ウィーン・フィル ニューイヤー・コンサート1989

指揮:カルロス・クライバー

演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団



みなさん、あけましておめでとうございます。

「一年の計は元旦にあり」

毎年この言葉を思い起こしながら、新年の計画を頭の中に描いています。

そんな年の始めは、音楽も何から聴こうか迷ってしまうのが恒例なのですが、今年も迷いました。


そんな中取り出したのが、ウィーン・フィルニューイヤーコンサート。


なんてありきたりなものを選んだのか、自分でも不思議なのですが、このクライバーのニューイヤーは、僕の中では最高のニューイヤーと位置付けていますので、取り上げることにしました。



内容ですが、さすがのクライバーも伝統のあるニューイヤーということで、いささか緊張気味でスタートします。(それでも演奏水準が高すぎることは言うまでもないですが。)

しかし、お得意の「こうもり」序曲からは、クライバーが一気に空間を支配し、クライバー流の音楽を展開します。

強いアタック、美しく流れる旋律、疾風怒濤のごとく駆け抜けるユニゾン。

どれをとっても、最高峰の音楽がここにあります。


感銘度:5 爆演度:4 構築度:4 カリスマ度:4 オケレベル:5

ベートーヴェン:エグモント序曲

指揮:アルトウーロ・トスカニーニ

演奏:NBC交響楽団


最近、トスカニーニに首ったけである。


思えばこの指揮者と出会ったのは、クラシックを聴き始めて間もないころ、高校の部室で先輩に勧められて聴いた、ホロヴィッツとのチャイコンだった。


その時は伴奏ということもあったが、それでも激しく鼓動するオケの響きに圧倒されたものだ。


それからというもの、いろんな指揮者に出会っては魂を揺さぶられる思いを何度もしてきたが、その合間合間にこのトスカニーニという指揮者は必ずいた。


チャイコフスキーから入り、しばらくはベートーヴェンの全集に明け暮れ、ヴェルディのオペラの数々に涙したものだが、忘れてはいけないのが数々の管弦楽作品である。



たかが管弦楽、されど管弦楽。


序曲であろうが、ワルツであろうが、そこには一環して「精密さ」と「歌心」の両立がある。


ゆるぎない精神で、この徹底した両輪をこの「エグモント序曲」でリスナーにぶつけてくる。



まぎれもなく神である。


感銘度:5 爆演度:5 構築度:4 カリスマ度:5 オケレベル:5

ヴィターリ:シャコンヌ

演奏:ヘンリク・シェリング(ヴァイオリン)



「胸を打つ」、という言葉がある。


広辞苑には、このように載っている。


「感嘆する。感動させられる。」



この演奏は、言葉の意味の範囲では到底おさめきることができないものがある。


本当にヴァイオリンの一音一音が聴き手の胸を打ってくるのである。


冒頭から完全にシェリングの世界に引き込まれる。


わざとらしくスタッカートするわけではなく、いたってシンプルに、いたって自然に。


いくら高音域になっても音色が衰えることをこのヴァイオリニストは知っていない。



バッハのシャコンヌ以来の衝撃を味わった。


感銘度:5 爆演度:3 構築度:5 カリスマ度:4 ソロレベル:5

レスピーギ:ローマ三部作

指揮:アルトゥーロ・トスカニーニ

演奏:NBC交響楽団


長い間クラシックを聴いてきたけど、まだ手を出していない作曲家はたくさんいる。


レスピーギもそんな一人だった。


以前からずっと気にはなっていた、「ローマ三部作」。


ここのところトスカニーニにはまりまくっている個人的事情と重なるかのように、

目に飛び込んできた「トスカニーニ最高の名演」や「歴史的演奏」の文字。


こりゃ聴いてみるしかない。



驚愕。



感銘度:5 爆演度:5 構築度:5 カリスマ度:5 オケレベル:5

ヘンデル:オラトリオ「メサイア」

指揮:オットー・クレンペラー

演奏:フィルハーモニア管弦楽団および合唱団 ほか


リヒターのメサイアがこの曲の決定盤だとずっと思って生きてきた。

あれほど血の通った響きはまさしく決定盤とよぶにふさわしいものだった。


しかし、クレンペラーのメサイアを聴いてその考えは変わった。

とにかくリヒターとは対照的な、とてつもなくスローテンポで描くメサイアである。


そこには果てしない宇宙がある。


感銘度:5 爆演度:4 構築度:5 カリスマ度:5 オケレベル:5