凡庸な男が何故天下を統一できたのか?
歴史小説は単なる娯楽と言うよりも,
現代の会社経営に通ずる 『戦略』 を勉強する上で
とても参考になるのでよく読みます.
人・モノ・カネの使い方や配置を如何に適正化するか,
敵との対峙をどう考えるか,家臣の信頼をどう掴むか,
勝負のタイミングをどう図るか....
命がけの戦国時代からすると会社経営は
そこまでの真剣勝負とは言えないかもしれませんが,
そこにぶら下がる多くの人々を支えていく営み
であることは同じだと捉えています
他人の人生を背負っている重人の責任の大きさは一緒だと考えています.
凡庸な家康が天下を掌握できたのは何故か?
それは私利私欲に動かされず,万人の為に ではないかと?
特に秀吉との対比,身内の利を優先した乱行に
最後にはヒトがついてこなくなる
それが故に滅びてしまう豊臣家,無くなるべきして無くなった?
『天下は天下の天下なり』 と 家康は説きます.
世は個人のものにあらず,
すべての人の思いが結実した結果として捉えること
この考えに至る人が世をまとめることができる...
2014年10月までの日経新聞夕刊に連載されていた 『天下 家康伝』 は,
これまでの家康のイメージとは少し異なる描き方で,
信玄,謙信,信長,秀吉たち歴史に名を遺した
武将たちに比べるとあまりにも普通で,秀でた才が無かったかの描き方です.
特に信長,信玄との対比がそういったイメージが強かったように思います.
(この二人は非凡な,強烈な印象で描かれています!)
→ いわゆる,対比技法?
この描き方が実に新鮮で,
比較するのはやはり山岡宗八著の 徳川家康 でしょうか?
単行本全26巻,全部読めていません,道半ば...
コミック本全23巻,これは読み切りました!
山岡宗八の描き方は家康の生前(生母於大の方)から
大阪夏の陣が終わり天下泰平となるまでの全てを対象としています.
日経新聞(2015/5/3)のコラムに書かれているのと同じ感想ですが,
語りつくされたと考えられている家康の史観を
新たに問いたいが故の執筆だった印象です.
特に最後の部分,関が原から天下泰平に至るところは
非常にあっさり書かれています.
家康と言えば関ヶ原ですが,
あえてここに重きを置かなかったことも本書の特徴のように捉えています.
これで終わり?みたいな終わり方ですが,
それ以前のところに家康の人間臭さや凡庸さが
織り込まれているのが斬新さを感じる次第です.
火坂雅志氏の遺作となった本書,
筆者の死期を悟ったかのような力作であることは間違いありません!