G8が北アイルランドで開催され、昨日夜、「首脳宣言」が出されました。

首脳宣言では世界経済について、「成長の見通しは引き続き弱いままだ」としたうえで、「持続可能な回復を育み、世界経済の強じん性を取り戻すには、確固たる行動が必要だ」と、世界経済の回復へG8各国の協調を改めて打ち出し、財政再建や構造改革の必要性などを指摘しています。


 また、各国から日本の経済政策である「アベノミクス」に対してかなり久しぶりに注目が集まっており、安倍首相はアベノミクスについての説明を求められたり、講演を依頼されたと言うことです。

 ドイツを除くG8各国は日本経済復活が世界経済に良い影響を与えると期待しています。

 特に現在ユーロ圏の中で財政が逼迫し、ドイツから緊縮財政を求められているイタリアでは、積極財政派が巻き返した事もあり、非常に興味津々であったようです。


 一方で、G8の中で、唯一ドイツからは「財政再建」と「円安の懸念」が出されたようです。

 「現在の為替の状況で、労働コストが安い国から競争条件が不利になっているという指摘がある」と、「ドイツ車が競争で負ける」というのが本音かわかりませんが、多分、某近隣諸国が言いそうなことを代弁していました。

 政権交代前こそ1ドル79円とかの超円高でしたが、以前も書いていますように、5年前には1ドル120円もありました。そのタイミングでこんな意見があったのか疑問です。


 政府が直接の為替介入を行った訳でもなく、世界で唯一のデフレ国がデフレ脱却策をした結果、円安・株高になった。そもそも金融緩和は日本だけがやってるわけじゃありません。イギリス・アメリカ、当のドケチのヨーロッパ中央銀行も大胆な金融緩和でリーマンショック、欧州金融危機を乗り越えてきました。 余計なお世話という感じがします。


 余計なお世話をお返ししますと、ユーロのリーダーとして、ユーロ統一の利益を一番受けているドイツは、緊縮財政主義です。

 リーマンショック後の欧州金融危機でドイツは他国に緊縮財政を求めてきましたが、現在では緊縮疲れが指摘されています。

 ユーロ参加国はユーロという巨大な経済圏で関税など無く自由に通商できるというメリットがありますが、逆に、(各国はヨーロッパ中央銀行に金融政策を委譲しており、単独の金融政策が行えないため)参加国ごとに景気循環が異なるため、適切な金融政策が出来ない、ユーロ圏内で固定相場となるために、国家間格差が開くというデメリットがあります。

 そういうデメリットを受ける国(イタリアとか)が緊縮疲れでユーロ離脱という流れになれば、ドイツの国益に反する事になります。

 アベノミクスを続ける以上、今後も、ドイツとはこういう摩擦が継続する事でしょう。


 国債を自国通貨建てで発行し、金融緩和も自国の裁量で行える日本とは大きく違います。

 世界でこのような金融政策が出来るのは日本、アメリカとユーロに加盟しなかったイギリス、スイスだけです。


 朝の番組では「G8でアベノミクスが評価、一方で批判も」という見出しで、批判多めに取り上げられておりました。

 金融緩和についてはわからないからか、財政再建の部分がフィーチャーされていましたが、「目先の選挙での票目当て」「国民の借金なんだから将来のためにがまんしよう」というような話で消費増税を避けてはいけない、消費税増税が必要というのがコメンテーター全員の立場でした。


  財政再建と言いますが、政府には造幣権があり、金が足りなかったらお金を刷ってそれに当てることができます。先程も書きましたが、日本は世界中でそれができるごく少数の国の一つです。

 2年間の「異次元の金融緩和」とは、日銀が140兆円刷って、国債をその分チャラにするという話です。刷り過ぎれば信用を無くして、極端な円安になり、ハイパーインフレになり、国債価格が暴落し、金利が暴騰するという事ですが、では現在の国債価格、為替相場はどうなんでしょうか?

 国債金利は国債残高が450兆円のときには6~7%もありましたが、1000兆円近く増えた今では逆に世界最低の0.8%とかです。世界の景気が悪くなったら、財政破綻して紙くずになってもおかしくない円が買われ、円高になります。

 これはどういう理屈なんでしょうか。


 私は消費増税には反対ですが、リベラル派?政党の言うような「庶民の負担が重くなる」というような単純な事で反対していません。

 私は歴史を教訓にするべきだと思っています。税収よりも大事な事は、消費増税の翌98年には反動減による景気悪化でデフレ状態に陥り、その後15年経った今でも、デフレから脱却できていないのです。

 「消費税を増税したら政府は増収になる」と当然のように、考えている人がいるかも知れませんが、歴史を振り返ると、97年の消費税を増税した事で逆に全体の税収が落ちたという事実があります。

 全体の税収が落ちるなら、増税する意味は全く無かったと誰もが思う事だと思います。

 

 今後30年で人口減少が急速に進む日本で、デフレ退治ができる期間は限られていると私は考えます。

 当然、年々増える社会福祉費への対応もしなければなりませんが、まずはデフレ脱却が至上命題だと思います。

 そういう中では、消費増税をしない事の方がむしろ「将来の事を考える」事になるのではないかと思います。

 デフレを脱却し、資本主義経済の通常の状態に戻った後に、消費増税をすべきだと思います。