政府は老齢年金の支給開始年齢の68歳への引上げを検討しているようです。団塊ジュニアの世代には70歳からになるよう画策しているかもしれません。
現在、65歳が支給年齢となっている国が多いのですが、ドイツ、イギリス、アメリカなどの国では、段階的に67歳や68歳へと引き上げ中。
「受給開始年齢」の再引き上げ計画が本格的に動き出した。2014年(平成26年)10月10日、政府の社会保障制度改革推進会議で、清家篤議長が現在65歳の受給開始年齢について「引き上げることもありえる」と宣言した。
政府は2019年に行なわれる財政検証までに68歳に引き上げることを画策しています。
清家委員が平成23年5月30日に集中検討会議に提出した資料のなかで最も有力なのが、「厚生年金について、現在の65歳への引上げスケジュールの後、さらに同じペースで68歳まで引き上げ。併せて基礎年金についても68歳まで引上げ」というものです。
男性で昭和36年4月2日以降生まれの方が老齢年金支給開始が65歳からとなっておりますが、これでいくと、昭和38年4月2日~40年4月1日生まれが66歳からになりそうです。昭和40年4月2日~42年4月1日生まれが67歳から、昭和42年4月2日以降生まれからは68歳になりそうです。
さらに70歳に引き上げようとしています。
68歳まで引上げと言っていますが、この流れで男性でいうと、昭和42年4月2日~44年4月1日生まれが69歳から、昭和44年4月2日以降生まれからは70歳になりそうです。
団塊ジュニアの定義は、日本において1971年から1974年までに生まれた世代のことで、第二次ベビーブーム世代とも呼ばれます。 昭和46年~49年生まれ 現在 46歳~49歳 くらい
「65歳→70歳」が実現すれば、厚生年金加入者の場合1人当たりおよそ1000万円の年金カットとなる。これが狙いでしょう。
68歳まで引上げと言っていますが、この流れで男性でいうと、昭和42年4月2日~44年4月1日生まれが69歳から、昭和44年4月2日以降生まれからは70歳になりそうです。
女性は5年遅れで、現在のスケジュールでは2030年から昭和41年4月2日生まれの女性が65歳からとなっていますが、今後男性と足並みを揃える可能性が高い。平成23年5月30日の集中検討会議であげたものですと、女性も2026年に男性に合わせて65歳からとするように前倒しするとのことですが、もはや不可能でしょう。現在のスケジュールどおり2030年から昭和41年4月2日生まれの女性が65歳からとして、昭和43年4月以降生まれの女性から男性の昭和42年生まれに合わせて一気に上がるかもしれません。5年に1度の財政検証が2019年予定されておりまして、ここで方向性が明らかになると思います。
厚生労働省が年金の支給年齢を70歳に引き上げようとしていますが、そのターゲットは団塊ジュニア世代だからです。
そこで、今回は支給開始年齢が70歳になったとして、払い込んだ保険料総額と受ける年金総額が一致する年齢が いつ なのかを検討してみようと思います。
なお、複雑を避けるため、例では平成30年4月に20歳になった人、つまり平成10年4月生まれの人とします。
マクロ経済スライド(年金額の改定を、平均賃金の上昇や物価の変動率だけでなく、年金財政を支える現役の人数の減少率、年金を受ける高齢者の増加(平均余命の伸び)を控除させようというもの)により、現在の給付水準は現役世代の給与水準の60%程度(モデル世帯:夫40年厚年40年・妻専業主婦で)ですが、年金額の伸び率を抑制することで2035年度までに50.2%になるまで低下させることにしています。よって、単純化して、現在の計算上の年金額に ×50/60 として将来に合わせることとしました。
ケースA
20歳~60歳までの40年間国民年金保険料納付した方 年金支給開始 70歳
・納付保険料総額 16,340円 × 480月 = 7,843,200円
・1年間の年金額 779,300円 × 50/60 = 649,400円
・払い込んだ保険料総額に一致する年金額の年数 A
7,843,200円 = 649,400円 × A
A = 12.1年
70歳支給開始年齢になると、82歳より長生きしないと モト を取れないということです。
ケースB
20歳~60歳までの40年間国民年金保険料納付した方 年金支給開始 65歳
払い込んだ保険料総額に一致する年金額の年数 は上記 ケースA と同一で 12.1年
これまでのように65歳支給開始年齢では、77歳で モト を取れることになります。
ケースC
23歳から65歳まで42年間厚生年金保険料を納付した方 年金支給開始 70歳
平均標準報酬額 30万円 厚生年金保険料 27,450円 を504月納付とした
・納付保険料総額 27,450円 × 504月 = 13,834,800円
・1年間の年金額
老齢基礎年金 779,300円 × 50/60 = 649,400円
老齢厚生年金 300,000円 × 5.481/1000 × 504月 × 50/60
= 690,606円 *
*現在の老齢厚生年金の年金額の計算は
平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 被保険者期の月数
合計額 1,340,006円
・払い込んだ保険料総額に一致する年金額の年数 C
13,834,800円 = 1,340,006円 × C
C = 10.3年
70歳支給開始年齢になると、80歳より長生きしないと モト を取れないということです。
ケースD
23歳から65歳まで42年間厚生年金保険料を納付した方 年金支給開始 65歳
払い込んだ保険料総額に一致する年金額の年数 は上記 ケースACと同一で 10.3年
これまでのように65歳支給開始年齢では、75歳で モト を取れることになります。
ケースE
23歳から70歳まで47年間厚生年金保険料を納付した方 年金支給開始 70歳
平均標準報酬額 30万円 厚生年金保険料 27,450円 を564月納付とした
・納付保険料総額 27,450円 × 564月 = 15,481,800円
・1年間の年金額
老齢基礎年金 779,300円 × 50/60 = 649,400円
老齢厚生年金 300,000円 × 5.481/1000 × 564月 × 50/60
= 772,821円
合計額 1,422,221円
・払い込んだ保険料総額に一致する年金額の年数 C
13,834,800円 = 1, 422,221円 × C
C = 9.7年
70歳支給開始年齢になると、79歳や80歳より長生きしないと モト を取れないということです。
ところで、 最近、ニュースを見て年金の受給が65歳から75歳になってしまうと心配している方が大勢おられますが、これは勘違いです。老齢年金の繰下げ制度というのがあります。今の年金制度の中に、普通は65歳から貰う年金を最大70歳まで遅らせる事により、65歳から貰うはずの年金を最大この5年間(60ヵ月)で42%増額させることができるものです。65歳以降1ヵ月遅らせるごとに0.7%ずつ年金が増えていく。この最大70歳まで遅らせられる「繰下げ制度」を75歳まで出来るようにしたらどうかという話なのです。