パイオニアの上場廃止が物語る,技術変化の早さ,栄枯盛衰
今日(1/26)の日経新聞からです.
開拓者 自負が過信に → パイオニア上場廃止へ
技術先読みで誤算
設立80年の名門企業,技術では世界を引っ張ってきた
パイオニアが経営危機でファンドからの資金調達,
その額1,020億円,その代償がパイオニアとしての上場廃止です.
かつてのパイオニアは理系就職の憧れと言え,
新しい技術,世界最先端の技術にチャレンジできる
財閥系企業とは一線を画し,『とんがった技術のパイオニア』でした.
そのとんがった技術が更なるとんがった技術との競争を繰り返し
最終的にはとんがった先がとんがれなくなった,
とんがった技術はいつしか過去の技術になってしまうわけです.
とんがった技術の最初は高品質スピーカー,
音楽は最高の娯楽だった我々中年世代は憧れました.
1960~1970年代にかけて開発したセパレート型ステレオに始まり,
特にパイオニアを世界的に有名にした技術開発が
あのレーザーディスクです.今も我が家にはたくさんの映画が
レーザーディスクとして残っています.その数100枚くらい?
今の時代のDVDと比較すると画像は荒いのですが,
当時はVHSビデオとの比較,チャプターの頭出し機能などは,
とても画期的な新しい技術と言えました.
特に印象的なレーザーディスクに使われた赤色レーザーダイオー(LD)ドは
可視レーザー(Visual Laser Diode:VLD)と呼ばれ,その波長の短波化が
技術者としては競い合う技術の中枢的舞台と言えるものでした.
→ 光通信に用いられるLDが1.3um帯,1.5um帯と
目に見えない非可視,開発の舞台は違っていました.
波長の短波化はエネルギーが高くなる方向なので,
デバイスとしても作ることが難しかったのがVLDでした.
当時はまだ技術者だった自分の関わる技術範囲でもあり,
画像の解像度や,録画時間の長さを決めるレーザーの波長を如何に短くするか,
この開発はなかなか楽しいものだったことを記憶しています.
ちなみに,
レーザーディスクの赤色LDの発信波長:780nm赤色LD
今のDVDの赤色LDの発信波長:650nm赤色LD
ブルーレイDVDの青色LDの発信波長:405nm赤色LD
さて,レーザーディスクも凄い技術開発でしたが,
なんだかんだ言っても特徴的な技術の最高峰が
プラズマテレビだったと思います.
200年代は技術の戦いがテレビの大型化に移行
プラズマディスプレイ(PDP)vs. 液晶ディスプレイ(LCD)
結果はご存知の通り,PDPは撤退に追い込まれました.
今となっては家電量販店にPDP-TVを見ることはできません.
画像は圧倒的にPDP-TVの方がきれいだと思いますが,
→ 我が家のお茶の間は今も 55インチ PDP-TV です!
購入したのは2005年,ワールドカップを大画面で見たい,
そんな目的で大枚をはたきました(笑)!
技術の優位が必ずしも製品開発競争に優位に働かない,
かつてのVHSとβと同じですね.
そして技術の主戦場はカーナビに
世界初のGPS搭載カーナビを製品化して,
カーナビのパイオニアと言われたのが10年前くらいでしょうか?
ところがGoogleが無料の世界地図を提供,
スマホにナビ機能を設けたことから,ナビは無料,もしくは低価格化
パイオニアの製品に価値が見いだせにくくなったことは間違いありません.
もはやナビはあって当たり前のコモディティー製品となってしまいました.
これだけ技術の変革,衰退が早くなると,
もはや技術レベルで経営を方向付けることは難しく,
結局は技術革新の老舗,パイオニアが外資に変われることになってしまいました.
カーナビ,淘汰の波
4社中3社が上場廃止
→ アルパイン,クラリオン,パイオニア
JVCケンウッドのみが上場を維持できていますが
4社の時価総額はピーク時の1/4,カーナビは単体で生き残れない,
それをどういった技術で補うのか?
技術主体のビジネスは曲がり角に来た?
それを具体的に表すパイオニアの上場廃止,
外資に買われる会社経営ですが,これは更に加速されるであろうことを
予想することはそれほど難しくないように思います.
パイオニア,頑張れ,これからも応援したくなります!