モノづくりとしての農業経営と製造業との対比 | 都の西北 / 山梨 / 甲府 / 愛宕山からチトフナ(世田谷)に!

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2004年12月に山梨県に移住,15年を過ごした後に
2020年3月に世田谷に引っ越しました!

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モノづくりとしての農業経営と製造業との対比

今年も開講された山梨学院大学経営学研究センターのワークショップ
今日(5/17)が2年目の第1回の会合でした.
今年から年会費を納める必要があり(会費:¥10,000 は寄付みたいなもの)
ちょっと割高になったものの,比較的良心的な費用かと思い納入済み,
元を取るべく真剣に聴講しようかと...

 今日のお題は 『農業は特殊な産業か?』
      副題:製造業との相対化を目指して

講師は 東秀忠 准教授(現代ビジネス学部),
以前にも紹介しました東大経済学部でモノづくり研究をやられておられる
藤本隆宏教授のお弟子さんです.
藤本先生は『モノづくりアーキテクチャ』で多くの論文発表をされており,
小生が MBA_修論テーマに取り上げた基本理論を提唱されています.

今日のお題は『農業』ですが,基本理念は製造業に端を発しており
 → 農業と製造業を共通のバックグラウンドから検討し,
   そこから違いを理解する → 良い経営をするにはどうすればよいか!

ものづくりとしての共通性とは,『人工物』を生み出す とあり
起点はどうやら製造業に後れを取っている農業側からのアプローチが
農業として製造業に学ぶ点はあるのか,これは裏を返すと農業の視点も
製造業に応用できる何らかのメリットはあるであろう...ということ,
この点の深堀が本テーマの狙いだったようです.

農業の特徴は製造業に比較していくつかあげられます.

・製造業の『設計の視点』よりもモノづくりに重点が置かれている.
  → 最終製品の具現化が売り上げのすべてといえる.

・予想不可能な不確定要因の存在が大きい.
  → 天候,害虫,災害など,予想外の事態が危機を招く
  → 生産管理の精度が上がりにくい

・作ることもさることながら,売ることの重要度が高い.
  → 長期保存ができず,しばらくすると腐ってしまう

・歩留まりが高いからと言って収益は上がらない.
  → 豊作時には収穫物の値段は下がることが一般的

でもよく考えると,製造業のモノづくりも同様のことが当てはめられます.
外部環境依存の不確定要因は農業だけではなく,製造業にもあり
直近でいえばあのリーマンショックがその典型,
この予想を超えた景気の減衰で潰れた会社は何社あったことでしょう?
つまり,農業も製造業もモノづくりの視点は同じと言えなくはない?
ということなのでしょうか?

製造業から農業への新しい展開に,外部環境からの不確定要因を
排除する方法として 『植物工場』 を用いた生産方法があります.
近年注目されていますが,残念ながらなかなか収益が上がったという
話が聞こえてきません.やっぱりランニングコストが問題だと思います.

農業法人も直近多数立ちあがっていますが,その売り上げ規模は数十億,
これに対してちょっと大きめの工場,特にクリーンルームを作るとなると
償却が終わった工場と言えど,そのランニングコストは1億円 / 月くらい
なかなかこのランニングコストを吸収できる農業での売り上げは
現状までには期待しにくいところです.
 経費を考える上での企業規模の違いは農業と製造業における
 大きなギャップではあります.

製造業が農業から学ぶ視点として述べられていたことに
5次産業化の実例が挙げられていました.

小生は中学校時代に3次産業までしか学んでいませんが,
新しい概念は次々に現れているようです.
4次産業は情報通信産業や技術開発等,エネルギーの大量消費を
伴わない産業をさすそうです.
5次産業とは(これはよく知らなかったのですが)第1次から第4次までの
産業形態を自由に融合させ,これまでにない不定形産業を生み出す産業を示し,
ここは農業の方が進んでいるということです.

 特に製造業で融合されるべき部分が 売ること との融合だそうです.

自動車にしても家電にしても売る部分は分離されており
自動車はディーラー,家電は量販店で売られています.
この部分をうまく融合すれば消費者にとっては魅力的な購買が可能で
その一例としてドイツの AUTOSTADT ERKUNDEN が紹介されました.

 http://www.autostadt.de/de/autostadt-erkunden/

クルマの購買をより消費者に対して魅力的にした
展示場的な要素を持つ販売機能を持つことだそうで,自分の買った車が
アミューズメントパークのパビリオンで受け取れるそうです.
例えて言えば,自分の買った車会社のパビリオンがディズニーランドにあり
ここで新車の納品をやってくれるイメージでとらえれば良いかと,
こういったイベントは消費者としてはウェルカム,面白い話だと思います.
ただ,日本の場合はドイツのようなシステムは法律的に無理だそうで,
この点には規制緩和を拡大していく必要があるようです.

次に6次産業,農業や水産業の第1次産業が食品加工,流通販売にも
業務展開している形態を表し,経営の多角化をこのように呼ぶとのことです.
 1+2+3=6(すべての産業を足すと6になる!)
この点も農業は製造業より進んでいるようですが,実はこうしないと生き残れない
現状の農業の苦しさがそこにはあるようです.

農業はモノづくりにおける 『テクニカル・コア』 が弱い,
この強化のために経営者がかなり苦労しているのがまさに現状の農業であり,
農業における本社機能(まだ中小企業レベルですが)は
現場よりはかなり強いとの見方をされているようです.

 製造業はその逆,現場が強すぎて経営が弱いそうです.

 一言でまとめると,『他山の石に学ぶ』ということでしょうか?

 大変勉強になった研究会でした.