ちょうどひと月前のこと。
まだ秋の足音が小さくて、
日中はしっとりと汗ばむくらいだった。
お洒落な彼女はその日、
若草色に赤や黒の模様が入ったタイツを履いていて、
チャーミングな容姿にとても似合っていた。
きょろきょろと、
初めて見る周りの景色に目を向けながら歩く様子が実に愛らしくて、
つい目が釘付けになってしまうほどだった。
出会ってから二日たったある日、
彼女はゆっくりと歩みを停止したかと思うと、
背中を丸め、茶色の、鎧のように重厚感のあるスーツを身に着け始めた。
着替えが終わった彼女は、
壁に寄りかかって動きを止め、そのまま眠りについた。
10月の季節外れな台風26号の夜もびくともせず、
今この時も、昏々と眠り続けている。
これから訪れる厳しい寒さや、
深々と降り積もる雪にも、
静かに、辛抱強く耐え忍んでゆこうと意志を固めたようだ。
そして‥‥
暖かい風が吹き、色とりどりの花が咲く頃、
彼女は誰よりも色鮮やかで煌びやかなドレスを身に纏い、
ドレープを大空いっぱいに広げて、
艶やかに舞ってゆく日を
夢にみていることでしょう。
アゲハな彼女、
そのときは是非、お見送りさせてね



小さなお客サマ。

身を丸くして動きを止め、眠りの準備。


鎧を纏い、冬眠しています。
春が待ち遠しい我が家です。
