私は野党が対案を出さずに批判するだけとなるのが一番の問題だと思います。批判するだけなら誰でもできます。それでは国民の利益になりません。これは決して国政だけの話じゃないと思います。
 批判だけして、批判した政策が上手くいっても責任を取らないというのがいつものパターンです。

 対案を示しつつ、政府がよく考えていないところを追及し、議論の俎上に上げる
 こういう建設的な意見を言う事こそ野党の取るべき立場で、国民の支持も得られるのじゃないのかと思います。


 昨日、紹介した 動画の続きで、早稲田大学の若田部教授が野党の頼りなさという点と、アベノミクスの女性の活用に関しての意見を述べていらっしゃいますので、ご紹介します。
 
<経済成長で財政規律を守るという意見について>

 まず、何と比較して安倍さんが今評価されているのかという事を考えなければならない。
 私も民主党時代の政権をずっと見てて、やっぱり短期的な事すら民主党の人はやってくれなかったというか、その間、デフレ不況がずっと続いてた訳ですね。
 それは、自民党も威張れたものではなくて、リーマンショック後の対応をしたのはまずは麻生政権でした。なので、その意味では、今何故安倍さんが評価されているのか、私が評価しているのかと言うと、まさに、このままデフレが続いてしまうと、この国は沈没してしまう。財政再建なんてありえない。
 経済がずっと収縮していく中で、社会保障とか年金制度を維持する事は不可能なんですね
 そういった事に、最初に、真っ向からアタックをかけているのが、やっぱり安倍さんなのであって、その意味においては、他の誰よりも重要なところを掴んでいるとしか言い様が無いと思う。
 なので、何と比較してと言うと、確かに短期的な事で景気が良くなればいいって事では全然無いと思うんですよ。で、それはそういう事が一番解っている政治家がいるとしたら、それはおそらく安倍晋三さんだと思うんですね。


 彼が本当にやりたい事はおそらく経済の回復とかではなくて、憲法の改正とかそちらの方だと思うんですよね。
 だけど、そういう人が今、経済の事をきちんとやってくれてるというのが強い。
 だけど、何故、長期的なことをやらないのかと言うと、典型的に政治家は合理的であるというだけであって、それを文句言ってどうなるもんかというのもあるんですけど、そこを責め切れていないやっぱり野党の問題ですよね。

 野党がアベノミクスのまさに第一の矢を攻撃して、本当ならば、攻撃すべきは違う所にあるのに、そういう所を攻撃しきれていないと
 ですから、合理的な安倍さんが長期的な議論を今の段階で避けたいのは当然なんであって、それをできるだけ議論の場に持ち込むというのが、本来であれば、野党の政治家に求められる所でしょうね


 一つだけ、その何をすべきかという事については、公共事業がこれまであった奴をどうしていくのかというのは、これまでと同じようにはできないというのは誰でも解る。明らかですよね。
 社会保障もまた同じような事です。その意味での方向性というのはそんなに変わってはいないと。
 だけど、そこから先、具体的にどう議論していくかと言うと、普通、合理的な政治家であれば先送りしたいと思う。それに対して、やっぱり、きちんと議論していきましょうねと言うような、それをあえて俎上に上げるような対抗勢力がやっぱり弱いというのが事実ですよね。
 そういう形で言うと、私は長期的なビジョンを描くと言うのはやはり大事だし、やるべきだと思うんですけども、しかし、実際、それを政治の場にどうして上げていけないのかという所を見るときに、政治家の合理性をどう克服するかという話が無いと、これから先は進まないんじゃないかと思います。


<女性活躍の手法について>
「私が理解している限り、助成適用というのは、少子化担当大臣の意向が極めて強いんじゃないかと思います。なので、ある種、色んな人の意見を聞く中で入ってしまったというのが一つ。
 三年育休が問題であるのは事実だと思います。実際に、三年育休が取れる人はいない。
 おっしゃった問題は全部あると思います。これはあまり政府としてよく考えられていないですよね。 誤解の無いように言っておきますと、私は安倍さんのやってる政策が全て正しいとは全然思ってなくて、私の本でも書きましたけども、アベノミクスで一番評価しているのは第一の矢であって、第三の矢に行けば行くほど評価が下がっていくという事です。
 
