標記のニュースがヤフーのヘッドラインニュースで取り上げられていましたので、分析していきたいと思います。


 まずは引用します。

 <民主党>アベノミクス批判で攻勢…格差拡大を追及 (毎日新聞 2月4日(水)23時59分配信 )


 民主党が、安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」批判で攻勢を強めている。国会審議では、格差拡大や円安リスクなどを追及。3日には「共生社会創造本部」(本部長・岡田克也代表)を設置し、格差是正と経済成長を両立させる政策「オカダノミクス」を策定し、政府への対抗軸を明確にする方針だ。

 4日の衆院予算委員会の集中審議。前原誠司元代表がアベノミクスのリスクを問いただした。前原氏は実質賃金が18カ月連続して減少しているのは「消費増税でなく異次元金融緩和による輸入物価上昇と相関している」と指摘。国債暴落の可能性にも触れ、「国民を巻き込んだギャンブル」と批判した。首相は「デフレ脱却や雇用の改善は着実に進んでいる」と反論した。

 3日に設置した「共生社会創造本部」では、党内の意見集約を行うほか、幹部が地方行脚で国民の声を聞く方針だ。今年10月をめどに中間報告をまとめ、来夏の参院選の公約に盛り込む。

 岡田氏らは1月30日に、貧富の差の拡大を論じた著書「21世紀の資本」が世界的ブームとなった仏経済学者のトマ・ピケティ氏と会談。日本の格差が拡大しているとの認識で一致したという。岡田氏は今月中旬に衆院の代表質問に立ち、「オカダノミクス」の考え方をアピールする意向だ。

 ただ、昨年12月の衆院選でもアベノミクス批判を展開したが躍進につながらなかっただけに、岡田氏は共生本部で、格差是正と経済成長を両立させる経済策の策定を指示した。【村尾哲】


 引用終わり


 格差是正と経済成長を両立させる政策「オカダノミクス」という事でありますが、私も安倍政権の経済政策はアベノミクス第1の矢、第二の矢は正しいが、他の政策、例えば、消費増税、一律の企業減税などはおかしいとこれまでもこのブログで言ってきており、本当に格差是正と経済成長を両立させる政策ができたら是非支持したいと思っています


 しかしながら、それは民主党では不可能だろうと思います。おそらく9割程度の国民も同じ事を思っているのではないでしょうか。


 その理由は野田前首相が「消費増税延期は最大のポピュリズム」と言うほど、財務省の言いなりであり、経済成長を考えていた形跡が見えないからで、岡田代表も「原理主義者」と言われており野田氏と同類です。


 消費増税を決めたのは当時の野田首相でしたが、民主党政権のまま消費増税が実行されたら、日本経済は終わっていたかもしれません。


 結局、「ポピュリズム発言」の次の日には、選挙のために消費増税延期を容認に転じる結果になりましたが。


 「オカダノミクス」という言葉は明らかに「アベノミクス」の二番煎じですが、それもこの際どうでもよいです。


 次に指摘したいのは、先日も取り上げたピケティをなんとか政治利用したいという姿勢についてであります。

 本気でピケティの言うとおりにやるなら、私は支持しますが、絶対そうはならないでしょう。


 以前も引用したピケティの言葉をまた引用します。


 「財政面で歴史の教訓を言えば、1945年の仏独はGDP比200%の公的債務を抱えていたが、50年には大幅に減った。もちろん債務を返済したわけではなく、物価上昇が要因だ。

 安倍政権と日銀が物価上昇を起こそうという姿勢は正しい

 物価上昇なしに公的債務を減らすのは難しい。2~4%程度の物価上昇を恐れるべきではない。

 4月の消費増税はいい決断とはいえず、景気後退につながった」(日経新聞2014年12月22日 より引用)


 このピケティの言葉は民主党の今の立場とことごとく違うじゃないかと皆様も思う事と思います。


 安倍政権と日銀が2%程度のマイルドなインフレを起こそうとして実施している「金融緩和」について、記事中の前原議員の質問では「国民を巻き込んだギャンブル」と批判しています。


 大規模な量的緩和は日本だけではなく、アメリカも、イギリスも、つい先日お知らせしたとおり、ユーロ圏全域でも実施したところです。

 これらの国もギャンブルだというのでしょうか。

 

 民主党に呆れるとともに、民主党の主張を無批判に掲載している毎日新聞は相変わらずピケティの言う事をちっとも理解できていないなと再確認した次第です。


 やはり、アベノミクス当初に言っていた「金融緩和でハイパーインフレになる」「消費税をあげなければ財政が破たんする」などの自分達の作ったストーリーに都合の良い学者がピケティだと思ったのでしょうが、ピケティはそんな事言ってません。  

 むしろ真逆です。どんな思考経路なのか私には理解できません。


 もう一つ気になったのは実質賃金のくだりであります。確かに実質賃金は消費増税前から18か月連続で減少を続けています。

 私も実質賃金が上がって初めてアベノミクスは意味が出てくるものと思いますが、「消費増税でなく円安による輸入物価上昇」のせいだ言うのには、消費増税の与える経済のマイナスの影響を全く無視していると感じます。


 以下は実質賃金の対前年比率の推移です。
実質賃金推移

 ご覧いただけば一目瞭然です。3%の消費増税後、実質賃金は一気に2%以上減少しています。

 消費増税というのは需要が高まり、商品が売れ、給料が上がるというインフレではなく、強制的に物価が3%上がる(=去年と同じ買い物をしても余分に3%払う)コストプッシュインフレであり、実質賃金(=賃金-物価上昇率)が下がるのは当たり前のことです。

 前原氏の増税の影響が無いという話には全く説得力がありません


 民主党は前回の衆院選で何がダメだったのか、消費増税などの自分達の政策をまずは反省すべきです。

 国民は前回の衆院選でもしっかりと見ていたと思います。

 何度も書きますが、ピケティの言う事を本当に理解して実行するのなら私は民主党の経済政策を支持します。


 実質賃金の低下の要因は輸入物価の上昇もあるでしょうが、やはり、世代構造による定年退職者の増加、新規採用者の増加などの影響が大きいと思います。


 政権交代時の平成24年12月と2年後平成26年12月(直近のデータ)を比較すると、

 就業者数は6211万人  ⇒ 6357万人で、129万人の増加

 完全失業者数は259万人⇒ 210万人で、49万人の減少

 完全失業者率は4.0%  ⇒ 3.2%で、0.8%減
 労働力調査 より


 とはいえ、アベノミクスは消費増税によって政権交代前の振り出しに戻った感があります。

 マクロ経済の需要と供給の差を測る受給ギャップは現在-2.8%で、年間の金額では15兆円あると言われています。つまり、需要が15兆円供給を下回っています、

 これは民主党時代の平成24年10-12月期の-3.2%、年間17兆円とほぼ変わらない水準です。


 
デフレギャップ


 もう一度初めからアベノミクスをやり直さなければならない状況で、残念ながら、やり直すという動きになっていない中で、今後の日本経済がどうなるのか、非常に心配です。