真の経営者とは? | 都の西北 / 山梨 / 甲府 / 愛宕山からチトフナ(世田谷)に!

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2004年12月に山梨県に移住,15年を過ごした後に
2020年3月に世田谷に引っ越しました!

真の経営者とは?

 

 

 

最近まで読んでいた Edgar H. Schein の自伝
マイ・ラーニング・ジャーニー
 ~組織心理学の父が語る自叙伝~

 

読み終えてみて強烈なインパクトの記述があったので

ご紹介したいと思いました。

エドガー・H・シャインが提唱した組織心理学ですが、

元々は実験社会学心理学者であり、

その道の専門家ではなかったと述べられています。

MITに職を得たことで進路変更したシャインは

アカデミアと実学とのマージから

あの有名な『キャリア・アンカー』を提唱していますが、

この背景も興味深く、狙いとは逆の結果から導かれています。

 

朝鮮戦争後の捕虜交換に際しての「洗脳」の研究は

企業における研修と同じ効果であると考えたシャインは

「教化」や「社会化」という概念に理論を広げていきました。

ただ、調査結果はシャインが考えた通りにはならず、

調査対象者の就職後の態度には変容が無い人が多く、

個人のキャリアの軸は固定されている場合が多いとの結論、

『キャリア・アンカー』の発見に繋がります。

おおよそのことは多くの書籍に述べられていましたが、

ここまで詳細な記述は無かったように思うので、

これを知っただけでも本書の価値があると思います。

 

この研究過程で、「心理的契約(Psychological Contract)」も

見えてきた概念のひとつだったとあります。

組織が所属する社員に対しての暗黙の期待は、

組織と個人(そこで働く社員)の相互作用として繋がり、

組織心理学はこれをメインのテーマに据えたわけです。

 

キャリア・アンカーが個人を総合的に見るモデルや類型を提案

組織文化は組織を総合的に見る手段を提供

 

シャインの『キャリア・アンカー』8つあります。

 

1.   専門・職能別コアコンピタンス

 (Technical / Functional Competence

自分の専門分野をとことん追求するタイプで、
管理職になる事には価値を置かない考え方。

 

2.   全般管理コアコンピタンス

 (General Manager Competence

管理職を強く希望する人、組織の階段を上り、
責任ある地位に就きたいという強い出世願望を抱くタイプ。

 

3.   自立・独立Autonomy / Independence

規範に束縛される事に我慢できない、自分のやり方、

自分のペース、自分の納得する仕事の標準を優先します。

 

4.   保障・安定Security / Stability

安全の保障という課題がキャリア全体を通して支配的であり、

公的機関(公務員)に魅力を感じます。

上級職や要職に就かなくても組織との一体感を持つ事で満足できます。

 

5.   起業家的創造性Entrepreneurial Creativity

人生の早い時期からがむしゃらに夢を追いかけ、

新しく事業を起こすことを試してみたい、熱い思いに取り付かれています。

 

6.   奉仕・社会貢献Service / Dedication to a Cause

自分の価値観を核に据えた奉仕を前提とする仕事をしたい、

何らかの形で世の中をもっと良くしたいと言う欲求が強く、

自己犠牲を受け入れるタイプです。

 

7.   純粋な挑戦Pure Challenge

不可能と思えるような障害を克服する事が『成功』であり、

戦いや競争で勝つ事が全てと言う考え方です。

リスクに対しての耐性が強いことも特徴的です。

 

8.   生活様式Lifestyle

キャリアというのがそれほど重要ではなく、

生活様式全体を調和させ、条件つきで組織のために働きます。

自分の時間の都合に合わせた働き方を優先します。

 

最も多かったアンカーは 1.専門・職能別コアコンピタンス

本書で注目すべきは 全般管理コアコンピタンス の考え方です。

 

いわゆる『プロ経営者』とはどういった人であるか?

定義は以下を備える人とされていますが、
具体的にイメージしにくいですね?

 

(1) 分析的コンピタンス(頭脳の明晰さに繋がる素地)

(2) 対人関係およびグループ間を繋ぐコンピタンス(人格、器の大きさ)

(3) 情緒的コンピタンス(どんな逆境でも乗り越える強い精神力)

 

本書では、情緒的コンピタンスが必要となった決断に関する

純粋な事例として、インタビューで以下の3つが明快だったそうです。

 

(1)  50歳になる忠実な従業員で現在余剰になっている人を、
その年齢では簡単に仕事が見つからないことを分かった上で
特定して解雇すること。

 

(2) 2人の素晴らしい部下が持ってきた同じ程度に良い企画のどちらか
について、一方を選ぶことで他方が辞める結果になるかもしれない
ことを分かった上で決めること。

(3) 自らの組織が最終的に責任を負っている多くの人々の人生に
影響を及ぼすことを分かった上で、数百万ドルの意思決定をすること。

 

シャインが長きに渡るMITでのエグゼクティブ教育に

関わった結果得られた見解として、米国では上記のような決断が

できる人が真の経営者(胃が痛むような判断ができる人)だったようです。

ただこれは情緒的な部分に限った一部に必要な資質でしかなく、

CEO3つのコンピタンスをすべて持っている必要があるそうです。

非常に希少性の高い人と言えるので収入水準が高くなる。

つまり高い給料はその人の持つ希少性を反映しているとあります。

 

なんと納得できる説明でしょうか!

日本人にこういったプロの経営者がほぼいないことに

改めて腹落ちした感がありました。