前回のブログでは刑務所内の処遇の変化について書きました。

三重刑務所に収監されている子から久々に手紙が届き、受刑者の「さん」付けが始まり行進が無くなったと書かれていました。

 



読者のみなさんのご意見はどれも私の心にグッとくるものがありました。ぜひ紹介させてください。

 

犯罪を振り返り再犯しないための教えが不可欠

 

「さん」付け改革は、受刑者ではなく刑務官の意識改善のためではないでしょうか。
受刑者は法に触れたとはいえ、刑務官が虐めたり虐待したりしていいわけじゃありません。世間一般の偏見とは違い、公の人間が差別的取扱いをすることに問題があるのだと思います。
個人が偏見を持っていても、それは個人の問題ですが、社会を代表する立場となればそうはいきません。
欧米の刑務所は待遇が良いし、再犯率も低いとどこかで目にしたことがあります。
やたら厳しくするのがいいとは思えません。「さん」づけも待遇改善も悪くないです。
しかし、受刑者の教育制度は絶対に必要だと思います。ただ、職業訓練や社会復帰訓練の前に。犯罪を振り返り、再犯しないための教えが不可欠ではないでしょうか。
たぶんそこが、違和感の正体かなと思いました。

 

いつも的確なコメントをくださる読者さんのご意見です。

職業訓練や社会復帰訓練の前に、自分の犯した罪と向き合い、再犯しないための教育が必要だとおっしゃっています。

その通りなんです!なぜ法務省は、刑務所はその一番大切な教育をしないんだ!!!と湯浅はいつも憤っています。

殺人の受刑者にもこれといった教育がなされていないことを知った私は、刑務所はただ犯罪者を閉じ込め作業をさせる場所なんだと思いました。

今の活動をするきっかけとなった一つの出来事でもあります。

 

罪名が殺人でも教育は無し


私と釈放前指導で一緒だった罪名が殺人の受刑者に、どんな教育が行われていたのかを聞いたら「何もなかったよ」と言いました。

何度も過去ブログで書いていますが、命を奪われた方のご家族の気持ちや、出所後の贖罪について考えさせるような教育が行われて「いるのだろう」と、私は勝手に思っていたのです。
 

実際は違いました。何も行われていなかったのが現実です。

※私が服役していたのは栃木刑務所で、釈放前指導を2016年10月に受けています。殺人の受刑者から話を聞いたのはこの頃ですので、現在は教育が変化している「可能性がある」ことを付け加えさせていただきます。

 

再犯しないために自分が出来ること、やらなくてはならないこと、なぜ犯罪を犯したのかその根っこをとことん掘り下げること、これらを教育に取り入れて行かないと再犯率は下がらないと湯浅は思います。

 

理解されないなら良くも悪くも関心を向けられない方がいい

 

旦那さんのように「ふ~ん」ならまだマシ。問題なのは理不尽に排除されたり攻撃されたりすること。悔しいけど泣き寝入りするしかない前科者やその家族近親者もいると思います。
「犯罪者のくせに」、これはもう私のような人間にとっては最大最強の切り札的な言葉で、そう言われれば何も言い返せなくなります。差別や偏見を向けられるくらいなら無関心でいてくれた方がまだマシ、と思ってしまうのも本音。決してそれでいいとは思いませんが、どうせ理解されないのなら良くも悪くも関心を向けられない方がいい、そっとしといてくれ、放っといてくれ、という気持ちを持つ前科者も少なくないと思います。
私は旧監獄法の頃も、現行法に変わってからも両方経験しましたが、法改正後に私が感じた緩さより更に緩くなっていることは各方面から聞きますし、本当にこれでいいのかな、本当にそれが反省を促し、更生や社会復帰に必要なことなのかな、というのが正直な思いです。
受刑者に対する暴行や暴言は以ての外ですが、だからと言って「さん」付けなんて小学校と同じ方法で問題が解決するのか、甚だ疑問ですね。

 

こちらは元受刑者の方のご意見です。

関係者以外に攻撃されるいわれはありませんよね。私を攻撃できるのは被害者の方と被害店舗の方、私が直接迷惑をかけてしまった人だけだと思っています。

どうせ理解してもらえない、と卑屈になるのは決して良いことではありませんが、この方は出所後にそれだけの偏見・差別・攻撃を受けて来られたのでしょう。
 

緩くなることで本当に反省を促せる?

 

ここです。ルールが緩和されることで受刑者の反省を促せるのかどうか?

