今の日本経済はデフレという話をずっとしていますが、実は日本の中でも建築業だけはその例外でインフレになっています。

 その要因を考えるため、まずは小泉改革とは何だったのかというのを振り返ります。

 

 2000年代前半の小泉改革では構造改革路線を推進し、小さな政府を目指しました
 その結果、構造改革による規制緩和によって、従来制限のあった派遣規制が撤廃された事で、今では3人に1人が非正規雇用と非正規雇用が急増し、クシー台数の制限撤廃による過当競争で運転手の所得が半減するといった弊害が出てきました。


 日本の経済成長や財政再建のためには、デフレを脱却して経済のパイ(内需)を拡大していく事が重要です。

 小泉改革以降の政府は経済回復のため、「市場に任せたら上手くいく」と企業優先の構造改革を行ってきた結果、デフレ脱却はできず、むしろ平均所得は減り続け「分厚い中間所得層」という今までの日本経済の良さを失わせてしまいました


 構造改革を主導した竹中平蔵は「タクシーに乗ったら運転手が年収は半分になったが、息子もタクシー運転手になれた」と言って、タクシーの制限撤廃は間違いじゃないと未だに主張しているみたいです。経済を拡大させ、父親も今までどおりの所得を得て、息子も職に就けるというのが本来目指すべき道であったのだと思います。


 小泉政権や第一次安倍政権では日銀が継続して金融緩和をしており、デフレ脱却に近づいた事はありましたが、結局はできませんでした。チャンスがあったのに実現できなかった理由は、その当時は金融緩和と財政出動を一緒にするという政策では無かったためだと思います。


 一方で、財政については防衛費や公共投資を削減し続けてきました


 公共投資が減り続けた結果、建設業者は17万社減少し、従業員は100万人減少しました


 現在、このように供給不足が相当深刻な状況にある中で、東日本大震災からの復興の他、安倍政権の第二の矢の景気対策など、公共投資の需要が急激に高まっております


 その結果、供給が追いつかずに入札不調が頻発し、特に東北地方では既に過熱気味のインフレとなって、復興の遅れの大きな要因になりつつあります。


 建設の需要に対して、人手や資材が圧倒的に足りず、建設に関連する賃金や資材のコストが急上昇し、建設企業のコスト増になっています。
 中には、1億円で入札した道路復旧工事で3000万円も赤字が出たという事例も被災地ではあるようです。こうなっては入札不調も仕方が無いという状況なのです。
 
 現在の建設業の状況は供給不足によるインフレの典型です。
 
 建設部門で起こっているインフレをどう捉えるべきでしょうか。
 公共投資などの需要を減らせばデフレに逆戻りですし、震災復興など公共投資の目的も果たせません。
 需要と供給をともに増やす=経済のパイを拡大させる事を目指さないといけないという訳です。
 そのためには、需要に見合う供給を増やさなければいけません


 建設業者が雇用を増やすという事ですが、長年の公共投資の削減というデフレ環境で、建設業者はデフレマインドに侵され、雇用を増やす事にためらいがあります。建設業に対する国民のイメージが悪いため、若者も建設業への就職をしたがりません。


 このまま建設分野に人が集まらなければどうなるのでしょうか。
 日本のインフラは多くは60年代の高度成長期に建てられ、50年が経過し、更新の時期を迎えています。笹子トンネルの崩落事故などは記憶に新しい出来事です。


 このままいけば、建設業の供給不足が原因で、近い将来、橋や道路が壊れても直せないという事態に陥りかねません。そうなって困るのは国民なのです
 

建設業は私達の社会インフラの安全保障の役割を担っているのです。


 まずは、公共事業の最低落札価格を上げ、事業をやっても儲けが出ないという状況を改善する事が先決です。


 また、7年後の東京五輪など、長期的な公共投資の総額を示す事で、建設業者が長期の需要を見込め、雇用計画を建てられるようにしなければいけません


 イメージの問題も非常に重要です。

 小さな政府・新自由主義の政治家・経済人がマスコミを使って煽動した「土建国家」「無駄な公共事業」などの「公共事業悪玉論」によって、醸成された国民の建設業に対する批判的なイメージも改善する必要があります。
 昨日と同じですが、我々国民がマスコミ任せにせず、自分の頭で考える事も重要な事なのです。