今日は日本のデフレ脱却について書こうと思います。

ついに日経平均株価がリーマンショック前の1万2200円を超え、今日は1万3000円を突破しました。

為替についてもリーマンショック前の1ドル104円から、一時期は75円まで上昇しましたが、今日は97円まで低下し、リーマンショック前の水準回復までもう一息という所まできました。

日銀の総裁が言う「質・量ともにこれまでとは次元の違う」金融緩和に経済が好感したという事だと思います。


 今回、日銀が供給するお金の量を示すマネタリーベースを1年間で60兆~70兆円ずつ増やし、残高を昨年末の138兆円から14年末には270兆円に倍増させるという事です。

量的緩和については、日銀が円を新たに発行して、政府の国債などを市中銀行から買い取る(買いオペ)という事です。
 

 市中銀行は国債などを売って日銀からお金を得るわけですが、これは各銀行の日銀当座預金という所に入ります。日銀当座預金には金利はありません(※1)ので、基本的にそのまま置いておくよりは株を買ったり、お金を貸したり、他の所で運用しようというインセンティブになります。
(※1ただし、法定準備預金を超える超過準備については0.1%の金利がある。この金利をゼロに下げるべきという意見があります)

 政府は国債を最終的に日銀に買ってもらうわけですが、国債の利子は日銀に払うものの、日銀の剰余金から国庫納付金というものでほとんど政府に吸い上げられ政府の一般会計の歳入に入るため、実質的には政府と日銀の間でお金が回っているだけという事です。
 つまり、通貨発行権を持つ日銀が国債を買えば、国は国債の返還からある程度開放される。ズルいと思うかもしれませんが、そういうものです。地方政府は別です。地方債はきちんと税金で返さなければなりません。

 かといって、無税国家になるまで国債を全て買って通貨発行するというのはそれこそハイパーインフレになるという事で、現実的に有り得ないので、限度があり、バランスを見る必要があります。
 戦前の直接引き受け(法律で禁止されている)と買いオペが違うところは、直接引き受けの場合は日銀の判断で売れませんが、買いオペの場合は日銀の判断で売る(売りオペ)事ができるという事です。


 今回の国の2%の物価目標とは政府が金融政策の目標を設定して、具体的な手段は日本銀行が決めるという事です。この手段の独立性こそが中央銀行の独立性です。
 2%の物価を上回ってもいけないし、下回ってもいけない。その手段として、日銀が量的緩和を決める。政府は手段には口出しできないという事です。
 
 為替については、そもそも、リーマンショック前には1ドル104円あったんだという事を忘れてはいけないと思います。
 以前も書きましたが、アメリカやユーロは2倍、4倍といった量的緩和を行っている中で、日本は10%増という量的緩和でありましたので、量が多い物は価格が安く、量が少ないものは価格が高いという需給の原則から円高になっている事は明らかでした。

 確かに、円安には輸入が不利になり、エネルギーの原料費が高くなる事はコストが増加するという悪影響があります。しかしながら、円安で物価だけ上昇して、賃金が上がらないという人が多くいますが、基本的に物価は賃金を含んだ額なのでそんな事はないと思います。
そもそも、輸入という物は海外で作られた製品を買って、国内で売るだけですが、逆に輸出は国内で製品を作って、そのために投資、雇用などを国内で行うという大きな違いがあります。
 輸入品が高くなる事だけを強調する報道には違和感を覚えます。


 一説によれば、日本とアメリカを比較して、同じ製品で有利不利が無くなるのは1ドル105円という事です。つまり、それより円高であれば、日本の輸出企業が不利になるという事であります。
ただし、製造業では当然アメリカよりもっとコストの安い国がありますので、それらの国と単純な価格の勝負でいけば、もっと円安にならないといけないという事に突き詰めればなります。
 それは無理があると思います。
 日本は貿易依存度もそこまで大きくないし、円高で対外直接投資を増やすべきだという意見や、円安は中小企業にとっては不利だという意見もあります。
日本は先進国として、105円ぐらいで止まるのがほどほどではないかと思います。


 私は為替の円安化よりも、これまでも繰り返し言っておりますが、デフレの脱却にこそ力を入れるべきだと思います。


 企業はバブル崩壊後、負債残高が残りました。しばらくは借金を返済していかなくてはなりませ
ん。その為、借りるどころじゃありませんでした。
銀行は金を貸す事で収益が出るのに、借りてくれる企業がいない。借りたいという企業は経営が 危ないところばかり。仕方なく国債を買おうという話になります。


 デフレで物の価値が下がるという予測が立つ時、合理的な消費者は今買うよりも来年買う方が安いので得だと思い、買い控えるようになります。
マスコミはこのままでは財政が破綻する、年金が破綻する、一部の政治家も一緒になって社会不安を煽りまくり、その結果、デフレはどんどん深刻化しました。


 その後、2000年代初めには実感無き経済成長と言われるような時期がありました。その時期は大企業を中心に企業が業績を回復しました。

しかしながら、その頃には既にデフレが蔓延している中、投資を行って利潤を増やす事が目的の企業も、デフレだから投資しても儲からない。利益は将来不安のために貯金しようとします。
 それが積もり積もって200兆円の企業の内部留保という形になりました。
 一部にはその内部留保を吐き出させろ、課税しろという乱暴な議論もありますが、そんな事をすれば、日本に企業はいなくなります。

 バブル崩壊を経験した事もあって、リーマンショックで欧米に比べると直接的に大きな損失が無かった日本では、もう既に企業や家計の債務超過というものは終わった問題です。
 まずは、今のデフレマインドを、物の値段が上がるという予測のもと、来年買うよりも今買ったほうがお得と思わせることが必要です。
 そのための、インフレターゲットです。2%に物価を上げますよ。1年後には2%高い値段で物を買わないといけないですよ。そのためには、日銀が金融緩和をします、政府は財政出動しますと言われた時に、市場が、家計がどのように反応するかにかかっています。
 私は日本経済は復活すると思います。