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昨日久しぶりに私のフィレンツェのママとも言える人に会って昼食を共にした。この人は初めて私がフィレンツェに来た時のホームステイ先の大家さんでその時も今もサンタクローチェ広場の横の素敵なお家で一人暮らしをしている。
彼女には60歳に近い息子がいる。実はもう一人息子がいたのだが、若い時に亡くしている。この息子さんと最愛のご主人を結構若くして(今思うと50代の初めで)見送ったという経験については、私は事実のみ知っているだけで詳しくは聞いたことがない。それほど、彼らのことを話すのはタブーといった感じだったから。
そんなハードな経験をしたにもかかわらず、彼女は80代となる今でも無茶苦茶元気だ。元から早口でよく喋り、記憶力が素晴らしくいいのだが、それは今も全く変わっていない。会うのは一年に数回といったところなので会うたびに新しく起こった不幸な出来事(車に引かれた、手術をした、どこそこが痛いなど)を報告してくれるのだが、それがほとんど信じられないくらい元気で矍鑠としていておしゃれで可愛い。
昨日は彼女の息子Sも昼食に同行した、(というか彼がおすすめの食堂に行くことにして、彼の奢りだった)。想像して欲しい、60近いイタリア人男性。職業は大工的な手仕事全般。移動は使い古された自転車で身なりは穴が空いているペンギン柄の色褪せた青いTシャツとクタクタのバミューダパンツ、そしてサンダル。
かつてはモデルもしたという、薄茶色の巻毛は今も健在でよく見ればまあ魅力的な風貌なんだが彼の人柄と言うことと全体の雰囲気が相まってなんだか独特怪奇な感じである。私は昔からこの人のことが全く理解できたことがないのだが、昨日会って思った。
彼は本当の自由人なんだなと。
私自身も日本の親族からは自由人と言われているらしいがそれは日本とイタリアと好きなように行き来したり会社勤めじゃない仕事をしてたりと、そこそこの自由を謳歌しているからだろう。自覺もしてるし、それで満足している。
しかし彼はもう存在自体が、自由な人。わたしたちと食事するために自転車でフラっときて、その場で折り紙の花を作って私にプレゼントしてくれた。彼は手先が器用で折り紙が大得意だという。持ち歩き用の折り紙の紙束を懐からすっと出す。
これはうちに帰ってからちょうどいい”花瓶”があったので挿してみた図。
なぜか茎となる楊枝も持参しているところがさすが。
「イズミ、すごく可愛いねー。可愛い君にはお花を作ってあげるよ。」
すごいイケメンとかが言っているんじゃなくてこの見た目の(写真が出せないのが残念すぎる)おっさんが言う不思議さよ。まるでルパン3世のようにつかみどころのないことばかり言う。
食堂での食事が終わると、店を出てそのすぐわきの石段に腰掛けて手巻きタバコを吸う。ここが彼のお気に入りの定位置なんだそうだ。
「あーーたばこって美味しい」
「これから帰ってお昼寝しよっと」
彼曰く、仕事では引っ張りだこで「彼ら(客)が僕を必要としてるんだ、僕が客を必要としているんじゃない。今あの金持ちアメリカ人の家に行くのは気が乗らないから今日は遅くに行こうっと」とのこと。
ワークライフバランスっていう言葉はこの人には無用だ。
自分の好きなように生きている本当の自由人。そしてなんだかすごーく豊かに見えた。
こういう人がどんどん増えて当たり前になればいいのになーと思った。