促せないですよね。今回の「さん」付け改革は1つ目のコメントに書かれている通り、受刑者ではなく刑務官の意識改善なのですから。

日本の刑務所は受刑者に軍隊のような動きを強制することで、「健全な精神を育む」意味合いが強いと思っています。

欧米と比べ精神論・根性論が根強いのが日本です。

行進が無くなることで受刑者は間違いなくだらけると思いますが、新法が完全に浸透すればだらける人も少しずつ居なくなるでしょう。

 

旧法と新法が入り乱れる現在が教育をしにくい環境を作っていると感じます。

 

出所後が怖く不安でしかなかった

 

元受刑者とそうでない方が差別なく共に暮らすというのは現実的には難しいように思います。私も、もし犯罪とは無縁な人間だったら元受刑者と知った時点で距離を置いていたと思います。
私は出所後、元受刑者として雇って下さった会社に勤めたのですが、差別があり凄く辛い思いをしました。他の方と同じように接してくれるだけで良いのに、赤ちゃん言葉で話されたり無視や嫌がらせなど、人間ではないような扱いを受け耐えられずに逃げてしまいました。書かれているように、自分から明るく挨拶をしたり話しかけたり歩み寄ろうとしたのですが現実は厳しすぎました。
このような経験から外で働くのは無理だと諦めようと思いました。その時に出会ったのが湯浅さんのブログです。そして「怖い・・怖い・・」と泣きながらも湯浅さんのブログを読んで安定剤を服用して一睡もしないまま再び外の世界で頑張って働き始めました。
もう既にブログに書かれていますが”元受刑者で立派に社会復帰している人の話”というのが一番力になると思います。服役中、社会復帰を完全にされた方の話がなく出所後の事が怖くて怖くて不安でしかなかったです。

 

この方も元受刑者です。書かれている内容を読むと本当に腹立たしいです。

元受刑者と理解した上で会社が雇用したにもかかわらず、この方が元受刑者だと社員に個人情報を漏洩させ、会社はいじめを黙認した。

自ら歩み寄ろうと努力されたこと、自分はこういう目に遭っても仕方がないと思いながら働かれたと思うと涙が出ます。

私の自論ですが、虐げられている人が自分より弱い立場の人をさらに虐げます。

受刑者ではなくても犯罪を犯したことが無くても、性根がねじ曲がった人間はいます。そんな人たちに振り回される時間が非常に勿体ないので、逃げて大正解です!

 

出所後の不安を減らし希望を持つ

 

私も受刑中、この方と同じように社会復帰を恐ろしく思っていた1人です。

ここから出てやっていけるのか?ろくに働いたことが無い、夜職や風俗・パチ屋でしか働いた経験が無い、学歴も無い、しかも刺青だらけの37歳(当時)、こんな私を誰が雇うの?

子供を作ったとして、私が受刑者だと周囲に知られれば間違いなくいじめに遭うだろうし、虐待を受けてきた私が自分の子供に虐待しないとは言い切れない、いやむしろ連鎖するからきっと虐待するだろう。

外に出るのが怖い。やっていける自信が無い。

そう思っていたときです。立川拘置所の矯正指導日で進藤さんの講話が流れます。

講話を聞いた私は進藤さんから大きな希望をいただいたのです。

こんな私でも、学歴が無くても刺青があっても、人生をやり直せるかも知れない……!

 

更生と希望はセット

 

自分のYouTubeチャンネルでも、街録chさんでもTV取材でも、どんな媒体の取材でも同じことをお話しするようにしていますが、更生と希望・勇気はセットなんです。

 

 

 

 

自分の過去を振り返り自省することは、1つ目のコメントにもありますがとっても大切なことです。

人生の振り返りをせず己の罪と向き合わずに出所した人は、必ず再犯するとまで言いませんが、その後の人生は決してうまくいかないですし、人間関係で躓く人がほとんどではないかと思います。

自分を見つめるって辛いんです。辛い過去ややらかしたことは、出来ることなら封印したいし思い出したくもない。

辛いからこそ、その先に希望が見えないと人生の棚卸しができないと思います。

更生と回復、希望はセットなのです。

 

 

コメントを読んで決意を新たに

 

今回いただいたコメントを読んで私が思ったことです。

・今の活動をコツコツ続ける
・表に出過ぎることを快く思わない人もいる
・元受刑者の想いを代弁できるのは実名顔出しをしている元受刑者
・一般の方でも理解を示してくださる方は居る
・希望は絶対に必要
・進んできた道は間違っていない
・苦言を大切に、謙虚に生きる
 

前回のブログを書くことで自分に何ができるか、何をやるのかが明確になり、更に目標を絞ることができました。

皆さんのご意見が湯浅を育てます。これからも忌憚のないご意見をどしどしお待ちしております。

コメントをくださった皆さん、本当にありがとうございました!