、これは後でまた説明しますが、実際のリノベーションでは1坪ショップのような細かく区切ったものもあり、そこは家賃1坪1万円で借りれるなど、おしゃれなリノベーション物件を安く借りれます


 市にとっては現在までに、385人の新規雇用(うち180人が若者を中心とした新規創業)を産み、商店街の通行量が1日3000人も増加するなど、まちの活性化に大きく貢献しています。  

 新しい店ができる事でリノベーション事業以外の新規の出店などプラスの相乗効果も出ているようです。


 まさに三方良しという事業であります。  


 今日は実際のリノベーション物件の現地視察も行ってきました。


 「メルカート三番街」と「ポポラート三番街」は先程少し触れたように、入居予定者の希望に基づき、小さな区画に分けた商業店舗で、マルシェなどで雑貨や衣料・アクセサリなどを出品していた若い女性に声をかけて出店した店舗が多く、1坪1万円/月など安い賃料で借りられます。


 ここは起業・創業のインキュベート施設の役割を担っているという事です。


 というのも、まず小さな店舗から初めて、そこでお客さんが付いたからそこを卒業して、広い敷地に移転するという事もあるようです。


 また、実際の売り上げはインターネットの方が多いという店もあるようですが、お客さんのニーズを把握できたり、今まで家で作業していたものが、作業場を併設するなど、出店する事で意識面で変化が生まれてくるという面もあります。


 実際、区画を細かく分けると、廊下などの共有部分が多くなって、家賃としては以前よりも下がりますが、オーナーの理解によって運営されている部分もあるようです。(それでも家賃ゼロよりは良いですし)


 他には、コンテナを改装したおしゃれなイタリアンバーや、リノベーションスクールの受講生が自ら立ち上げた書店などもあり、まちの魅力を高めています。


 最後に見せてもらったのは、レンタルオフィススペースの「秘密基地」という所です。


 昼間はレンタルオフィス(個室9室)、シェアワークスペース、会議スペースを月貸しや時間貸しで貸していますが、午後6時からは入場無料でバーのような形で若者が集う場になります。  

 若者中心にフェイスブックで拡散され、1年間で1万人が来ているという事です。


 まちづくりに役立ちたいという熱い気持ちの多業種の若者が多く、日夜語りあっているそうです。

 役所の方もここに行けば、そういう人と出会え、話合う事ができます。

 実際、市の主催イベントの運営に携わってもらったり、まちづくりに貢献してもらっているとの事でした。


 こういう場づくりは本当に三木市に必要だなと思いました

 

 前の議会で私は旅行者や地域の若者が集えるリノベーションによるゲストハウスの誘致をすべきと質問しましたが、ゲストハウスに限らず、こういう仕組みづくりを考えるのが私のこれからの仕事だと、思いを強くした次第です