このブログでは、度々、デフレが日本の最大の問題だと述べてまいりました。

 それはなぜかというと、デフレなどによる景気の悪化は最終的には人の命を左右する問題だからであります。

 

 一昨年の政権交代後のアベノミクスによって、インフレ期待が生まれ、バブル崩壊後以降、特に97年の消費増税以降では考えられなかったような、人手不足が生じました。

 

 最近よく耳にするニュースでは、いわゆるブラック企業と言われるような、外食産業を中心とした低賃金、長時間労働のチェーン店などが、人手不足によって、店舗閉鎖を余儀なくされるというものがあります。

 人手不足は悪いイメージとして捉えられる事もありますが、労働者にとっては、非常に良い傾向であると考えます。

 

 デフレで物が売れない時には、企業は人件費を含めたコストカットによって、利益を上げようとします。また、デフレ下では、労働者もこき使われる環境であろうが、他に転職が見込めないために、我慢せざるを得ないという事で、ブラック企業の問題は半分以上が、デフレによる景気悪化が原因であります。

 

 現在、デフレからインフレに変わり、物が売れる(需要が高まる)時には、企業は売上を増やすために人手を求めるため、労働者には有利な転職が可能になります。

 そうなれば、デフレ時に労働者に対して使い捨てや過酷な労働を強いてきたブラック企業に、人材が留まらず、新規採用も困難になったという事から、外食チェーン等が人手不足の問題がメディアで報じられ表面化しているという事です。


 このように、デフレというのは、雇用、つまり、失業問題にも非常に大きな影響がある訳でありますが、冒頭申し上げたとおり、人の生き死にの問題にも関与します。

 皆様、ご存知だとは思いますが、失業と自殺の相関関係は非常に強いという事は、下のグラフを見ていただければ、一目瞭然だと思います。

 
失業と自殺

自殺者数がわかりづらいと思いますので、自殺者数単独のグラフも紹介します。

自殺推移

 失業率と自殺者のグラフはほとんど同じ波形を示しているのが一目見てわかると思います。

 失業が増えたら、自殺が増える、失業が減れば、自殺も減るという事です。

 

 自殺者数のグラフを見ますと、1997年の24、391人から、1998年の32、863人に自殺者が急増し、それ以降、2012年で27、858人になるまで、14年間もの長きに渡って、自殺者が年間3万人を上回ってきた事がわかります。

 

 1997年から98年にかけて、何があったかという事は、このブログをいつも見ていてくださっている皆さんには改めて言うまでもない事かも知れませんが、97年に3%⇒5%の消費増税があったのです。

 アジア通貨危機もありましたが、基本的にはデフレの影響による自殺の増加がずっと15年間続いてきた訳であります。

 

 先日、4-6月期のGDP成長率速報値がマイナス1.7%(年率換算マイナス6.8%)になってしまった というニュースをこのブログでもお知らせしました。


 そして、今回のGDP速報値については、明らかに、消費税増税の悪影響が出た結果で、非常に中身(GDPのプラスマイナスの要因)も悪いという事を指摘しました。

 

 2016年度をプラス成長にしようとすれば、4-6月期のマイナス1.7%を残り9か月(3四半期)で取り返さないといけません。

 ちなみに、景気の良かった2013年度の四半期毎のGDP速報値を見てみますと、以下のようになります。

 <2013年度四半期毎実質GDP成長率>

 4-6月期:0.9%、7-9月期:0.4%、10-12月期:0.0%、1-3月期:1.5%


 というように、駆け込み需要を含めた7-3月までの3四半期で合計1.9%となっています。

 去年なみに上手くいけば、何とかプラス成長を維持できるというぐらいです。

 

 しかしながら、今年は去年に比べて、3%消費税が上がっており、仮に給料が一定としても、去年と全く同じ買い物をしても、消費税増税の3%分はお給料から取られてしまう事になります。


 これは実質的にお給料が少なくなる事と同じ意味です。


 このように、名目のお給料から物価上昇分を引いた物を実質賃金と言いますが、今年6月の速報では、実質賃金は去年に比べてマイナス3.8%と減少しています。


 ちなみに、名目賃金は0.4%の増加ですので、明らかに消費増税が原因で、給与の上昇が物価上昇に追いついていない事がわかります


 こういう状況で去年よりも買い物を増やそうとする(=経済成長する)でしょうか。

 

 日銀は2016年度の成長率予測を1%前半としているのですが、現状では非常に厳しいと言わざるを得ません。近い将来、更に成長率の下方修正をするのではないでしょうか。

 

 経済成長すれば、お給料も増え、税収も自然に増え、年金の運用収益も増えるなど良い事だらけです。

 経済がマイナス成長すれば、当然、その逆になります。

 もちろん、私は皆が買い物を増やして、経済成長して欲しいとは思いますが、こういう状況では、非常に難しいです。

 
 デフレは物価の下落よりも所得が減少してしまう事が問題でした。
 インフレでも、所得が増えるよりも物価が上昇してしまえば、悪いインフレになります。

 このような悪いインフレをスタグフレーションと言います。

 消費税増税によるスタグフレーションで、せっかく上向きかけた景気回復が吹っ飛びなけないというのが現状なのです。

 今政府が第一に考えるべきことは国民の実質所得が増える事のはずです。
 
 企業減税を実施して消費税を再増税するとか、企業減税の財源に企業の研究開発減税を充てるなどの、意味不明な政策はやめていただきたい。


 来年再度消費税を上げて、自殺者が再び3万人を超える。こういう未来は見たくないなと本当に思います