加計学園の獣医学部新設を巡る問題で、前川証言をもとにした各種報道を見ていたら怪しく思うという人々の想いは分からないでもない。

 

たぶん、疑いの目で見ている方のこの問題に対するイメージは、安倍総理または安倍総理の周辺の方々は総理と関わりのある加計学園に有利になるように働きかけたのではないかと感じているのではないでしょうか。一強化している安倍総理がトップダウンで自らの友に利益誘導をしたと。

 

ただ、本当にそんな単純な話なのでしょうか。そして、この問題で浮上する国家戦略特区もやり玉にあがっているわけです。

 

そもそも、この国家戦略特区という制度はトップダウンの仕組みではありません。どちらかというと、ボトムアップ型の制度となっております。名称こそ異なりますが、私も民主党政権時代に特区の陳情にも対応していたのでわかりますが、特区制度は国主導というよりも、やや地域主導的な要望でした。

 

そもそもが、この獣医学部新設の動きは公務員獣医師が不足している愛媛県が要望したものだ。国家戦略特区は地方自治体が企業などの民間と一緒になりプロジェクトを進めていく制度となっております。加計学園が自ら大学を作りたいと言い出したのでもなく、国が加計学園を愛媛に持ってこようとしたわけでもなく、どちらかというと大学誘致の流れの中で加計学園が動いたというのではないでしょうか。

 

国家戦略特区の指定基準の中に、ア)区域内における経済的社会的効果が大きいこと。 イ)全国的な効果を含め当該区域を超えた波及効果が大きいこと。 ウ)プロジェクトに先進性・革新性等が認められること。 エ)区域内の地方公共団体の意欲・実行力が高いこと。 オ)プロジェクトの実現可能性が高いこと。 カ)1に掲げるテーマに応じたインフラや環境が整っていること。が挙げられてますが、少なくとも、ア)、エ)、オ)、カ)は基準を満たしていたのかもしれません。

 

加計学園以外にも獣医学部新設を求めていた京都産業大学は漏れた事から、総理と仲の良い加計学園が優遇されたという向きもあるが、『国家戦略特区の指定数については、日本再興戦略において定められた 「特区の数は国家戦略として必要な範囲に限定する」という趣旨に従 い、厳選することとする。』という事からも獣医学部のない四国が戦略的に選ばれたのだろうし、そもそも獣医学部新設を認めたくない日本獣医師会に配慮した結果なのかもしれない。

 

そもそもが、この問題はそんなにきな臭い話ではなかったものが、「総理の意向」という言葉が悪い意味で一人歩きし、本来はその「総理の意向」というものは「国家戦略として進めたい。」というものだったはずなのに、「総理のお友達に配慮しろ!」という別の意味に一連の報道ですり替わったように私には思えてなりません。

 

そして、ここにきて、この問題を更にエスカレートさせているのは「調査はしません!」という政府の頑な態度です。この態度をみて、多くの方は「何かを隠蔽しようとしているのではないか!」と疑心暗鬼になり、それがこの問題に対する世論調査の結果にもなっております。

 

もともとは、この問題を追及する民進党の前進である民主党政権でも進めようとしていた案件ですし、民主党の議員も動いていたわけですから、立場が変わったら「けしからん!」というのは、どうも腑に落ちません。だからこそ、政府は逃げずに、堂々と対応して、調べて欲しい欲しいと思います。しっかりと話して伝えれば、多くの方が持っている疑念は払拭されるのではないでしょうか。

 

また、「国家戦略特区はいらんのではないか!」という意見を一部野党や反安倍と言われる方は平気で言われますが、それは地方を無視した話ですし、それこそ既得権を手放したくない官僚組織や業界団体の片棒担ぎのような気がします。

 

坊主憎けりゃ袈裟まで憎いではないですが、安倍総理が嫌いだからといって、何から何まで反対や政策を嫌いになるという変な現象が起きているように感じます。