ギリシャ問題はこれで最後にしますが、ヤフーニュースにギリシャ問題について面白い記事がありましたのでお知らせします。


6人の経済学者たちは「賛成」か「反対」か(リンク先はこちら)  

 ギリシャ危機は借金問題ではない。階級政治だ (こちらも後でお読みください)


 「賛成」「反対」はEUの提示した緊縮策と引き換えの支援に対する賛否です。以下抜粋して引用します


○ジョセフ・スティグリッツ―――「反対」

(ノーベル賞経済学者。コロンビア大学教授)

『反対』に投票することは、少なくともギリシャに可能性の扉を開く。強いデモクラシーの伝統を持つギリシャは、自らの運命を自分で掴むかもしれない。たとえそれが過去のような繁栄を意味しなかったとしても、ギリシャの人々が未来を形作るチャンスを手にすることのほうが、現在の不道徳な懲罰よりもはるかに希望がある


ポール・クルーグマン――「反対」

(ノーベル賞経済学者)

 2つの理由で『反対』に投票する。 まず一つ目は、トロイカがギリシャに課している支援条件とは、過去5年間の緊縮政策をそのまま延々と続行しろということである。いったいそれのどこに希望があるんだ?

 二つ目は「賛成」に投票することは政治的に非常に懸念される問題を孕んでいる。

 彼らはギリシャが受け入れることのできないオファーを出した。おそらく、相手がそれを受け入れることはできないと承知の上でそうしたのだ。突き詰めれば、実際、それはギリシャ政権を交代させるための行為なのである。例え個人的にはシリザを好きじゃない人でも、欧州の理念を信じる人なら誰だって憂慮するはずだ


トマ・ピケティ――「反対」

(『21世紀の資本』著者、パリ経済学校教授)

ここで問われているのは、債権者側から提示されている提案が良いものであるか悪いものであるかということだ。それが質問ならば、僕の答えは明らかだ。悪い提案だギリシャをEUから追い出せば、ロシアの腕の中に飛び込んで行くかもしれない


ジェフリー・サックス――「反対」

(コロンビア大学地球研究所長、『世界を救う処方箋――「共感の経済学」が未来を創る』著者)

 ギリシャはユーロ圏に留まりながら、債務軽減の交渉をすべきだ

 それを実現するには、ギリシャとドイツの和解が必要であり、国民投票後に両者が話し合って新たなギリシャの改革プランと債務軽減を考案しなければいけない。しかし、そうするには、まず債権者から出された提案に「反対」して拒否しなければならない。


クリストファー・ピサリデス――「賛成」

(ノーベル賞経済学者、キプロス出身)

 ギリシャに課された緊縮政策は有害であり、おそらく、長期にわたる失業率の非常な高さを招いた主要な原因だ。しかし、長期的には「賛成」に投票したほうが良い結果になる。

 前進とは内側からの改革であり、問題から逃げることではない。感情的には変化の兆しがすでに見られる。我慢すれば他の部分も変化するだろう。ヨーロッパのほとんどの政治家に、緊縮は欧州大陸の分裂を招き、EUにダメージを与えることがわかっただろうこの後で改革が起こる。ギリシャにはその中で果たせる役割がある。しかしそれもEUに留まってこそだ


ヴィッキー・プライス――「賛成」

(Centre for Economic and Business Research経済アドバイザー、英政府経済庁元長官)

 ギリシャの債務問題ではEUとギリシャの両側に責任がある。ユーロ圏全体に政治的、経済的リスクを与える問題になっていると言う。国民投票なんてそもそも行われるべきではなかった。

 緊縮は行きすぎていましたしかし、『反対』票は物事を悪化させるだけ。間違いなく銀行は破たんするし、EUからは離脱、景気後退のスピードは加速して、ドラクマは再導入されるや否や大きく下落します。『賛成』すれば銀行は営業を続けられるし、ギリシャの現在のリアリティーに即した新たな条件が考案され、取引が成立することにも繋がる。今ではIMFも、すべての経済学者が継続不可能だと言っている債務について、やはり整理が必要だと言っているのですから。



 以上、世界的に著名な経済学者の意見を見ていただきましたがいかがだったでしょうか。

「賛成」とした学者を含めて全員がギリシャに課せられた緊縮政策が有害だと認めている訳です

「賛成」「反対」方法論の違いはあるものの、日本のように「金を返さないギリシャけしからん」とか「痛みに耐えろ」で終わっている訳では全くありません。

 

「ヨーロッパのほとんどの政治家が緊縮は欧州大陸の分裂を招き、EUにダメージを与える事がわかっただろう」というのは私は財政均衡主義のドイツに対する強い皮肉と感じました。


 「日本は世界一の借金国家だー。」「プライマリーバランスがー。」とすぐメディアは言う訳です。

 そして、「憲法で財政均衡を明記しているドイツを見習え」と言うわけです。

 果ては、前の記事で指摘したように、「通貨統合(=金融政策の放棄)で失敗したのに、財政政策まで統合が必要だ」などと社説で主張してしまうレベルです。


 世界の専門家達は逆に緊縮政策が欧州を分裂させていると指摘しています。欧州全体で財政政策を緊縮に持っていったらギリシャの問題となり、次はスペイン・・・と広がっていくことになります。

 

 日本のメディアというか世論もそうですけど、国家財政と企業や家計を同じように赤字が無いのが良いんだと信じてしまっているというのが問題だと思うのです。


 世界の常識をメディアが国民に知らせていない。これは大きな問題だと指摘したいと思います。