日本 『半導体』 敗戦 (湯之上隆著 / 光文社) | 都の西北 / 山梨 / 甲府 / 愛宕山からチトフナ(世田谷)に!

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2004年12月に山梨県に移住,15年を過ごした後に
2020年3月に世田谷に引っ越しました!

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日本 『半導体』 敗戦 (湯之上隆著 / 光文社)

半導体ビジネスが凋落した原因考察を実体験を踏まえてフィールドワーク

筆者の湯之上氏は元日立製作所の半導体プロセス技術者,
半導体の最盛期である1980年から凋落の一途をたどった
2000年以降の体験を元に本書を執筆しています.
この間,エルピーダは破綻,ルネサスは一つになれずばらばらで
産業革新機構からの援助はあるモノの拠点閉鎖で虫の息.
この様な悲惨な半導体の歴史を体感している
筆者ならではの論点が面白いです.

特に,エルピーダ技術者へのインタビューを元に
考察が加えられているChapter_4 は面白いですね!
異文化の会社を単にたし合わせてもうまくいかないと言うフィールド調査,
事例研究は大変優れた内容だと思います.

筆者自身の古巣日立が関わった歴史を良く認識できていることもあり,
調査の結果,出てくるであろう仮説からの検証結果は概ね予想通り,
その結論も実に納得できるモノになっています.

冒頭にもありましたが,
半導体のバックグラウンドがない社会科学者が同じ形態で
フィールド調査をまとめていたとしても,
もしかしたらもっと的外れな見解を出していた可能性もあります.

また,ビジネスとしての半導体合弁企業の採るべき指針は
日立とNECのような大企業が対等に権利を主張する限りうまくいかないので,
まずは一本化しなければならないと言うこと.
当たり前と言えば当たり前,
組織の舵取りを2枚看板で統率することはできない、
まず成功しないですね!

 → 2社の対等合併はビジネスの視点最悪
   どちらかが吸収合併される方がうまくいくことが多い!

これらの問題を坂本氏が社長になってから
NEC流に統一して組織としてようやくまとまったのが
2002年以降と言うことも納得できる検証結果です.

加えて,三菱電機からの出向者の影響に関する考察も面白いと思いました.
技術的には異質の三菱技術陣の影響は研究一筋の日立&NECとは異なり,
これが両社のバッファーになっていたとの調査結果は納得いく結果ですが,
なかなか表面には出にくい話であったように思います.
これをフィールドワークから導いた筆者の努力はなかなかのモノです.

経営面では坂本氏の社長就任によるマネジメントが,
技術面では三菱出向者による技術融合の効果が
エルピーダ復活の大きな要因だったと考察しています.
とは言え、結局は破綻してしまいましたが…(涙)

半導体業界に身を置く人には本書は結構面白いと思いますね!

番外編と言いますか,世界1周旅行の話しもあり,
半導体に関係あるような無いような?
筆者なりの視点で世界各地の日本製品,特に携帯や電化製品の現状に触れ,
考察を加えておられる点は,足で稼ぐフィールドワークを
しっかりやられているとの印象を持ちました.