今日は本日付の地元紙の神戸新聞の社説を引用したいと思います。

 結論を先に書くと、私の感想としては「客観的な説明の部分はそのとおりなのですが、結論が完全におかしい」というものです

ギリシャの拒否/強硬策は亀裂深めるだけ


 財政破綻のふちに立つギリシャの国民は、欧州連合(EU)などが金融支援の条件として示した財政再建策に「ノー」を突きつけた。

 ギリシャのユーロ圏離脱が現実味を増し、世界経済や金融市場への影響も避けられない。きのう日本などで株価が急落した。EUを中心にした危機管理を、固唾(かたず)をのんで見守らざるを得ない非常事態である。

 国民投票では再建策拒否が予想を超えた。チプラス首相は反対を訴える一方で「ギリシャは欧州の中で生きていく」とも強調していた。

 緊縮の見直しを求めながら、支援は受け続けたい。ユーロ圏にもとどまる。そんな期待を抱いて反対した国民も多いはずだが、再開される交渉がそう都合よく進むのか。

 チプラス氏は投票結果を後ろ盾に譲歩を迫る構えだ。民意は軽視できない。だが、その強硬な主張や手法をEU側が安易にのむようでは、今度は自国民の反発も高まる。

 ギリシャでは資本規制による銀行封鎖で混乱が広がっている。時間に余裕がない中、支援をめぐる協議の行方は一段と不透明になった。

 交渉が決裂すればギリシャ財政は行き詰まり、国民生活の苦境は深まる。EU脱退にまでいけば、欧州統合へのダメージは計り知れない。

 双方にとって、あってほしくない展開だ。その認識の共有から再出発するしかない。前提として、チプラス氏に信頼回復への姿勢が要る。

 6年前、財政赤字粉飾の発覚で危機が表面化して以来、EUなどの支援総額は30兆円を超える。「反緊縮」が支持されて政権に就いたにせよ、支援と引き換えの財政再建を「脅迫」と難じて反発をあおるようでは、成るものも成らなくなる。

 どの方向を選択するにしても、痛みを伴わない道筋はない。ギリシャの置かれた窮状を正しく伝え、困難に立ち向かうことを説く。それこそ政治家の責務ではないか。

 財政再建に忍耐強く取り組み、国の立て直しを目指す。EU側には、厳しい緊縮の先の展望についても、ギリシャ国民に語ってほしい。

 1999年、欧州統合の象徴として誕生した単一通貨ユーロは最大の試練に直面している。金融政策は一本化しながら、財政政策は各国ばらばらという矛盾にも向き合わねばならない。欧州が蓄積した知恵と連帯の力を、今こそ発揮するときだ。」


 以上引用しましたが、全体として、私が昨日紹介したような日本メディアのギリシャ批判トーンと同じ事がわかっていただけると思います。
 引用部分の中で青字部分がごもっともという部分で、赤字部分が私がひっかかったところです

 「再開された交渉が都合よく進むのか」という部分は同意です。その上で昨日の記事では、ユーロを離脱しデフォルトしてやり直した方が良いと述べました。

 別にユーロ離脱=EU離脱ではありません。現にイギリスはEU加盟国ですがユーロに入らず自国通貨「ポンド」を持っております。イギリスではEU離脱の国民投票が行われるという事ではありますが。
 神戸新聞は「交渉が決裂すればギリシャ財政は行き詰まり、国民生活の苦境は深まる」としている訳ですが、現状のギリシャの経済状態(4人に1人が失業。GDP6年で3割減。需要不足により完全なデフレ)で更に緊縮・増税を続けた方が国民生活は苦しいでしょう

 私はユーロ離脱してもEUに加盟しつつ、独自通貨に復帰して経済再生を果たす方がましであり現実的だと思います。

 昨日書いたとおり、ユーロで加入で貿易赤字が固定したギリシャは、不況で国内産業の競争力がどんどん失われており、このまま共通通貨に留まれば「ドイツなど競争力の高い国に負け続ける」という構造は何も変わらないのです。
 どちらにしても、公務員削減などの財政改革は必要ですが、ドイツのハイパーインフレがすぐ収束した際の対処にならって、デフォルトした後、ユーロ建てギリシャ国債を中央銀行が回収した後でやれば良いのではないかと思います。
 
 その上で、EU残留というのは経済問題だけではないからです。EUは先の大戦の反省のもとに、安全保障の観点から統合をしたという経緯があります。
 
 ギリシャはNATO軍に参加し西側陣営に属していながら、ロシアと接近したり、ドイツに先の大戦の戦時賠償を迫ってみたり、最近では「欧州の韓国」と比喩されるような強引な外交を展開しております。これは私もおかしいと思います。
 
 安全保障面ではEU加盟現状維持というのが現実的選択であり、世界秩序の安定のために求められると思います。イギリスのEU離脱論はよくわかりません。
 
 
 最後に、社説に対して一番違和感を感じた部分で、この記事を書こうと思ったきっかけは結論部分であります。
 「金融政策は一本化しながら、財政政策は各国ばらばらという矛盾にも向き合わねばならない。」とありますが、そもそも、国際競争力が違う国々の通貨を無理に統合し、金融政策を一本化したからギリシャが破たんしたのです。
 その上で、財政政策の自由まで失われたらそれは国家と言えるのかという事です。
 (経済政策とは「財政政策+金融政策」です。)

 経済政策が一切できない国というのは多分新自由主義者の理想の国ですが、この新聞はそこまで考えているのでしょうか?これって完全に経済右派の理論です。

 ギリシャ危機は金融政策や通貨の統合という問題を考え直す教訓だと私は思いますが、統合が足りながったからだと言っている訳です。
 ここまできたら統合すれば全て上手くいくという統合万能論に他なりません。金融政策を一本化した
 
 我々日本人もそろそろ国際政治の現実と向き合い通貨統合という幻想を捨てるべき時期に来ているのではないかと思う次第です。