昨日、テレビ朝日の報道ステーションで、「飲酒ひき逃げの厳罰化を…10年もの家族の訴えに」という特集が組まれていました。


 番組では、10年前、飲酒運転の常習者の男による飲酒運転、ひき逃げの事件で高校1年生の息子さんを亡くされた高石さんがインタビューに応じていらっしゃいました。
 高石さんの事件では、犯人が逮捕されたのは発生から1日が経過、そのため、飲酒運転はしていたという本人の証言はあったものの、アルコールの検知ができず、飲酒運転が立証できませんでした。

 その結果、将来あるお子さんを殺された、飲酒・ひき逃げという悪質な死亡事件なのに、犯人の刑期はたったの懲役2年10ヶ月


 「逃げれば飲酒が立証されず刑が軽くなるのはおかしい」「他の事件に比してあまりにも刑が軽すぎる」という被害者にとっては当たり前の思いから、高石さんは自動車の危険運転への罰則強化を求める活動を始められたそうです。


 高石さんたちが法務大臣に提出した署名は、65万人を超えるという事です。


 私と友人の2人が巻き込まれ、私は左足骨折の重傷、友人が亡くなった事件では、犯人は飲酒運転の常習者。内容は飲酒運転、信号無視、ひき逃げという事で、高石さんの事件と多くの共通点があります。


 私の事件の場合は、ひき逃げでありましたが、犯人が一度家に帰ってから現場に戻ってきたため、飲酒が立証できた事と、信号無視が危険運転の決め手となったという違いがあります。
 また、3年前と比較的新しい事件でしたので、飲酒運転による高石さんたちのご努力のおかげで、厳罰化が進んだ中で、最高刑の危険運転致死傷罪で懲役9年という比較的重い刑になりました。(友人のご家族も私も、被害者としては懲役9年に納得している訳ではありません。)


 飲酒運転の結果、人を殺めてしまった時、逃げずに救急車を呼ぶなどの救護手配をした犯人よりも、逃げた犯人の方がより罪が重いという事は当たり前の話です。しかしながら、実際は逃げ得という、極めて不正義な状況になってしまっていた訳です。

 昨日の高石さんのインタビューを見て、私達の事件で、もし犯人が現場に戻って来ず、飲酒が立証されなければ、危険運転になってなかったかもしれないと思うと、本当にゾッとする思いがしました。


 秋の臨時国会では、前回時間が足りずに成立しなかった「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案」が成立の見込みとなっています。

 法案が成立されれば、危険運転致死傷罪の適用を免れる「逃げ得」を防ぐため「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪」も新設される事になります。
 この犯罪は飲酒や薬物を摂取して事故を起こしながら、影響を隠すため逃げたケースが対象で、刑の上限は懲役12年となります。
 
 逃げたケースでの飲酒の立証が難しいとは思いますが、飲酒の影響を隠すために逃げる事自体を問題とする考え方は画期的であり、私は大いに賛成です。

 「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪」以外にも多くの改正点があります。

 

 まず、今回の法案では、危険運転致死傷罪と自動車運転過失致死傷罪(過失運転致死傷罪に改称)の関係条文を、刑法から新法に移行します。
 
 現行の危険運転致死傷罪は「正常な運転が困難な状態」が前提で、適用要件が厳しすぎるとの声が出ていました。このため、飲酒や薬物、てんかんなどの病気の影響で「正常な運転に支障が生じる恐れがある状態」で起こした事故にも同罪を適用できるようにし、処罰する新たな規定を盛り込むようです。 

 (※病気の影響によって起きた事故を処罰する規定については、てんかん等の持病を持っているからという事ではなく、現れた症状が危険なものである場合は危険運転致死傷罪を適用するということのようです。)
 
 これまでの危険運転致死傷罪の最高刑は懲役20年(併合加重の場合は最高30年)、同罪の適用に至らない自動車運転過失致死傷罪(過失運転致死傷罪に改称)は同7年でした。
 今回、更に懲役15年の新規定(準危険運転致死傷罪?)を設ける事により量刑の隙間を埋めるとの事です。

 他には、無免許運転の事故は免許保有者よりも刑の上限を引き上げる事として、危険運転致死傷罪に該当する場合は負傷事故はこれまでの懲役15年が同20年に、過失運転致死傷罪は懲役・禁錮7年が懲役10年となります。


 危険運転致死傷罪が成立してからは、飲酒を原因とした死亡事故は減少したとは言え、危険運転の適用は非常に高いハードルがある事。
 昨年には亀岡市や鹿沼市の事件など、無免許や重度のてんかん発作などによって、危険運転に該当しない多くの人命を失わせる重大事件が依然として発生しており、厳罰化が求められている事を考えると、私としましては、当然、賛成したいと思います。

 被害者の思いは、自分達のような悲劇はもう二度と繰り返してほしくない。ただそれだけです。
 
 さて、ここで告知をしたいと思います。このブログでも何度か紹介させていただいております、三木市の犯罪被害者支援条例の制定にご助言をいただき、三木市が市民1人1円の支援を行っている「ひょうご被害者支援センター」様のシンポジウムが11月17日(日)の午後1時30分から「パレス神戸」で開催されます
 テーマは「犯罪被害者をとりまく司法改革の現状と展望」という事で、私も犯罪被害者のパネリストとして、「裁判への被害者参加」をテーマにお話させていただきます。
 詳細は後日またお知らせいたします。ご興味のある方は是非ご参加いただければと思います。