以前にも取り上げましたが、ギリシャ危機を取り上げます。
ギリシャは事実上デフォルト状態になっておりますが、住民投票での緊縮策反対を受けて、デフォルトが確実視されております。このままいけば、ギリシャはユーロ離脱せざるを得なくなると思われます。


なぜ取り上げるかというと、現チプラス政権の政策はめちゃくちゃだという主張もよくわかりますが、マスメディアがそれを非難するだけでは意味が無いと思うからであります。

「借金を貸したEU側に責任がある」というのは納得いかないと言う気持ちはよくわかりますが、「EUはギリシャを共通通貨に組み入れた責任がある」と言われた場合はどうなんでしょうか。
(もっともユーロ加入時のギリシャは粉飾決算をしていたという事で同情の余地はあります)


 ギリシャ危機の根本原因はギリシャのような国が通貨統合してユーロに入った事が根本原因だと私は考えます


 元々、ユーロ導入前のギリシャは過去200年に5回デフォルトをしていますが、デノミ(通貨切り下げ)やリスケ(支払猶予)などを含めれば2年に1度の事実上のデフォルト状態に陥っていたと言われています。そういう国をEUがユーロに組み入れた訳です。


 ギリシャは以前から貿易赤字の状態でした。貿易赤字とは国内の供給能力が不足しており、自国の需要を満たせない状態であります。輸出面においては国際競争力が無い状態であります。
独自通貨の場合は、貿易赤字が続けば、為替市場において通貨安となり、輸入物価が上がるので、自然と輸入が減ります。一方で輸出面では通貨安で有利になるため貿易赤字は改善されます。

しかしながら、ユーロに入った後、ギリシャが貿易赤字になってもユーロ全体のギリシャの影響が小さい事から、ユーロは通貨安になりません。そのため、ギリシャ国民は輸入物価の上昇が無いため、安易に輸入品に頼る事となり、国内産業の生産性を高めるという動きが起きなかったわけです。
つまり、独自通貨ならある程度は貿易収支が自然に均衡していたものが、ユーロに入った事で、為替の調整機能が失われギリシャの貿易赤字が固定化されてしまった。国内産業も育たなかったという事です。

 それに加えてユーロ圏は自由貿易で、関税がかけられないため、輸入を抑制できないという面もあります。


 貿易赤字でギリシャの金が国外へ流出し、国内産業が国際競争力を持たない状況で、ギリシャは国債を発行して公共支出で下支えという事になりました。
しかしながら、ユーロ圏の各国はユーロ建ての国債を発行する事はできても、中央銀行の通貨発行権はありません。発行権はECB(欧州中央銀行)が持っています。


 日本の国債はほとんどが自国通貨建て(円建て)でしかも国内で賄われています。
国債は発行した通貨(日本の場合は円)で返済しないといけません。自国通貨建ての場合は中央銀行が通貨を発行して国債を買い取るという事が可能です。副作用として通貨の暴落の可能性はありますが、債務の返済が不能になる事はありません。


「自国通貨建ての国債はデフォルトしない」と言われる所以はここにあるのです。現にアベノミクスでやっている事ですが、ちなみに、アベノミクス当初には、「ハイパーインフレになる」という自称リベラルメディアの大合唱がありましたが、現在インフレどころかまだデフレ脱却もできていない状況です。


ギリシャの場合、ユーロという自国通貨建てではありますが、通貨の発行権が無い(自国通貨を刷って借金返済ができない)ため、実際は外貨建てと変わりません税収が不足してユーロで返せないと、即死状態でもうデフォルトしか選択肢が無い訳です。これは非常に恐ろしい話だと私は思います。


 ギリシャはユーロを離脱し、デフォルトしてやり直すべきでしょう。デフォルトは国が死ぬ事ではありません。自国通貨が暴落し、輸入価格が暴騰し一時的に生活は苦しくなるでしょう。しかし、通貨安によって輸出競争力が回復し、輸出主導の経済成長によって破たんから立ち直る事ができます。
 近年、経済破綻したロシアや韓国はこのプロセスで数年で立ち直りました


 ユーロに留まる場合は、ドイツを始めとしたユーロ各国が求める緊縮策と増税を受入れるか、国土を売るかしか選択肢がありませんが、前者については国民投票で否決されました。ギリシャは衆愚政治に陥ったと日本のメディアでも批判されています


 しかし、上記で述べたように、ギリシャにはお金が無い訳です。ギリシャのGDPは2008年に3540億ドルであったものが、2013年には2420億ドルに減少しています。
 GDPが3割以上減少する中で、当然失業率もひどい事になっています。最新のギリシャの失業率は25.6%と4人に1人が失業者(2008年は7.8%)。若者失業率は49.7%と2人に1人が失業者です。
 ギリシャの人口は1100万人ですが、この6年間で失業者が100万人増加したと言われています。
 ちなみに、EUの中で若者失業率トップはギリシャではなく、スペインという有様です。

 ここまでくると、もうギリシャ一国の問題ではなく、ユーロという共同通貨の構造的問題と言えるのではないかと思う訳です。皆様いかがお考えでしょうか。


 ちなみに、通貨統合という話は日本でもありました。
民主党鳩山政権では、東アジア共同通貨などと馬鹿げた主張をしていましたが、もし実現していたら、日本は今のドイツのような立場になっていたでしょう。金融政策を自前でできない訳ですし、恐ろしい話です。


最後に、ギリシャ危機の間接的な影響を考えます。
ギリシャ発の中国のバブル崩壊による世界恐慌という危険性が高まっているのではないかと私は考えます。
中国では不動産のバブルが崩壊し、ゴーストタウンを作りまくるというめちゃくちゃな投資による地方政府の債務増、自転車操業の破たんによる地方政府のデフォルトの危険性が高まっています。
2010年のGDPの項目別内訳を比較すると消費35%(以下同日本59%)、政府支出13%(20%)、総固定資本形成(民間+公共投資)47%(20%)、純輸出4%(1%)となっており、中国は国内の家計消費が弱く、公共投資や住宅投資でGDPの半分を支えていました
 地方政府の債務増で国内でめちゃくちゃな投資が出来なくなった中で、海外でインフラ投資をやって国営企業を守りたいというのが「AIIB」の問題です。

 最近では上海株式市場の平均株価がが3週間で3割も低下しました。
株式の信用取引が国民に解禁された事により、住宅バブル崩壊後の投資対象としてマネーが流れ込み、一時的なバブルとなりましたが、それが崩壊しつつあります。
 信用取引により自前資金の5倍の株式の取引ができますが、20%以上株価が下落した場合、元本割れして追証がかかります。ポジションを保持するために他の銘柄を売るという事で、株価がどんどん下がっている訳です。


 元々国内消費が弱い中で、住宅バブル崩壊で投資というGDPの半分を占める牽引要素が減少し、今度は株式のバブル崩壊という状況です。日本のバブル崩壊時の不良債権は100兆と言われますが、中国の場合少なくとも300兆以上と言われています。こんなバブルが崩壊すればどうなるのでしょうか。

 世界2位の経済大国と言われる中国経済のバブルが全体的に崩壊した場合、日本経済にも当然影響します。 また、独裁国家中国が国民の不満を反らすため、周辺諸国への威圧行動に出る可能性も高まります。
 2015年の世界情勢は非常に危うい状況だと言えるでしょう。