模倣の経営学 実践プログラム版
NEW COMBINATIONS 模倣を創造に変えるイノベーションの王道
(井上達彦著 / 日経BP)
2012年の初版を大幅改訂して出版されました.
模倣できない仕組みが模倣から生まれるパラドックスを考える
前著(改定前初版2012年3月)から大幅加筆,追記された改訂版である本書は,
大学向けの教科書にも使えるような,模倣を研究する場合の手順や,
現場のビジネスにも適用可能なような段階を踏んだ説明で,
わかりやすく整理されており,表記にも種々に工夫が凝らされている印象です.
特に本書では前著から主張が大きく変わっているようではないのですが
,初版からの4年の経験が物語るように,
内容に深みが出ての改定であるように思いました.
この間,筆者はオハイオ州立大学のシェンカー教授の著書 『コピーキャット』の
翻訳本を執筆担当し(この書籍も必読!),
海外研究機関に所属して研究に深みを加えています.
そんな中,模倣を研究テーマにするひとつの大きな理由が改めて示唆されています.
模倣できない仕組みが模倣から生まれているというパラドックス
この指摘はまさに的確な指摘だと思います.
こういった視点で研究内容を経営学視点も織り込んでまとめている書籍も
あまり目にしていないとも言えます(模倣に関する書籍は多いが,
筆者独自のP-VAR分析も織り込んでのオリジナリティー).
だから内容が斬新的に感じるのだと思います.
『模倣』と言う言葉は,ある面軽蔑的な意味合いもあり,
肯定的に捉えにくいところから話は始まります.
とはいえ,技術進歩が積算的に進歩している現状を顧みても,
模倣が悪いとは言えないはずで,
世間はイノベーションを間違って捉えている一面があります.
それを体系立てて説明できていない事実は過去にも現在にもあるわけですから,
本書の指摘は非常に受け入れられるというか,納得できる主張だと思うわけです.
話は変わって,自身のビジネスを顧みるに,
本書の指摘通り,模倣を取り込んだ
(もちろん公開特許には抵触しない工夫はしている)技術開発や
事業展開,製品開発に繋がる人材育成は日常茶飯事であり,
自身の業務環境に当てはめても納得感はあります.
そういったビジネスマンの現状分析と,
業務における次の一手を考えるうえでも参考になる一冊だと思いました.
大変勉強になる書籍だと感じています.