 それと経済政策というのは、いつも学生達に言ってるんですが、①経済を成長させる②景気を安定化させる③所得再分配するという3つの機能があります
 そのうち、アベノミクスは決定的に三番目が欠けている三つの矢なんですね。元々、アベノミクスは所得再分配が非常に弱いんです
 所得再分配になると北欧型の福祉国家なのか、アメリカ型なのかと諸外国は全然違うんです。
 これは価値観の問題が入ってきます。

 なので、安倍さんの価値観がやっぱり、①「女性というのは3年間育児をすべきである」という価値観があるので、それと②女性の活用というのと、後、③大都会の女性に対して、政治的にアピールするという3つぐらいが重なるとこの政策になるというふうに思います。
 なので、その意味で問題があるのはその通りなんで、私はやっぱり、野党はアベノミクスの第一の矢を批判するのではなく、アベノミクスの欠けている部分をやっぱりきちんと批判すべきだと思います。
 あと、もう一点だけ、加藤先生がおっしゃった、「ローカルな事をきめ細かくできていない」というのはその通りです。おそらく、そこから出て来る結論は、あんまり取り上げられていない、まさに地方分権の問題だと思う。
 ですから、中央で決めて何かをやるというのが上手くいかなくなっているから、制度が荒くなっているように見える。それを変えるためには、かなり地方に人材・権限・財源を動かしていかないと、こういう問題は上手くやっていけないのではないかと思います。」

 


 この間の選挙で私が野党について不満に思い何度も繰り返し書いている事は、野党の左派政党がアベノミクスの第一の矢を批判するのはおかしいんじゃないかという事です。


 アベノミクスの金融緩和、財政出動というのは、基本的に経済的左派のケインジアンの経済政策だと思うのです。

 しかしながら、野党左派政党の行動原理はというと、資本主義が嫌い。株などで儲けるのは許せないという経済度外視の「清貧こそ素晴らしい」という思想があるのじゃないかと推察します。
 経済成長さえも否定する考えにはさすがについていけません。

 株などの資産価格が投機的に上がっていくという一側面はあるかも知れませんが、それだけではありません。縮小しつつある経済のパイを大きくしていく政策であり、その結果、アメリカでは雇用が改善したから出口戦略が議論されて、日本でも雇用が改善しつつあるというのは昨日の記事のとおりです。
 15年間も続くデフレから、いきなりインフレになるという事は有り得ません。つまり、インフレ下の不景気というスタグフレーションのリスクも大きくないと思います。


 若田部先生がおっしゃるように私は左派野党は攻撃の矛先を完全に間違えていると思います。
 経済的な常識が無いからこそ、野党の支持が伸びず、世論調査で自民党の独走を許しているのではないかと思います。
 デフレ脱却で経済のパイが拡大するのを容認しつつ、その中でも所得再分配など、アベノミクスに欠けている部分を提言していく。こういう役割が果たせないまま、左派勢力が大幅に勢力を減らしてしまうという事は、日本国民にとって、決して良い事とは言えないと思います。
 
自業自得とは言え、左派野党は戦略を完全に見誤ったなと思います。
 野党でも、維新、みんなの党は経済右派。小さな政府主義者ですので、所得再分配については期待する事はできません。

 女性の活用については、私は基本的に賛成ですが、待機児童の解消については大都市優遇で、地方から大都市への人口誘導政策になるのではないかと以前、このブログで指摘したところです。
 横浜では待機児童が間を置いて2度全国1位になりました。1度目も保育所の定員を大分増やして対応したにも関わらず、2度目の全国1位になったのです。
 つまり、都会で保育所ができて便利になったら、仕事があって子育てしやすい環境を求めて、地方から移住し、また待機児童が発生するといういたちごっこになりかねない。
 結果として、地方からどんどん若者がいなくなるという事です。
 こういう部分で、自民党は地方分権や、地方の衰退についてどう考えているのかと、追及する事も左派野党の仕事だと思います維新の会は地方分権と言いつつ大都市制度の言及しかありません。非常に偏っていると思います。
 野党には最低限、消費税反対ぐらいは頑張って欲しいと思います。