不快感を伴う景観と
不快感を伴わない景観
昨日(4/22)からの続きです。
修論で取り上げる予定の環境心理学に
レンズモデルという考え方が提唱されています。
→ Brunswik, 1944, 1956
景観(良し悪し)を判断するポイントには
近景と遠景に区分して次のような見るべき点が述べられています。
近景:対象物の高さ、対象物の密度、汚染度、危険度
遠景:周りとの調和、人との関わり、空間的圧迫、都市部か山間部か
このモデルに従って景観に対する良否を判断すると、
事例として取り上げた太陽子パネルの設置が
景観として不快感を伴うか否かに対して、
おのずと答えが出てきます。
このケースは、平成29年度 都市と緑・農が共生するまちづくりに関する調査
『静岡県のおける自然景観と調和した太陽光パネルに関する景観誘導施策の検討調査』
平成30年、静岡県広域景観検討協議会のデータを使わせていただきました。
不快を伴う景観(以下、資料からの抜粋あり)
道路沿いに設置されている設備は、景観を眺望する際に視野に入りやすく、
北杜市の景観計画に記載されている田園等の景観構成要素への影響が
大きいと考えられる。また、道路沿いの太陽光発電設備の中には、
パネルの角度が大きく、高さも人の身長より大幅に高いために
パノラマ景観の確認が困難なものがあった。
→ レンズモデルの近景に関わる要素
対象物の高さ、空間的圧迫感、山間部での景観調和等が
不快感に繋がっていると思われます。
また北杜市は近年多くの別荘が建設される地域であり、
太陽光発電設備が別荘地付近に建設される事例もあった。
→ 『地域愛着』に関わる心理的要因と推察、
場所に対する愛着が高い故に生じる不快感だと思われます。
こうした事例では、協議を通じて事業者と地域住民との間で
十分な合意形成がなされず、反対活動等が展開される場合があった。
→ リスク・コミュニケーションに関わる課題、
リスクに関する情報や意見を交換する相互作用過程が
未達であることによる不快感の創出が考えられます。
不快を伴わない景観(以下、資料からの抜粋あり)
牧之原市の景観及び太陽光発電設備に関する施策には、
2007年11月に景観に関心のある市民により景観づくり市民会議が発足し、
2007年度に2 回、2008 年度に4 回の会議と市民講演会や
先進事例の視察、意見交換会が行われています。
2009年3月に「牧之原市景観づくり市民会議提言書」が提出され、
新空港の開港後、周辺地域に更なる開発動向の高まりが予想され、
無秩序な開発による眺望の阻害や魅力的な景観が失われることが懸念され、
積極的に景観行政に取り組むことになっています。
ただその後、景観計画や条例等は策定されていないそうです。
本事例は代表的な景観である茶畑に隣接する太陽光発電設備です。
設備は非線引き都市計画区域に位置し、
住宅地に近い斜面上の茶畑と隣接しており、
地元業者が設置したとあります。
当該設備は周辺を森林や茶畑で囲まれており、
耕作放棄となった茶畑が利用されたもので、
一般的に使用される道路から一本奥に入った位置します。
日常的な生活の中では視界に入りづらく、
大きく景観を阻害している状況にはないと判断されています。
景観問題の良し悪しを判断するポイントとして、
環境心理学におけるレンズモデルの視点、
地域愛着に対する心理学的な視点
そしてリスク・コミュニケーションに関わる視点
→ 施工事業者と地域住民の間で話し合いが行われているか?
こういった多面的な視点が影響する中で
景観の不快感を発生されるか否かが決まっている(?)
と推定しています。
修士論文ではこういった多面的な視点から
太陽光パネルの景観問題を取り上げ、
心理学的な考察を加えていきたいと考えています。