経営者の視点 | 都の西北 / 山梨 / 甲府 / 愛宕山からチトフナ(世田谷)に!

都の西北 / 山梨 / 甲府 / 愛宕山からチトフナ(世田谷)に!

2004年12月に山梨県に移住,15年を過ごした後に
2020年3月に世田谷に引っ越しました!

イメージ 1

経営者の視点 

今日(7/15)の日経新聞 企業欄に 
 『フィリップス復活の教訓』 という記事がありました.
かつて日の丸家電の最強ライバルだったフィリップスが
 AV機器撤退, アジアへの事業売却, 法人向け柱にビジネス展開, 
ビジネスモデルの変更をすることで収益の悪化から抜け出したそうです.

フィリップスは正式社名を
 『ロイヤル・フィリップス・エレクトロニクス』 
   → 『ロイヤル・フィリップス』 に変更したそうで,

この狙いは 「もはやエレクトロニクス企業ではない」 という社内外への宣伝,
大胆な事業構造の組み替えを行った結果がこうなったとのことです.
具体的な事業構造の組み替えは

 ・半導体や IT サービスの切り離し
 ・会社規模の縮小(25万人@1998年 → 11万人強,人員を半減)
 ・医療機器事業を会社の柱にするために大型買収を英断

フィリップスのリストラは非常に常道と言えるモノで
「アジアパワーの活用」, AV機器製造からは撤退,
ブランド供与による収益を構造化しています.

 テレビ事業は台湾のTVテクノロジーの合弁会社に譲渡
 オーディオ事業はの本の船井電機に売却
 携帯電話ビジネスは中国企業に売却
 液晶事業パネル事業も最終的にはLG電子に売却

フィリップスが凄いところは,非戦略事業を売却する上で
ライバルのアジア企業を有力な買い手と見たことです.
通常の場合,かつての花形ビジネスを落ち目とは言え,
簡単に売る事ができないのが企業経営の常(株の損切りみたいなモノでしょうか?)
これを冷静にやってのける経営トップの判断は簡単そうでなかなか真似出来ない,
それができない日本との差はどんどん広がっているように感じますね!

フィリップスCEO,フランス・ファン・ホーテン社長のコメントに
経営者の資質が見えてように感じました.

 『会社の歴史には誇りを持っているが,感傷的になってはいけない.
  必要な判断を先送りしていていれば会社の存在意義は低下する.
   大きな外科手術に抵抗したり反対する人がいるのは当然だが
    それを説得し,改革の必要性を理解してもらうのが経営者の役割だ.』

 『様子見 や 待ち は 経営者の選択肢ではない!』
 
半導体事業の切り離しは年数をかけて,段階的に実施しています.
 (これを時間差スピンオフと呼ぶそうです)
顧客や社員など,ステークホルダーの不安を取り除く事をまずは重視,
良い関係を築いた後に事業の完全切り離しを行う段取りだそうです.

この記事を読んでいて,先日読み終えた,
ジャック・ウェルッチ著 『我が経営』 に書かれていた
内容がかなりダブりましたね!

GE も半導体事業をかつて売却しています.

半導体絶好調の1988年に現状(2012年の不調)の半導体ビジネス
(2013年,日本国内の大手は総崩れ,エルピーダ破綻,ルネサス左前)を予想,
その特徴を景気循環型,製品のライフサイクルが短い,
利益率がほとんどの企業で最低と表記しています.
また,ウェルッチはこの事業が好きではないと断言しています.
 (収益に対しての投資規模が大きすぎるところに課題がある!)

この書籍が書かれた2001年でさえまだこの判断が出来ていなかった企業が
ほとんどであったことを考えると,業績といった視点で総合電機企業が採るべき
戦略のお手本を示したことになります.
ウェルッチの並外れた経営センスはこういったところからも伺えますね!

話を戻して,国内家電ビジネスを展開するパナソニックや
シャープと対比すると,その違いは歴然かと?
両社ともに事業構造を大きく変更するところまでは出来ていません.
パナソニック,シャープ共に家電事業が収益の柱であり,
これ以外のところは収益面から見て大きく育った事業はまだありません.
ただ道半ば,一部にその可能性はあるようで,
パナソニックは B to B ビジネスへの変更を大々的に提唱しています.
収益が黒字かすれは,ビジネスモデルの変更に成功したと言われるように
なるんでしょうが,もう少し時間はかかりそうですね.

さて,この先生き残っていく電機業界における企業はどこになるのか
ちょっと予想してみるとおもしろいかもしれません.

まず,三菱電機,半導体からの撤退,携帯電話事業からの撤退は見事で
ロボット,エレベーター事業の強みをオーバーヘッドの抑制効果から選択し,
重電(電力関連)事業も安定した収益構造を持つ事から,
時代の変化に追随した適切な事業モデルの選択が出来ているように見えます.

あとは,少し遅れはあったモノの日立製作所,
HDDビジネスの売却は正解だったと言えるでしょう!
PDP, 半導体事業も売却した訳ですし,さすが総合電機企業と
言われるだけあって,その他の業界でも収益を上げられる事業がそれなりにあり,
優れた,バランスの取れた事業ポートフォリオができあがっているように見えます.

こうやって顧みるに,半導体事業を辞めた企業の
業績回復が著しいことは,予想はしていましたが,
なかなか厳しい現実とも言えます.

事業の収益安定,もしくは会社を常に黒字体質にするには
かつての成功体験に引っ張られないドライ且つ冷静沈着な判断が必要で
この視点からも企業経営のトップは技術者でない方が良いかもしれません.

技術は固執無しには大成しませんが,
その背景にはコスト試算が幼稚である場合が少なくありません.
技術者が自身の研究エリアに執着することは至極当たり前ですが,
事業としての可能性を,収益面からも冷静に判断しなければならないことも事実です.

 フィリップスではかつては技術者の存在が大きすぎたと言われていたようですが,
  近年では事業企画やマーケティング,営業といった部門にも発言権が
   増しているとのこと,これも時代による変化の潮流かもしれません.

 良いものであっても,ほっておいて売れる時代は終わっているようですし...