永田町で、じわりじわりと「解散風」が吹いてきております。それを煽るようにマスコミもちょっとちょっと報道してきているのからか、色々な方から「選挙やろうか?」と尋ねられるようになりました。

 

衆議院選挙は常在戦場と言われるので、常にアンテナを高くし、情報を分析し、いつでも選挙があると思ってはいないといけませんが、それは政党や候補者の心構えの問題であって国民には常在戦場は全くもって関係ありません。

 

この「解散風」では、12月18日投開票という話や1月冒頭解散と言われております。

 

この二つのどちらが可能性が高いかというと、1月冒頭解散だと思います。12月18日投開票だと選挙中に日露首脳会談でしょうし、臨時国会でやらなければいけない様々な法案がある事や次年度の予算にとって重要な時期になるので「年内解散」という手は打ちにくいのではないでしょうか。その上で、この二つの選択肢だったら来年1月冒頭解散だと考えられます。

 

「1月冒頭解散」説の大きな理由は、①自民党の支持率が高く、野党の支持率が低いうちにやった方が勝利が確実 ②アベノミクスの限界に国民が気づく前にやった方が勝利が確実 ③公明党が重要視する都議選から3ケ月はあけないといけない ④日露首脳会談の北方領土問題の進展を武器に勝利を確実にしたい といったようなところが、大きな理由でしょう。この選択肢を取った場合に、自民党は議席は減らすでしょうが、自公政権は維持出来る可能性があるわけです。

 

ただ、果たしてこの選択肢が正しいのでしょうか?全くもって「大儀」がありません。

 

ここのところ、2012年と2014年と年末選挙が続いてますが、もし仮に年内もしくは年始に解散総選挙となれば2年サイクルで安倍政権の下で選挙が行われる事になります。過去二回の選挙は消費税増税を巡るものでした。2012年は消費税を5%から8%に上げる事と、その後に10%まで上げるとともに国会議員定数の大幅削減が約束され、それを国民に信を問うたわけです。2014年は8%から10%への増税を延期した事を信を問いました。そして、2016年の消費税増税再び延期の判断は参院選で信を問いました。

 

従来の衆院選挙は何か信を問うという選挙ではなく与党に有利か不利かで決められてましたが、小泉政権の誕生から与党に有利はもちろんですが、「大儀」を掲げて信を問うというスタイルに日本の選挙は変化してきております。2005年は郵政民営化、2009年は政権交代、2012年は消費税増税、2014年は消費税増税延期といった具合に。

 

今、噂される解散総選挙でこれらのような大儀がどこにあるのか不思議です。

 

さらに言えば、2012年の選挙の時の約束だった国会議員定数の大幅削減は未だに実行されず、一票の格差で議員定数を調整した後の選挙区の新区割りでの選挙は年内や来年冒頭では実施できないという点で本当に、このタイミングで伝家の宝刀である解散権を行使する事が正しい選択なのかは疑問に感じますし、間違いなく一票の格差の訴訟で今までよりも違憲判決が出る可能性は高まるはずです。

 

もし、大儀があるとすれば日露首脳会談による北方領土問題の進展でしょうからその事を信を問うというのはあり得ると思いますが、どう考えても「四島返還」は実現するというのは考えられず、「二島返還」もしくは「二島+α」を首脳会談後に国民に信を問う事が今後の日本の政治を考える上で果たして正しい選択になるのかを考えると疑問に感じます。

 

そのように考えれば、選挙をしたいのは山々だけどその選択肢を行使するのは普通の政治ではあり得ないのではないでしょうか。ただ、政治は「世の中の非常識が常識」な部分もありますから、何があっても不思議ではない世界なので、実際に「解散風」が出てきているのなら準備はしていかないといけません。

 

野党第一党の民進党の動きを見ていても、選挙を意識しているのだろうと感じます。幹事長に2012年の解散権を行使した野田元首相を起用しましたが、安倍総理が解散権を行使した場合に、2012年の約束が果たされていないというのはクローズアップされるわけでしょうから、与党がリードする形での選挙戦に挑めるかは微妙ですし、これだと憲法改正の為の3分の2を衆参両院でせっかく確保しているにもかかわらず、また憲法改正が遠のく可能性だって十分に考えられます。

 

いずれにしろ、臨時国会が閉まるまでは、状況は二転三転する事でしょう。