欧州中央銀行(ECB)がついに量的緩和に踏み切りました。

 

 昨年12月の欧州全体のインフレ率はなんと「-0.2%」、ユーロ圏の経済の中心であるドイツでさえ「0.1%」とデフレ状態に陥り、需要不足から、ユーロ圏は不況になっています。

 このヨーロッパのデフレ・経済不振は、現在、原油価格が下落している理由の一つでもあります。

 1999年の共通通貨「ユーロ」導入以降、デフレ対策で国債を買い入れるのは初めての事です。

 「アベノミクスの異次元緩和がハイパーインフレを起こす」というような論者がいましたが、日本だけではなくアメリカもイギリスも、ユーロまでがやっている普通の政策となったなと感じました。

 

 第一次世界大戦後のハイパーインフレのトラウマを持つドイツ(※1)は、緊縮財政を国家運営の基礎においてきましたし、ユーロ加盟条件のGDP比の債務残高ルールもドイツが作ってきたのではないかと思います。ドイツは今回のECBの決定に大きな不満を持っているそうです。

 (代表的経済紙ハンデルスブラット「アルコール中毒者に無料のビールを、麻薬中毒者にただで薬物を提供するようなもので、量的緩和はドラギ総裁の麻薬だ」等)

 

 ※1 ドイツのハイパーインフレも実は、中央銀行総裁が逮捕されて、中央銀行が機能不全になった結果起こったという見方もできます。


 しかしながら、単純に考えて、ドイツの貨幣とギリシャの貨幣が同じで、経済が弱いギリシャが持つのかどうかという話になります。


 ギリシャは観光が主要産業の国です。欧州先進国の通貨、例えばドイツマルクと比べて安いドラクマという貨幣を使っていましたので、ヨーロッパからの観光客は安い旅行先として、ギリシャが選ばれていたわけです。

 

 しかしながら、ギリシャはドラクマを捨ててユーロに入った事で、ヨーロッパの安い旅行先としてのメリットは消えました。

 むしろ、ユーロになったら値段が高くなくなるので、ユーロ導入前に値下げもしましたが、結局は通貨価値が高くなってしまったのです。

 

 ギリシャの公務員が多すぎたという問題もありますが、共通通貨という無理から生まれる構造的な問題もあるのではないでしょうか。

 

 経済危機に陥ったギリシャは2009年から2012年の間にGDPの成長率は17%減少しました。

 これは4年間で給料が平均で2割減ったのと同じようなものです。給料が減るだけならまだましですが、ギリシャの現在の失業率は25.9%(昨年8月)です。


 4人に1人が働いていないのです。日本人にとってそんな社会が考えられるでしょうか。


 これはEUからの経済支援の見返りに、緊縮財政が求められたのが原因です。

 こんな状況を国民がよしとするはずもなく、ギリシャは先の総選挙において、「反緊縮」を掲げた急進左派連合が圧勝し、ユーロ離脱が現実味を帯びてきました。


 ギリシャはこの際、ユーロを離脱し、デフォルトした後、安い通貨で再出発して、国債を目減りさせる他に、4人に1人が失業者という今の状況から脱する事は不可能だと私は思います。


 メルケル首相は否定したようですが、「ドイツがギリシャのユーロ離脱を容認」というニュースが出ました。

 共通通貨ユーロにはそろそろ限界が見えてきたんじゃないでしょうか。