夢幻花(東野圭吾著 / PHP)
推理小説の中にも,若い人へのメッセージを織り込んだ力作!
話は2つのプロローグから始まり,
これが本編に繋がるであろう事は読み始めから予想できましたが,
それはそれでおもしろかったですね.
何がどう繋がるのか,この点も本書を興味深く
読み続けられる魅力の一つだったように思います.
この手の小説,読者を如何に飽きさせないか,
実に意識して書かれたであろう事は容易に理解できます.
実は,会社の知人に勧められて読み出した本書,
自身の嗜好だけでは読めなかった分野かもしれません.
推理小説というか,サスペンスというか,
この手の小説を読んだのは久しぶりでしたが,
たまに路線を変えて読書するのも楽しいものだとも思いました.
推理小説としては非常によく考えられた組み立てで,
主人公を取り巻く人々がどんどん繋がっていく当たり,
村上春樹の小説のような印象も無くはありません.
最後にあるエピローグ,
主人公の秋山梨乃が今回遭遇した事件をきっかけに再び水泳を始めるとあり,
才能あるモノはそれをやり続ける義務があるという考え方もあると言っています.
それに対して当の本人はそれに気づかず辞めてしまったり,
それが周囲からどう見られているかを意識できなかったり,
ある面生き方についてのひとつの考え方を示唆しているように感じました.
そんなメッセージを強く意識した結末は,
若い人に向けた筆者のメッセージのように感じました.
推理小説であっても,単に娯楽小説で終わることなく,
読み手へのメッセージを意識した組み立てはさすがだと思いました!