今日はマスコミのアベノミクス批判について考えたいと思います。

 もちろん、マスコミが社会の公器として権力を批判するというのは非常に重要です。

 世論を誘導できるマスコミ自体が最大の権力という見方もありますが。

 しかしながら、その批判はデータに基づき、正確で合理的でなければ国民の利益に繋がらないと思います。

 

 そういう報道姿勢が端的に現れていると思う動画の内容を紹介したいと思います。

 朝日新聞の記者が直接意見表明し、早稲田大学の若田部教授に完全に論破されているというのが興味深いです。

 http://www.ustream.tv/recorded/35566961 (Ustream.tv 35分ぐらいから)


 アベノミクスという言葉を新聞で初めて使ったとされる朝日新聞編集委員の原真人氏の意見

 「私はアベノミクスについては一貫して批判的なんですが、大きく言って、2つアベノミクスには罪があると思います。
 第一の罪というのは、まさに若田部さんがアベノミクスは第一の矢の効果が一番大きいとおっしゃった第一の矢の金融緩和が最も罪が大きいと思う。

 黒田日銀がやっている異次元金融緩和というのはお金をジャブジャブに刷るって事なんですけども、これによって実体経済でお金がまだ回っていない。賃金も上がってないし、消費にも結びついていない訳ですから、そのお金が資産市場に回るというのはある意味当然の結果で、今の株価の高騰が景気が良くなったと勘違いしてはいけないと思う。

 お金をジャブジャブにすればそういう事が起こる。

 ただし、それで事が済むんであれば、世界中の国でそれをやっているんですけど、何故それをやらないのかというのは副作用が非常に大きいからであって、アメリカのバーナンキさんが今、アメリカの景気だってまだそんなに足腰が強い訳では無いけれども、既に量的緩和の出口を目指す発言をして、足元では少しそれで混乱した。
 そういう混乱があっても、何でアメリカが量的緩和からの脱却を目指すのかというのは、量的緩和の政策に副作用が起きるからだと思う。
(以下省略 第二の罪はアベノミクスの目先の景気感で社会保障等の争点を参議院選挙後に先送りしたという意見)」

 

 早稲田大学の若田部教授

 「まさに典型的な(笑)朝日新聞の原さんの記事を伺いまして、心が和みました(笑)。はじめまして若田部です。まず、実体経済に影響を及ぼしていないって一体どこの国の事をおっしゃっているのかという事は正直疑います
 消費が増えてます雇用が4/1で有効求人倍率が0.9になっています。それで例えば、地方で雇用が悪くなっているという状況も全然ありません。
 今、高校を卒業した就職の内定率というのはほとんど全県で上がっています
 パートタイマーの時給なんかも上がっています。一時金も上がっています。ですから、所定内賃金みたいな正規の労働者の賃金が上がっているかと言えば、それは時間がかかります。
 しかし、市場に晒されている、一番敏感に反応する部分の賃金すら今や上がりつつある訳です。
 なので、実体経済に影響が無いというのは一体どのデータを見ればそういう事が言えるのかというのは非常に不思議です


 それで、何故、世界中の国ではアベノミクスみたいな事をやらないのかという事ですけれども、世界中の国は日本を除いて、ほとんどリーマンショック後にアベノミクスの原型にあたるような事をやってきた訳ですね。
 アメリカが何で今、量的緩和を手仕舞おうとしているかというと、まあ実際手仕舞うかどうかはわかりませんよこれは、けれども、彼らが言っているのは失業率がある程度のところまで下がって来た
 金融緩和の効果が出てきて、金融緩和をすると、原先生が仰ってるのと違うように、実体経済にやっぱり影響があったと、それで失業率が下がっているという事の効果を見極めて、それで出口に行くと言ってるわけですよね


 なので、まさに日本を除いた世界中の国がやってきた事を、我々が遅まきながらやっているという事になると思います。
 その意味で言うと、私は日本の政策転換というのはまさに「遅きに失した」という風に思います。
 ケネス・ロゴフというアメリカのハーバード大学の教授、この人は最近、財政再建の問題で論文のデータを失敗したというので色々と批判されてる人ですが、彼がダボスの世界経済フォーラムで何て言ってるかというと、「アベノミクスが言ってる事は正しい。インフレ目標なんてものは10年前にやるべきだった」という事。
 スティグリッツクルーグマン(補足:いずれもノーベル経済学賞受賞者)とか左派の経済学者と言われる人達も「アベノミクスは正しい」って言ってるわけですよ。方向性としては。
 それは経済学からはそうとしか普通は見えないと思いますよね。
 だとしたら、どうしてそういう政策が批判されて、他の政策がもてはやされているのかというのは一向にわからないですよ。だから、まずはその部分を変えなくちゃいけないんじゃないかと思います。
 この国の政策をきちんとした物にする。インフレ目標なんて物は世界三十数カ国がもう既にやっていて、その下で、リーマンショックですら克服しつつある訳です。何で同じような事が日本でできなかったのかという方が問題なんじゃないですかね。



 朝日新聞という大新聞で一貫して経済畑を歩んできた編集委員が事実誤認も甚だしいこのレベルというのは、正直、びっくりしました。マスメディアの本来の国民に有益な情報を提供するという役割を果たしているとは言いづらいと思います。

 若田部先生の意見の中で、補足すると、ロゴフさんの論文は「政府債務残高の対GDP比が90%以上の国の経済成長率が論文では-0.1%」というもの(政府債務が多ければ経済成長は不可能という意見)で、これが政府債務を減らす事を優先する緊縮財政派の重大な論拠となっていました。

 ところが、データの計算ミスで、計算し直せばプラス2,2%となり、批判を浴びているという事です。つまり、緊縮財政派でもアベノミクスは正しいと言っているという事が言いたいのではないかと思います。

 

 私はアベノミクスの第一の矢の金融緩和と第二の矢の財政政策を肯定していますが、単純に自民党支持者という事ではありません。

 自民党も産業競争力会議などでは、規制緩和が一部の資本家のための政策になったり、競争を激化させデフレ脱却に逆行するような議論があるのではないかと不安に思っています。

 以前の記事でも書いたとおり、労働者のための政策というなら、金融緩和賛成、財政政策賛成、規制緩和反対の政党があっても良いと思います。

 しかしながら、国政政党はいずれもそうではないという点は不満に思います。


 やはり、労働者の雇用のためには、まずはデフレ脱却が必要です。

 デフレで経済のパイがしぼんでいく中で、どうやって所得が増えるのでしょうか。税収が増えるのでしょうか。

 円安で所得が上がる前に物価だけが高くなる?5年前は1ドル120円ともっと円安でしたよ。

 資本主義国家である以上、政府の財政は経済成長で賄っていくしかありません。

 というよりも、デフレ脱却無し、経済成長なしで経済のパイが小さくなっていく中で、財政再建や社会保障の安定は不可能です

 株価が上がったのはアベノミクスの効果で成長したというより、今まで間違った政策で過小評価されていた日本の潜在力が再評価されたに過ぎない。まだ、その段階でしかないと思います。

 

 今後、本格的な景気回復、それによる財政・社会保障の安定を目指すべきだと思います。そのためには消費税増税は回避すべきでしょう。